東アジアの経済規模と成長性
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「東アジア共同体」の記事における「東アジアの経済規模と成長性」の解説
東アジアは、アジア通貨危機の発生する1997年まで、“東アジアの奇跡”とも呼ばれるほどの経済発展を遂げてきた。通貨危機後も概ね順調な回復を遂げており、今後も、国によって勢いの程度に差はあるものの、高成長を持続させていくものと考えられている。 東アジアの高成長は、地域における主役を交代させることで達成してきた。第二次世界大戦後、東アジアにおいて経済発展の先陣を切ったのは、朝鮮戦争の特需により景気を回復させた日本であった。1970年代初頭のオイルショックの影響によって成長が減速するまでの、その経済成長は“東洋の奇跡”と称さるものであった。日本に続いたのが韓国、台湾、香港、シンガポールの、いわゆるNIEs諸国である。1960年代より、外国からの資本や技術の導入の促進を目的とする輸出志向型工業化政策の導入により輸出を拡大させることで、自国経済に成長をもたらした。NIEs諸国の成長にやや陰りが見られ、1980年代後半よりそれに代わる形で高成長を達成したのが、ASEAN原加盟国のうちシンガポールを除いた、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイの4カ国である。これらの国々は、外国企業による輸出を目的とした直接投資の受け入れや投資・輸出の促進により、経済成長を可能にした。なお、1990年代からはASEAN4カ国と同様に中国も、開発戦略による高成長を実現させている。 他の経済圏などとの人口・GDP比較(2016年)加盟数名称・国名人口名目GDP一人当たりGDP13 東アジア共同体 16億000万人 19兆3100億ドル 38200ドル 10 ASEAN 6億3862万人 2兆5547ドル 4000ドル 25 EU 5億1180万人 18兆4000億ドル 3万5939ドル 4 メルコスール 2億8899万人 2兆8570億ドル 11337ドル 3 NAFTA 4億8318万人 21兆1440億ドル 4万3885ドル - 中国 13億7867万人 11兆9910億ドル 8123ドル - 日本 1億2699万人 4兆9093億ドル 3万8443ドル - 韓国 5125万人 1兆4112億ドル 2万7539ドル これら雁行型発展を成し遂げてきた東アジアを1つの地域として捉えると、東アジア13ヵ国は人口において EU の約4.4倍・NAFTA の約4.7倍、購買力平価 (PPP) による GNI では EU を上回りほぼ NAFTA に匹敵するなど、世界でも類稀な経済規模を誇る地域であることが窺える。さらに、日本を除く東アジア各国は、中国・インドネシアを筆頭に2020年まで軒並み高い成長率を達成することが見込まれており、例えば経済協力開発機構 (OECD) のレポート『2020年の世界』では、もし今後もグローバリゼーションと経済の自由化が順調に進展していくならば、中国をはじめとする東アジアは21世紀における世界の最もダイナミズムを持った発展の中心地になるであろうとの予測がなされている。具体的には、1995年から2020年までの経済の年平均成長率は、中国の8%を筆頭に、インドネシア7%、台湾、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシアが6.9%と予測されており、これはEU、NAFTAの2.8%、ラテンアメリカの5.3%を大きく引き離している。ただし、中国の成長率が2008年に10%に届かないどころか大きく下回ったため、この説は疑問視されている。また同レポートには、2020年時点での中国のPPPによるGDPは、世界の総GDPの約20%にも上り、米国の約11%、日本の約5%を大きく上回るというシナリオが描かれている。失業問題や経済格差問題など克服すべき多くの課題を持つ中国が今後このシナリオ通りの発展を遂げる可能性については不透明であるが、いずれにせよ21世紀における経済発展の中核を担うことも充分に考えられる。そして、これらのことは、東アジアに経済共同体が出現すれば EU・NAFTA と肩を並べる大規模な経済共同体になる可能性をも示唆している。
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