条約の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 15:11 UTC 版)
「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」の記事における「条約の特徴」の解説
1971年パリ改正版の主な特徴として、次の点が挙げられることが多い。 内国民待遇 英語: Principle of national treatmentと呼ばれる。条約加盟国は、他の加盟国の著作物に国内の著作物と同等以上の権利保護を与える(5条 (1) など)。外国人の権利につき内国人の権利と異なる定めをすることがあるが(外人法、外国人法)、加盟国の著作物については同等に扱われることになる。ただし、著作権の保護期間については相互主義が許容されており、同盟国は、著作物の本国 (英語: country of origin) において定められる保護期間を超えて保護しなくてもよい(7条 (8))。 著作権に関する内国民待遇には、狭義の著作権に適用されるベルヌ型と、広義の著作権である著作隣接権に適用されるローマ型がある。ローマ型は、条約に定められた権利のみ内国民待遇を用いるが、ベルヌ型は、たとえ条約で定められていない権利であっても、各国の著作権法などで保護されている権利であれば、内国民待遇の適用範囲に含まれる違いがある。 無方式主義 著作権の発生要件について、登録、納入、著作権表示など一定の方式を備えることを要件とする立法例を方式主義という。これに対して著作物が創作された時点で何ら方式を必要とせず著作権の発生を認める立法例を無方式主義 (英語: principle of automatic protection) という。ベルヌ条約は1908年のベルリンでの改正条約で無方式主義を採用した。著作権は著作物の創作時に発生するとし、著作権の発生のためには、登録、納本、著作権表示などの方式(手続き)を必要としないとされた(5条 (2))。 著作者人格権の保護 加盟国に対し、著作権が著作者から他者に移転された後も、人格的権利として著作者が保有する著作者人格権を保護することを求める(6条の2 (1))。さらに、著作者が死亡した場合においても、少なくとも著作権(財産権)が消滅する時までは、著作者人格権を保護しなければならないとしている(6条の2 (2))。 遡及効 条約締結時以前に作成された著作物にも、遡って保護を与える。狭義の著作権に関する条約4本のうちベルヌ条約、TRIPS協定、WIPO著作権条約の3本は遡及効を採用しているが、万国著作権条約のみ不遡及となっている。 著作権の保護期間 原則、加盟国は著作権の保護期間を著作者の生存の間及び死後50年以上としなければならない。ただし、各国内での著作権について直接定めるものではなく、各国の最低限の義務を定めるものであり、7条 (1)で生存の間及び50年と規定した上で、7条 (6)でそれ以上としてもよいと定めている。 しかし、保護期間には例外がある。著作者が変名ないし無名であり、かつ個人を特定できない場合は、死亡日を用いることができないことから、著作物の公表日を起点に50年以上としている。映像著作物の場合は、公表日 (未発表の場合は創作日) から50年以上、また写真の著作物ないし応用美術の著作物の場合は、創作日から25年以上と規定されている。 条概要1971年パリ改正版の全体構成第1条 条約の目的 第2条 保護される著作物の範囲 (二次的著作物や編集著作物を含む) 第2条の2 同上 第3条 著作者の定義 (総論) 第4条 著作者の定義 (映画著作物および建築著作物) 第5条 保護水準 (内国民待遇、無方式主義など) 第6条 条約非加盟国 第6条の2 著作者人格権 第7条 保護期間 (総論) 第7条の2 保護期間 (共同著作物) 第8条 翻訳権 第9条 複製権 第10条 著作物の公正な利用 (引用など) 第10条の2 同上 第11条 上演権 第11条の2 公衆送信権 第11条の3 口述権 第12条 翻案権 第13条 録音権 第14条 映画著作物に関する支分権 第14条の2 同上 第14条の3 美術著作物、作詞・作曲に関する追及権 第15条 著作者の定義 (変名・無名著作物、共同著作物) 第16条 著作権侵害と救済 第17条 同上 第18条 保護期間切れの著作物 (パブリックドメイン) 第19条 加盟各国法との関係 第20条 取極による追加保護 第21条 附属書 (発展途上国の特別規定) の作成目的 第22-26条 加盟国による総会 第27条 条約改正手続 第28-31条 条約の署名、批准、加入、寄託手続 第32条 原条約および過去改正との関係 第33条 条文解釈を巡る国家紛争解決 (国際司法裁判所への付託) 第34条 原条約および過去改正との関係 第35条 条約の有効期限と廃棄 第36条 加盟各国の憲法などの尊重 第37条 条文の公式言語 第38条 ストックホルム改正の特別規定、および事務局の役割 附属書 発展途上国に関する特別措置など
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