条約の留保
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 23:44 UTC 版)
民主党修正案に固有の論点として、国際組織犯罪防止条約の留保は可能か、というものがある。国際組織犯罪防止条約それ自体は、ごく一部に留保を禁じている条項があるが、そのほかはウィーン条約法条約に基づいた留保が可能である。 反対派の意見 条約の留保は国会の承認後も政府による批准書の寄託までは可能であるとする。また、重大犯罪の定義として条約とは別の定義をしても、「長期四年以上」を「長期五年を越え」に変更する程度は、そもそも重大犯罪の定義は国連加盟国の間でも審議過程で対立があった部分だから、条約の趣旨・目的に反するものではない、とする。また、団体の要件として越境性を加える修正についても、条約と一体である「公的記録のための解釈的注」が、問題の条文は越境性を国内法化において要求しないという意味であって、条約の適用範囲を変更するものではないとしていることから、必要となる留保は条約の趣旨・目的に反するものではない、ないし国内法において越境性を要求しても条約の留保は必要ない、とする。 なお、越境性を要件とする修正については、国際NGOやその他の国際キャンペーン、そこまででなくても越境的連帯に基づいた国際的な交流をもつ多くのNGO・各種共同行動参加組織・サイバーグループ等にとっては救済となっておらず、むしろ妥協的なものであるとして廃案を求める立場からの批判も存在する。 また、アメリカ合衆国も一部の州で州に関する越境性のない共謀を条約の条件で犯罪としていないことから批准にあたって留保していることが新たに判明している。アメリカのような主要国でさえ留保している条約を留保できないはずがない。 賛成派の意見 政府は、条約の批准について留保を付さない形のものについて国会承認を得たので日本政府としての留保は不可能であるとし、あるいは民主党修正案が必要とする留保は条約の趣旨と目的に反している、とする。 政府案あるいは与党修正案を支持する立場からは、これまで条約を締結した120を超える国の中で、民主党が言うような留保をした国はなく(なお、一時民主党が指摘していたウクライナの問題があるが、外務省の調べによると、ウクライナは留保をしているのではなく、条約より広い共謀罪があるとのことである。)、民主党の案によると5年以下の懲役の犯罪で犯罪組織の典型犯罪までもが抜け落ちていくため、世界の中で我が国だけがこのような留保をつけておいて国際社会に顔向けができるのだろうか、という批判が存在する。 アメリカ合衆国における留保は実質的にはささいな問題であり、実際にはほとんどの部分で共謀罪が有効であるため、無視するべきである。
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