著作権侵害と救済
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/10 07:42 UTC 版)
「著作権法 (フランス)」の記事における「著作権侵害と救済」の解説
権利侵害された者は、民事あるいは刑事手続によって救済される。民事訴訟の場合、侵害行為を「認識」してから5年以内の出訴が認められている、また刑事手続の場合は、侵害行為が「発生」してから6年以内とされている。 著作権侵害とは具体的に、著作物の演奏・上演、複製、翻訳、翻案、変形、編曲などが挙げられている (L122条-4)。刑事事件の場合、文書・楽曲・スケッチ・絵画などを印刷出版すると、偽造の罪に問われ、3年以下の禁固または30万ユーロ以下の罰金が科される (L335条-2)。また、著作隣接権者に無断で実演、複製、公衆伝達、利用の提供を行うと、同様に3年以下の禁固または30万ユーロ以下の罰金となる (L335条-4)。ただし著作権侵害者が組織犯罪の場合は、それぞれ7年以下の禁固または75万ユーロ以下の罰金に上限が引き上げられる。さらに再犯の場合、初版の刑罰の上限が2倍に引き上げられる。これらの罰則は、2006年のDADVSIを受けて追加された条項である。 禁固や罰金以外にも、偽造品の差押や破棄、侵害行為の差止、企業活動の停止、インターネットへのアクセスなど著作権侵害の手段利用を最大1年間禁止といった刑事上の措置も取られる。海賊版などの輸出入が発見された場合は、税関がその物品を差し押さえる権利を有している。 このような著作権侵害を行った者に対して、その手段であるインターネット・サービスを提供したISPなどに対しては、原則として著作権侵害の免責規定が適用される。ただし、著作権者からの通報を無視して、不法コンテンツを掲載し続けた場合には、その責が問われる (2004年制定・デジタル経済法(フランス語版) (通称: LCEN、法令番号: 2004-575) 第6条 I.1)。 民事訴訟の場合、提訴できるのは著作権者 (著作者本人だけでなく、著作財産権を譲渡・相続した者を含む)、あるいは著作権者に代わって利用料を徴収する著作権管理団体のみである。独占ライセンスあるいは非独占ライセンス先は提訴できないものの、著作権侵害が認められた場合、損害賠償の受取人になることができる。2015年4月より、事前に著作権者が侵害者に対して警告を発したり、和解などを試みることが、民事訴訟の事前要件として定められた。ただしその後の判例により、これらの友好的な事前対応を怠った場合でも、著作権侵害の訴訟を認めるケースが存在している。 違法ダウンロードに対するインターネット・アクセス制限を目的とした2009年制定のHADOPI法に基づき、インターネットを介した著作権侵害に対し、文化省に属する組織であるHADOPI(フランス語版)が監視の目を光らせている。HADOPIが著作権侵害を認識すると、被疑者に対して警告・改善通知を発信できるようになった。ただしHADOPIは行政機関であることから、司法機関である裁判所のように、侵害行為の差止命令を出すことはできない。いわゆる「三振法」をHADOPIは採用しており、三度の警告後、著作権侵害を検察に通達し、刑事手続に進む流れとなっている。 著作権は著作者および著作隣接権者に独占的な権利を与えるものであるから、原則として欧州連合競争法 (特に欧州連合の機能に関する条約 第101条および第102条) の適用対象外となる。ただし、著作権を預かる著作権管理団体が、その地位を濫用して市場に大きな影響をおよぼしている場合には、不正競争行為の取り締まり対象となる。
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