日本における法整備支援実施体制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 05:57 UTC 版)
「法整備支援」の記事における「日本における法整備支援実施体制」の解説
日本の法整備支援の中核は、国際協力機構(JICA)による技術支援の枠組みで行われている。基本法や裁判所での運用改善といった支援の場合、裁判官・検察官・弁護士など数名がJICA長期専門家として現地に常駐する とともに、法学者や法律実務家で構成される国内支援委員会を組織することが多い。 日本による法整備支援は、基本法や裁判所の運用改善などにとどまるものではなく、知的財産法や競争法などの経済法分野にも広がっている。法分野ごとにそれを所管する省庁や弁護士会が実施主体あるいは協力機関として、法整備支援活動を展開しており、平成21年度の実施計画は、「平成21年度法制度整備支援実施計画」として整理されている。たとえば、民法、会社法や裁判実務支援であれば法務省(ただし、法務省の組織・人的体制には、後述のとおり十分なものではない。)、知的財産法であれば特許庁が支援体制の中心となることが通常である。2013年6月7日に閣議決定された「知的財産政策に関する基本方針」においても、「アジアを始めとする新興国の知財システムの構築を積極的に支援し、我が国の世界最先端の知財システムが各国で準拠されるスタンダードとなるよう浸透を図ること。」が重要目標として掲げられ、知的財産分野において法整備支援を積極的に推進していくこととされた。 法整備支援では、政府関係機関はもとより、裁判所、日本弁護士連合会、経済団体等関係者間の官民連携が不可欠であるため、オールジャパンによる支援体制の強化が図られたときもあった。しかし、その司令塔としての役割が期待され、自民党政権下で設けられた海外経済協力会議 は、民主党政権下で廃止され、法整備支援全体を省庁横断的に統括する組織、仕組みは不在の状態が続いている。しかも、本来法整備支援の中核を担うべき法務省は、大臣官房はじめ法務省本省の部局には法整備支援を所管させず、本省外の施設等機関である法務総合研究所の一部門として大阪に置かれている国際協力部のみに所管させている。さらに、その国際協力部も、民商事分野の法整備支援を主な目的としていながら、在籍する法律家の大半は刑事を専門とする検察官出身者であり、民商事を専門とする法律家は裁判官からの出向者1名だけである。組織内の位置付けとしても、人的体制としても、前述のような法整備支援の重要性に見合ったものとはなっていない。そのような現状もあり、2017年6月には、法整備支援を含めた国際的な戦略として、法務省大臣官房の国際機能強化や在外公館への法律家配置の増員など、政府の国際部門における法律家の役割強化も提言されている。 一方、弁護士については、四大法律事務所などの大手法律事務所をはじめ、弁護士のアジア展開(特に東南アジア)も急速に進んでいる 中、JICA長期専門家として支援対象国に派遣されること や、法務省や特許庁などから外国法の調査を受託することがある。なお、それら調査の報告書はウェブにおいて一般公開されている。 法整備支援に限らず、ODA技術協力案件の形成においては、大使館及びJICAを中心とする現地ODAタスクフォースが主導的な役割を果たしている。多くの日本大使館では、外務省以外の省庁から出向した職員(アタッシェ)が在籍している が、一般にこういったアタッシェが国際協力の案件形成及び実行の面で活躍することもある。この点、リーガルアタッシェ(法律家として在外公館に勤務する者)は、裁判官又は検察官出身の者が、欧米諸国のほか、アジアでは中国や韓国の大使館に配置されている が、ASEANの存在感や重要性の高まりを受け、国際的に活動する弁護士などから、インドネシアに所在するASEAN日本国政府代表部 にもリーガルアタッシェを置くべきであるという指摘がされている。また、政府与党からも、法律家のグローバル展開が極めて重要との認識のもと、法律家の在外公館への駐在や条約交渉への採用など公的分野での取り組みも拡大すべきとの提言がなされている。
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