微分形式の積分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 16:01 UTC 版)
詳細は「微分形式の積分」を参照 微分形式は多変数解析や微分幾何学およびテンソル論などの分野で用いられる数学的概念である。現代的な意味での微分形式は、その全体が外微分と楔積に関して(エリ・カルタンの導入した意味での)外積代数を成すものとして理解される。 Rn の開集合 Ω 上で定義される 0-形式(0-次微分形式)とは単に(ここでは)Ω 上の滑らかな関数 f のことである。Rn の m-次元の部分空間 S 上での f の積分を ∫ S f d x 1 ⋯ d x m {\displaystyle \int _{S}f\,dx^{1}\cdots dx^{m}} のように書く(上付きの数字は単に添字であって、冪指数の意味ではない)。微分形式の文脈では、dx1 から dxn までを、リーマン和のように積分についている符牒ではなく、それ自体を形式的な対象として扱う。すなわち、これらはそれぞれ余ベクトル(1-形式、双対ベクトル)として捉えられ、「密度」を測るものと考えることができる(したがって一般の意味で積分することができる)。dx1, …,dxn は基本 1-形式と呼ばれる。 微分形式に対する楔積 "∧" は双線型な「乗法」で、基本 1-形式に対する交代性 d x a ∧ d x a = 0 {\displaystyle dx^{a}\wedge dx^{a}=0} を満足するものである。線型性と結合性を用いれば、この交代性から dxb ∧ dxa = −dxa ∧ dxb が出ることに注意せよ。これはまた、楔積を取った結果が向きを持つことを保証するものでもある。 二つの基本 1-形式の楔積として得られる微分形式を基本 2-形式と呼び、同様に dxa ∧ dxb ∧ dxc なる形で書ける微分形式を基本 3-形式と定める。以下同様に基本形式を定めるが、一般に k-形式(k-次微分形式)とは基本 k-形式に滑らかな関数 f による重み付けを行った重み付き和をいう。すなわち、k-形式の全体は、基本 k-形式を基底ベクトルとするベクトル空間を成し、その係数体として 0-形式の全体がとれる。k-形式同士の楔積は、基本 k-形式の楔積を線型に拡張したものとして自然に定義できる。Rn 上で、互いに線型独立な余ベクトルは高々 n-個しか取れないから、従って k > n のとき k-形式は常に 0 に等しいことが交代性から従う。 微分形式の演算には、楔積に加えて、外微分作用素 d もある。これは k-形式を (k+1)-形式へ写す作用素で、Rn 上の k-形式 ω = f dxα への d の作用は、 d ω = ∑ i = 1 n ∂ f ∂ x i d x i ∧ d x α {\displaystyle d\omega =\sum _{i=1}^{n}{\frac {\partial f}{\partial x_{i}}}dx^{i}\wedge dx^{\alpha }} で与えられる(α は k-次の多重指数)。一般の k-形式へはこれを線型に拡張する。 これをもう少し一般にしたやり方で、自然に座標を用いない多様体上の積分ができるようになり、また微分積分学の基本定理の自然な一般化として(広義の)ストークスの定理と呼ばれる定理が得られる。ストークスの定理は、一般の k-形式 ω に対して ∫ Ω d ω = ∫ ∂ Ω ω {\displaystyle \int _{\Omega }d\omega =\int _{\partial \Omega }\omega } が成り立つことを主張するものである。ただし ∂Ω は ω の積分領域 Ω の境界である。ω が 0-形式で Ω が実数直線内の閉区間である場合が微分積分学の基本定理にあたる。また、ω が 1-形式で Ω が平面上の二次元の領域であるときがグリーンの定理であり、同様に 2-形式あるいは 3-形式とホッジ双対を考えて(狭義の)ストークスの定理あるいは発散定理を得ることができる。このように微分形式は、積分を統一的に扱ための強力な方法を与えるものであることが分かる。
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