出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 01:19 UTC 版)
「回転 (ベクトル解析)」の記事における「微分形式による定式化」の解説
詳細は「微分形式」を参照 三次元において、各係数は実函数であるものとして、 微分零次形式 (0-form) は、単なる函数 f(x, y, z) 微分一次形式 (1-form) は、一次結合 a 1 d x + a 2 d y + a 3 d z {\displaystyle a_{1}\,dx+a_{2}\,dy+a_{3}\,dz} 微分二次形式 (2-form) は、形式和 a 12 d x ∧ d y + a 13 d x ∧ d z + a 23 d y ∧ d z {\displaystyle a_{12}\,dx\wedge dy+a_{13}\,dx\wedge dz+a_{23}\,dy\wedge dz} 微分三次形式 (3-form) は、単項式 a 123 d x ∧ d y ∧ d z {\displaystyle a_{123}\,dx\wedge dy\wedge dz} で与えられる。ここで、dx ∧ dy などの「楔積」は d x ∧ d y = − d y ∧ d x {\displaystyle dx\wedge dy=-dy\wedge dx} などを満たし、ある種の有向(あるいは符号付き)面積として理解できる。R3 における k-形式の外微分は天下り式に (k+1)-形式として与えられ(これは Rn でも、例えば ω ( k ) = ∑ i 1 < i 2 < ⋯ < i k ; ∀ i ν ∈ 1 , … , n a i 1 , … , i k d x i 1 ∧ ⋯ ∧ d x i k {\displaystyle \omega ^{(k)}=\sum _{i_{1}<i_{2}<\cdots <i_{k}; \atop \forall i_{\nu }\in 1,\ldots ,n}\,a_{i_{1},\ldots ,i_{k}}\,dx_{i_{1}}\wedge \cdots \wedge dx_{i_{k}}} に外微分 d を施したものが d ω ( k ) = ∑ j = 1 ; i 1 < ⋯ < i k n ∂ a i 1 , … , i k ∂ x j d x j ∧ d x i 1 ∧ ⋯ ∧ d x i k {\displaystyle d\,\omega ^{(k)}=\sum _{j=1; \atop i_{1}<\cdots 3 または k < 0 のとき Ωk(R3) = 0 に注意して、次元のみ見ればパスカルの三角形の中の一行 0 → 1 → 3 → 3 → 1 → 0 が出てくる。一次元ファイバーが函数に対応し、三次元ファイバーがベクトル場に対応する(後述)。適当な同一視で割って、外微分から grad, curl, div に対応する三つの非自明な演算が導かれることに注意。 微分形式や微分は任意のユークリッド空間(あるいは実際は任意の多様体)の上でリーマン計量を使わずに定義することができるが、リーマン多様体(あるいはより一般の擬リーマン多様体)の上では、k-形式を k-ベクトル場と同一視することができる(k-形式は k-階共変ベクトルであり、擬リーマン計量がベクトルと共変ベクトルとの間の同型を与える)。また、「向き付けられた」ベクトル空間が非退化形式(ベクトルと共変ベクトルとの間の同型)を持つならば、k-ベクトルと (n − k)-ベクトルとの間に同型対応が存在し、特に向き付けられた擬リーマン多様体(の接空間)の上にそのような対応が入る。従って、向き付けられた擬リーマン多様体上では、k-形式、k-ベクトル場、(n − k)-形式、(n − k)-ベクトル場を互いに入れ替えるような操作が許される(ホッジ双対性と呼ばれる)。具体的に R3 上で考えると、 1-形式と 1-ベクトル場との交換 a x d x + a y d y + a z d z ↔ ( a x , a y , a z ) . {\displaystyle a_{x}\,dx+a_{y}\,dy+a_{z}\,dz\quad \leftrightarrow \quad (a_{x},a_{y},a_{z}).} 1-形式と 2-形式の交換 dx, dy, dz は向きに注意してそれぞれ「双対」形式 d y ∧ d z , d z ∧ d x ( = − d x ∧ d z ) , d x ∧ d y {\displaystyle dy\wedge dz,\quad dz\wedge dx(=-dx\wedge dz),\quad dx\wedge dy} に対応する。従って一般に a x d x + a y d y + a z d z ↔ a z d x ∧ d y + a y d z ∧ d x + a x d y ∧ d z . {\displaystyle a_{x}\,dx+a_{y}\,dy+a_{z}\,dz\quad \leftrightarrow \quad a_{z}\,dx\wedge dy+a_{y}\,dz\wedge dx+a_{x}\,dy\wedge dz.} 以上から、0-形式と 3-形式は函数に、1-形式と 2-形式はベクトル場に対応し、 grad は函数 (0-form) をベクトル場 (1-form) に、 curl はベクトル場 (1-form) をベクトル場 (2-form) に、 div はベクトル場 (2-form) を函数 (3-form) に それぞれ写す演算として理解できる。一方、d2 = 0 なる事実に対応するのは、函数 f およびベクトル場 v に対する二つの恒等式 curl grad f = 0 および div curl v = 0 である。 grad と div に関しては上と同じ幾何学的解釈のもとでそのまま任意の向き付けられた擬リーマン多様体に対して一般化できる。これは、0-形式の空間と n-形式の空間が常に(ファイバーごとに)一次元でスカラー値函数の空間と同一視でき、かつ 1-形式の空間と (n − 1)-形式の空間が常に(ファイバーごとに)n-次元でベクトル場の空間と同一視できることによる。しかし、curl はこの方法で四次元やより高次元の場合へ(あるいは二次元やより低次元の場合へ)一般化することはできない。四次元の場合の微分形式の空間の次元は 0 → 1 → 4 → 6 → 4 → 1 → 0 であるから、(ファイバーごとに四次元な)1-ベクトル場の回転は、ファイバーごとに六次元な 2-ベクトル場 ω ( 2 ) = ∑ i < k = 1 , … , 4 a i , k d x i ∧ d x k {\displaystyle \omega ^{(2)}=\sum _{i<k=1,\ldots ,4}a_{i,k}dx_{i}\wedge dx_{k}} となり、これは確かに六つの線型独立な項を持つ和で、1-ベクトル場と同一視することはできない。また、d2 = 0 となることから、1-ベクトルを 2-ベクトルを経て 3-ベクトルへ写すことに意味を持たせることができない。従って、先の論法によってベクトル場をベクトル場へ写す回転作用素 curl を他の次元において得ることはできないことがわかる。 しかし、ベクトル場の回転を 2-ベクトル場として定義することは一般に可能である(後述)。
※この「微分形式による定式化」の解説は、「回転 (ベクトル解析)」の解説の一部です。
「微分形式による定式化」を含む「回転 (ベクトル解析)」の記事については、「回転 (ベクトル解析)」の概要を参照ください。