役不足
「役不足」とは、自分の力量に対して与えられた役目が軽すぎることと誤解・誤用されがちだが本来は逆に本人の力量に対して役目が重すぎるさまを意味する表現。
役不足とは、役不足の意味
役不足とは、俳優が与えられた役に不満を抱くことである。歌舞伎を語源とする。役不足の語は、現代ではその人の力量に対して役目が容易すぎることの意味として用いられている。例えば、「柔道金メダリストの彼にとって、団体戦の先鋒出場は役不足だろう」のような使い方が挙げられる。この例文は、金メダルを獲得するほどの実力者なのだから、先鋒のポジションでは不満に感じるだろうという意味になる。一方で、「この度、課長職を言い渡されました。役不足ではございますが懸命に職務を全うする所存です」は、通常は使わない表現である。この例文は、自分は課長職よりもっと高い役職(例えば部長職など)が相応しいのに、自分にとっては朝飯前の課長職に就かされてしまったことを意味するからである。正しい表現は、「力不足ではございますが懸命に職務を全うする所存です」である。
なお、役不足を役者不足と表現するのは誤りである。
役不足の類語、反対語
役不足の類語は、とても容易なことを意味する朝飯前(あさめしまえ)が挙げられる。役不足の反対語は力不足(ちからぶそく)である。役不足
役不足とは、個々の能力や実力が充分に活かされず、与えられた役割がその人の能力に比べて軽い状況を指す表現である。例えばとある優秀な社員が部長クラスの技術・技能を持ち合わせているにもかかわらず、係長という立場である場合、「彼にとって係長は役不足だ」といえる。
役不足
「役不足」の本来の意味って何?
「役不足」の本来の意味は、役者の能力に対して与えられた役が物足りないこと、役者が自らの役に納得しないことを意味する表現である。よって自分の能力や実力ならば、もっと重要な役割や大きな役目を果たせるという状態のことを意味している。一般に流通している役不足の使い方
ただし、「文化庁により平成18年度に行わなれた国語に関する世論調査」によれば、全国16歳以上の男女1943人のうち、約半数である50.3%の人は役不足の意味について「本人の力量に対して役目が重すぎること」と捉え、40.3%の人は「本人の力量に対して役目が軽すぎること」という風に捉えている。この調査結果に基づくならば、役不足の意味を本来の意味で捉えている人は40.3%に当たり、逆に「力不足」「力量不足」のような意味で捉えている人が、50.3%と本来の意味で捉えている人を上回っているということになる。関連サイト:役不足とは何が足りないのか? - 文化庁
役不足と力不足の違い、誤用かどうか?正しい表現は何なのか?
役不足と力不足の違いとしては、役不足は本人の力量に対して役目が「軽すぎる」ということを意味し、力不足は本人の力量に対して役目が「重すぎる」ということを意味するという点が挙げられる。このため、役不足の本来の意味と照らし合わせるならば、「与えられた役に役者の能力が足らない」という意味はでの役不足は誤用または間違いと解釈することができる。
他方で、役不足と力不足が同じ意味合いで使われているケースも多いことを鑑みると、例えばビジネスシーンなどにおいて実際に
「部長、私がこのプロジェクトチームに入れてもらえなかったのは何故ですか?」
「それは、まだ君が役不足だったからだよ。」
などという会話があった場合は、実際のところ不足していたのは「力量」や「実力」という風に解釈も可能であるが、逆に当人にとって簡単過ぎるためにプロジェクトメンバーには割り当てなかったという解釈も可能であるため、実際の意図は発話者に確認する必要があるという点には留意が必要である。
役不足の対義語・反対語
役不足を本来の意味で捉えるならば、「力不足」が対義語や反対語に当たる。役不足の類語表現
「本人の力量にとって役目が軽すぎる」という意味で使われる似たような表現としては「閑職」が挙げられる。また力量に対して簡単な仕事を与えられたということを比喩的に「下足番を命じられた」などと表現することもある。やく‐ぶそく【役不足】
読み方:やくぶそく
[名・形動]
2 力量に比べて、役目が不相応に軽いこと。また、そのさま。「そのポストでは—な(の)感がある」
[補説] 文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で、「彼には役不足の仕事だ」を、「本人の力量に対して役目が軽すぎること」と「本人の力量に対して役目が重すぎること」の、どちらの意味だと思うかを尋ねたところ、次のような結果が出た。→力不足
平成14年度調査 | 平成18年度調査 | 平成24年度調査 | |
本人の力量に対して役目が軽すぎること (本来の意味とされる) | 27.6パーセント | 40.3パーセント | 41.6パーセント |
本人の力量に対して役目が重すぎること (本来の意味ではない) | 62.8パーセント | 50.3パーセント | 51.0パーセント |
役不足
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/29 16:33 UTC 版)
役不足(やくぶそく、やくふそく)とは、演劇などで演ずる俳優が、その演目での役割に不満をもつこと。転じて、その役職が本人に不相応なほど軽いこと。
もともとの意味の「不足」とは、単に「不満」「不平」などと同義であり、役の軽重を問わず何らかの不満を持つことを指していたが[1][2]、次第に「役目が軽いために不満を持つこと」という意味に限定されるようになった[3]。
現在では、重要な仕事を任されたときに「私では役不足です」と謙遜したり、相手の力量を軽んじて「おまえでは役不足だ」と言ったりするなど、「実力に対して役目が重いこと」の意味で使われることもあるが、これは誤用とされることが多く、できれば「力不足」を使ったほうが誤解がない。
文化庁による2002年度の国語に関する世論調査では、この言葉を「役目が軽すぎること」の意味で理解している人の割合は27.6%であった[4]。 しかし、その後2006年度の同調査では40.3%[5]、2013年度の同調査では41.6%[6]と回復傾向にある。これについて日本語学者の北原保雄は、誤用の代表例として文化庁の世論調査やテレビなどで取り扱われた結果、学習が進んだのだろうかと推測している[7]。
「役不足」とよく似た「役者不足」という言葉も、「劇を上演するための役者が足りない」という意味から転じて、昭和の初めごろから「人材不足」「戦力不足」の意味で使われていた[8]。
また同時に「役者として力不足である」の意味でも使われており[9]、そのため「役不足」の対義語として「役者不足」が挙げられることもある[10]。
出典
- ^ 不足を言う(フソクヲイウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
- ^ 重責に対する用例としては、たとえば明治40年『慶應義塾學報』、鎌田栄吉の「非常にむづかしい役目を言ひ付かつたので、少々困つて居る所でありますが、併し今更役不足を言つた所が追付かぬ」などがある。
- ^ この意味で採録した初期の辞典としては昭和2年『大思想エンサイクロペヂア』や昭和6年『いろは引現代語大辞典』などがある。
- ^ 平成14年度「国語に関する世論調査」の結果について
- ^ 平成18年度「国語に関する世論調査」の結果について
- ^ 平成24年度「国語に関する世論調査」の結果の概要 p.19
- ^ 『しっくりこない日本語』 pp.42-44 北原保雄 小学館 2017
- ^ たとえば昭和6年『六大学野球全集 上巻』は、大学野球チームを評して「如何せん役者不足の憾みがある」とした大正15年の新聞記事を掲載している。また昭和14年『大相撲年代鑑 前編』は、明治八年十月の京都大場所を評して「東京方の役者不足とは云へ、大阪方の優勢は注目に値するものであつた」としている。
- ^ たとえば昭和19年刊行の海音寺潮五郎の小説『父祖の道』に「久光公では役者不足である。かかる思い切った大経綸は、先君のやうなその力量手腕が天下にみとめられている人にしてはじめてできることで、久光公では荷がかちすぎる」とある。
- ^ 実用日本語表現辞典
役不足
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 23:39 UTC 版)
本来は「本人の力量に対して役目が軽すぎること」の意味である。
※この「役不足」の解説は、「日本語の誤用」の解説の一部です。
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役不足
「役不足」の例文・使い方・用例・文例
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