工業原料としての利用
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過酸化水素全体の使用量では、製紙の際のパルプ漂白や廃水処理、半導体の洗浄など、工業的な利用が大部分を占める。塩素系の漂白剤などが多量の廃棄物を生じるのに対し、過酸化水素は最終的には無害な水と酸素に分解するため、工業利用するには環境にやさしい物質であると言われ、近年工業的な過酸化水素の利用は拡大してきている。 試薬用としては、濃度30w/v%(約10mol/ℓ)の過酸化水素水が市販されている。主に酸化剤として用いられる。過酸化水素を酸化剤に用いた環境負荷の低い新規酸化反応法などが精力的に研究されている。同様の観点から合成への利用も数多く検討されているが、費用の高さのため、実用化されたプロセスはシクロヘキサノンオキシム合成など限られており、利用用途におけるシェアはまだ低い。 閉鎖系エンジン(非大気依存推進)の酸素源としても利用が検討された。1930年頃からドイツのヘルムート・ヴァルターによって、高濃度過酸化水素の分解により酸素を発生させ、内燃機関を作動させるアイディアが研究され、ヴァルター機関が開発された。各国で開発が進められ、第二次世界大戦中にはドイツでUボートXVIIB型が建造された。 第二次世界大戦後、戦勝国がその成果を持ち帰り、イギリスではエクスプローラー級潜水艦、ソビエト連邦ではS-99が建造されて試験に供されたが、いずれも成果は芳しくなかったこと、高濃度過酸化水素の取扱いが難しく事故を起こしたことに加え、アメリカ海軍において艦船に搭載可能な原子力機関の開発が成功したこともあって、ヴァルター機関はそれ以上省みられることなく、潜水艦の水中動力源としては実用化には至らなかった。日本でも第二次世界大戦中にドイツから技術提供を受けてヴァルター機関が研究されたが、実用化される前に終戦を迎えた。 一方で魚雷の動力源としては、海上自衛隊の72式魚雷やイギリス海軍の21インチ マーク12魚雷、ソビエトの65型魚雷で使用され、一定の成果を収めている。しかし、マーク12魚雷はHMS Sidon、65型魚雷はクルスクで、それぞれ推進剤の高濃度過酸化水素に起因すると見られる事故を起こして、搭載艦が沈没している。 その他にもロケット飛行機であるメッサーシュミット Me163のエンジンHWK 109-509や秋水の特呂二号原動機、Hs 293誘導弾、ロケットベルトの推進剤として使用され、磁気浮上式鉄道のKOMET(Komponentenmeßtrager)で1975年に401.3 km/hの速度記録を樹立するときにも使用された。他にV2ロケットではターボポンプの駆動ガスの発生にも使用され、イギリスのアームストロング・シドレー ステンター、アームストロング・シドレー ベータ、ブリストル・シドレー ガンマ、ブリストル・シドレー BS.605、デ・ハビランド スペクター等のロケットエンジンでも酸化剤として使用された。 軍用機以外では、水上速度記録更新を狙ったロケット推進型パワーボート「ディスカバリーII」、2014年11月9日に時速333kmを記録したフランソワ・ギッシー(Francois Gissy)操縦のロケット推進自転車「Kamikaze V」 の推進剤としても用いられている。
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工業原料としての利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 17:54 UTC 版)
東南アジア(タイが主要国)などで栽培されたキャッサバは乾燥工程を経て「キャッサバチップ」へ加工され、中国などに輸出される。その後、中国では発酵工程を経てエタノール(バイオマスエタノール)となる。それを原料に氷酢酸とエステル化した酢酸エチルが、大量に生産されている(約80万MT/年)。中国で生産された酢酸エチルは年間約30万MT程度海外に輸出されており、有機化学分野では貴重な外貨獲得手段となっている。
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