岩絵とは? わかりやすく解説

いわ‐え〔いはヱ〕【岩絵】

読み方:いわえ

岩の表面洞窟内の壁面などに描かれた絵。特に、有史以前人類描いたものについていう。


岩絵

作者深井

収載図書木魚
出版社日本図刊行
刊行年月1994.3


ペトログリフ

(岩絵 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/10 04:14 UTC 版)

ブライス・キャニオンのペトログリフ。数千年前のものと推測されている。
シカチ・アリャンロシア語版ナナイ族によるペトログラフ。

ペトログリフ英語:petroglyph)とは、象徴となる岩石洞窟内部の壁面に、意匠文字が刻まれた彫刻のこと。ギリシア語を意味するペトロとグリフ(彫刻)の造語である。日本語では線刻画・文字)と呼ばれたり、岩面彫刻岩石線画岩面陰刻と訳される。

似たものとして岩に描くペトログラフ(岩絵)があるが、学問上、ペトログリフとペトログラフは同一ではなく、それぞれ定義があって区別されている(概要にて後述)。日本では、しばしば両者が混同されるため注意が必要である。

概要

人類が後世に伝えたいさまざまな意匠や文字を岩石に刻んだもの。筆記具や紙を持たない古代の人々が残した記録や文字・文章システムの先駆けを示すものとして注目されがちであるが、アメリカ合衆国ハワイ州などには16世紀17世紀にかけて刻まれた比較的新しいものもある[1]。また、近世や現代においても、宗教的な儀式の目的やアートとして刻まれるものも多数存在している。

海外ではペトログリフは勿論、岩石芸術(英語で言うRock art、ペトログラフにあたる洞窟の壁画、ドルメンストーンサークル等も含む)全般の研究が行われており、特にで研究が盛んであり、ユネスコに研究機関があるほか、ハーバード大学などでも研究が行われている。その英語圏では、岩に刻まれた彫刻のことをペトログリフ (Petroglyph)、岩に描かれた絵画のことをペトログラフ (Petrograph)、という定義で両者を区別している[2]

他方、日本ではこの定義づけがあいまいで、ペトログリフとペトログラフの両者を混同している記述がしばしば見られる。表現のモチーフが類似しており、英単語も似ているために恐らくは翻訳時の混同が起こったと思われるが、彫刻と絵画は美術界でも明確に区別される(表現のモチーフが同一の場合も)。正しくは英語圏の定義に沿って、岩に刻まれた意匠・図絵の彫刻についてだけを、学問上ペトログリフと呼ぶ。

内容

最も古いものはウクライナの「カメンナヤ・モグリャ」にあるもので、旧石器時代(約10,000から12,000年前)のものといわれている。7,000から9,000年前頃には絵文字表意文字のようなものが現れ始めた。この頃は世界中で岩面彫刻はまだ一般的であったが、いくつかの文化では20世紀になって西洋の文化が入ってくるまで、使用し続けていた。

それらの場所や作られた時代、イメージのタイプ等から推察される目的については、多くの理論がある。いくつかのペトログリフは、天文学で使う印、地図および記号的なコミュニケーションの他の形式であると思われる。地形あるいは周囲の土地を表す岩面彫刻はGeocontourglyphとして知られている。それは道、川、時間と距離を表しているとも推察される。

さらに、それらは他の儀式の副産物とも考えられる。たとえばインドのものは、ロックゴングという楽器であると確認された。いくつかのペトログリフは、それを作った当時の社会において文化的にあるいは宗教的に重要なものだと考えられる。その重要性は子孫へと伝えられる。スカンジナビアの北欧人の青銅器時代以後の記号は、宗教的な意味に加えて、種族間の領土の境界を表すように見える。

さらに、地域ごとに方言が存在するように見える。たとえば、「シベリアの銘」と呼ばれるものはほとんどルーン文字のある初期の形式のような形をしている。しかし、詳しい事は分かっていない。

ヨハネスブルグのヴィトヴァーテルスラント大学の岩石芸術研究所 (RARI) が、カラハリ砂漠サン人の中のシャーマン教と岩石芸術との関係について研究した。サン人の美術品はおもに絵画であるが、それらの背後にある信条は、それらを理解する根拠になるという。RARIウェブサイトによると、研究者は、サン人の信条がその画家の信仰生活に基本的な役割を果たしたことを示した。絵の背後には別の世界がある。踊り手が動物の形で飛び立ち、力を引くことができ、治療、人工降雨および狩猟を導くことができたという。

意義

おもに考古学的な面と美術的な面から研究が行われている。考古学的には過去の人々の風俗や生活様式、ときには気候などを類推できるほか、文字の誕生を探る上でも貴重な手がかりと考えられている。また美術的な価値についても研究がなされている。

研究における有効性の問題として、岩石の風化により生じる亀裂やくぼみがペトログリフであると誤認される場合のあることや、遺跡の改竄や捏造といった問題が挙げられる。

一致

世界中で調査され、GPSで記録されたペトログリフを分析した結果、紀元前3000年から7000年頃のペトログラフに、大陸の全域の広い範囲で共通性がある事が分かっている。 よく見られる模様としては、うずくまる人、キャタピラー梯子アイマスクココペリ(インディアンの神様)、輪留めをかけられた車輪、等が挙げられる。

この理由としては様々な説が考えられている。

世界的移動説
特定のグループが、ある地域から世界中に移ったという説。1853年に、ジョン・コリングウッド・ブルースとジョージ・テイトが唱え、ロナルド・モリスが彼らの104の理論を要約した。
シュメール人が世界中に広まったという説はこの説の親戚である。
遺伝説
他の、より論争の的になっている説明は遺伝によるものである。ユング心理学およびミルチャ・エリアーデの見解では、人間の脳に遺伝学的に相続した構造があるからではないかとしている。
薬物説
幻覚剤を使用して精神が異常状態になったシャーマンによって作られたという説。デービッド・ルイス=ウィリアムズは、これらの模様は人間の脳に組み込まれたもので、それらが薬や片頭痛および他の刺激によって起こる視覚障害や幻覚によって頭に生まれるのではないかとしている。

日本のペトログリフ

太平洋地域にペトログリフの文化が点在し、日本においてもペトログリフの存在が確認されており、幾つかの団体が研究を行っている。

日本先史岩面画研究会は北海道の手宮洞窟やフゴッペ遺跡の研究から発展している組織で、こちらは主に美術的な観点からの調査を行っている。

両会とも世界各地で調査を行っており、海外の学会で発表する等、成果を挙げている。

なお、1994年3月28日の読売新聞によると、山口県下関市彦島の市指定文化財「彦島杉田岩刻画」(平成3年5月指定)に傷がつけられているのが発見され、ニュースになった(同新聞によれば、大正13年に地元の人が発見、昭和51年頃から研究があった、とされる)。

主な遺跡

アジア

その他陰山山脈寧夏回族自治区にもある。

アフリカ

アラヴァ岬の南1kmに存在するペトログリフ

北アメリカ

中南米

太平洋・オセアニア

ヨーロッパ

脚注

  1. ^ ルアヒワペトログリフとは」コトバンク、世界の観光地名がわかる事典の解説より。
  2. ^ "Petroglyph vs Petrograph - What's the difference?",Wiki Diff.

関連文献

  • 日本先史岩面画研究会
  • Petroglyph
  • 読売新聞 1994年3月28日付西部朝刊 『「古代文字」岩刻画に傷 貴重な文化財にいたずら/下関』

関連項目

外部リンク


岩絵

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/23 13:50 UTC 版)

コア渓谷とシエガ・ベルデの先史時代の岩絵遺跡群」の記事における「岩絵」の解説

発見された岩絵は主にウマウシヤギなどの動物表したもので成り立っている。人物画抽象的な図像存在する。 それらは、渓谷沿いの切り立った断崖線刻画の技法使って描かれている。それらの大きさまちまちで、15 cm から180 cm まである太線描かれているものもあるが、多く細く流麗な線で描かれている。これらの線刻画は、1995年時点研究では、20000年前にまで遡る算定されている。 この先史的岩絵遺跡重要性は、その稀少さと広がりにある。先史時代洞窟壁画確かに多くある。しかし、青空のもとにある岩絵群は数が少ない。そして、その例としてはメキシコのマソウコ(en:Mazouco)、フランスのフォルノル・オー(en:Fornols-Haut)、スペインのドミンゴ・ガルシアなどを挙げることができるが、そのいずれもコア渓谷遺跡広がり比肩するものではないのだ。 考古学者たちは、この場所が、先史時代の人類にとっての聖域のようなものであった認識している。

※この「岩絵」の解説は、「コア渓谷とシエガ・ベルデの先史時代の岩絵遺跡群」の解説の一部です。
「岩絵」を含む「コア渓谷とシエガ・ベルデの先史時代の岩絵遺跡群」の記事については、「コア渓谷とシエガ・ベルデの先史時代の岩絵遺跡群」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「岩絵」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「岩絵」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「岩絵」の関連用語

岩絵のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



岩絵のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのペトログリフ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのコア渓谷とシエガ・ベルデの先史時代の岩絵遺跡群 (改訂履歴)、タムガリ (改訂履歴)、ビームベートカーの岩陰遺跡 (改訂履歴)、チョンゴニの岩絵地域 (改訂履歴)、サン人の宗教 (改訂履歴)、エネディ山地 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS