山杜サキの受難
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/11 08:17 UTC 版)
「アイドル天使ようこそようこ」の記事における「山杜サキの受難」の解説
首藤によればサキの人気は「ようこに負けず劣らずだった」というが、スポンサーサイドからは激しく嫌われていたという。スポンサーサイドでの本作品の主役はあくまで田中ようこであり、ようこにはたくさんの玩具が用意されたが、サキはサブキャラクターの扱いで何も用意されなかった。なお、ようことサキがおもちゃの倉庫に住んでいたり、アイスクリーム屋やおもちゃ屋「ハローマック」を頻繁に登場させたのもスポンサーの意向や玩具製作に柔軟に対応するためである。 ところが、主人公のようこは実際の田中陽子とはキャライメージや性格が全然違っていたことや、肝心の田中陽子本人の人気も今ひとつだったために主人公のようこの人気も横ばいだったのに対して、サキは容姿や性格、さらに林原めぐみの声質がイメージ通りに重なって、ようこと同等かそれ以上に人気が出てしまい、物語の中盤に差し掛かる頃には玩具やグッズの売上にもかなりの影響が出てしまった。それを知ったスポンサーサイドがサキを出さないように圧力をかけ、それが出来なければスポンサーを降りて番組を打ち切らせることも示唆してきたという。首藤は「ようこそようこ 山杜サキ暗殺指令事件」と語っている。 スポンサーとは逆に、ようこ、サキ、星花京子、吉秋久美子の4人を主要人物、そしてその中でもようことサキを主役として設定を煮詰めていた首藤やアミノは「サキはこの物語には欠かせない大変重要なキャラクター、しかしスポンサーから見限られたら番組は成り立たなくなる」と、この圧力に大変悩み苦しんだという。サキに女優デビューさせて外国に出すか郷里に戻すかの設定変更も考えたものの、サキ無くして「ようこそようこ」は製作出来ないと決断した首藤はサキを生かすため、ある強行手段に出た。それは監督やスポンサーとの製作前の脚本打ち合わせ(いわゆる「本読み」)を出来なくするためにわざと病院に入院して雲隠れし、製作を続けるというものである。ただし、この頃の首藤は仕事のストレスや心労、それに伴うアルコール依存症などを抱えて極度の体調不良に陥っており、医師から即入院を宣告されるほど健康状態は最悪だったとプロデューササイドに本人が告げている。しかし、アニメスタイル「えーだば創作術」の「アイドル天使ようこそようこ」についての本人の記載によると、この入院までの過程は色々な事情があったようである。 首藤は病室にワープロを持ち込んで脚本を放送ギリギリに仕上げ、打ち合わせは病院の電話でできるだけアミノテツローのみと行い、出来た原稿をすぐに郵送、間にあわぬ時は製作スタッフに取りに来てもらい、スタッフがその日のうちに現場に持ち帰ってアミノテツローの了解のもと、すぐ絵コンテを切る…という、一歩間違えば放送に間に合わないくらいギリギリのリレー方式で作品が製作されたため、本作の製作現場は特に過酷な状況だったという。首藤は当時の制作現場スタッフに対して、申し訳なさと限りない感謝の気持ちを2010年当時も感じていたと語ることがしばしばある。また、サキが主役になった「私のジュリエット」は脚本だけで半年以上かけて制作されたものであり、不当な圧力をかけるスポンサーへの反感や反抗から生まれたシナリオだったとの噂もあるが、これは噂の域を出ない。 入院中はなるべく病室から出ないようにしていたものの、病院敷地内の移動はかなり自由だった。脚本以外の専門分野で活躍する人への依頼は、全て入院前に済ませていた。それらの脚本の直し、医師からの時間制限の病院外出許可が出る以前の予告篇を病院内で行っていた。長時間外出が許されてからは、可能な限りアフレコにも立ち会っていた。病室のベッドにテレビのなかった当時、男性病棟のテレビのある面会室では、少女向けアニメを見るチャンネル権を取ることが難しかったため、放映中の「アイドル天使ようこそようこ」を医者の許可を取って女性病棟階のテレビのある面会室で見ていた。
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