小正準集団とは? わかりやすく解説

ミクロカノニカルアンサンブル

(小正準集団 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/22 02:11 UTC 版)

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統計力学


熱力学 · 気体分子運動論

小正準集団(しょうせいじゅんしゅうだん)、ミクロカノニカルアンサンブル: microcanonical ensemble)は、統計力学における系の微視的状態を表現する統計集団の一つである。 この統計集団が従う確率分布小正準分布(しょうせいじゅんぶんぷ)、ミクロカノニカル分布: microcanonical distribution)という。小正準集団孤立系に対応する統計集団である。

確率分布

小正準集団は孤立系に対応する。孤立系ではエネルギーが保存する。

系が小正準集団にあるとき、微視的状態 ω をとる確率分布 p(ω) は

で定義される。この確率分布を小正準分布と呼ぶ。 ここで、E は系の巨視的なエネルギーである。

集合 Ω(E) は

であり、系が微視的状態 ω をとるときのエネルギー E(ω) が、巨視的なエネルギー E と(殆ど)等しくなるような微視的状態 ω の集合である。

χΩ(E) の指示関数ωΩ(E) に属すならば 1 を、さもなくば 0 を返す関数である。つまり、

である。 微視的状態 ωΩ(E) は全て等しい重みで出現しており、これを等確率の原理という。

確率分布の分母に現れる規格化定数 W(E) は

である。 W(E) は微視的状態 ω の数であり、状態数とも呼ばれる。

粒子数が保存する場合

粒子の化学反応対生成対消滅を考えない場合は、粒子数も保存する。 この場合は集合

を考え(N(ω) は系が微視的状態 ω をとるときの粒子数、N は系の巨視的な粒子数、すなわち物質量)、確率分布と状態数は

となる。

熱力学との関係

系が微視的状態 ω をとるときの微視的な物理量O(ω) で与えられるとき、対応する熱力学的な状態量期待値

として再現される。

熱力学的に正常な系において状態数 W は、系の大きさ Λ (例えば体積 V )が大きいときに

のように振舞う。ここで、ε=E/Λ, ρ=N/Λ である。

ボルツマンの公式により、エントロピー

となる。

関連項目


小正準集団(NVE)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/01 08:35 UTC 版)

分子動力学法」の記事における「小正準集団(NVE)」の解説

小正準(ミクロカノニカル、NVE)集団アンサンブル)において、系はモル(N)容積(V)エネルギー(E)変化から分離される。これは熱交換のない断熱過程対応する。ミクロカノニカル分子動力学トラクジェクトリは全エネルギー保存されポテンシャルエネルギー運動エネルギー交換として見ることができる。座標 X {\displaystyle X} と V {\displaystyle V} を持つ速度N個の粒子の系では、一次微分方程式の対をニュートンの記法で以下のように書くことができる。 F ( X ) = − ∇ U ( X ) = M V ˙ ( t ) {\displaystyle F(X)=-\nabla U(X)=M{\dot {V}}(t)} V ( t ) = X ˙ ( t ) . {\displaystyle V(t)={\dot {X}}(t).} 系のポテンシャルエネルギー関数 U ( X ) {\displaystyle U(X)} は、粒子座標 X {\displaystyle X} の関数である。これは物理学ではポテンシャル」、化学では「力場」と単に呼ばれる最初方程式ニュートンの法則(系中の個々粒子作用する力 F {\displaystyle F} は U ( X ) {\displaystyle U(X)} の負の勾配として計算できる)から来ている。 全ての時間ステップについて、個々粒子位置 X {\displaystyle X} および速度 V {\displaystyle V} はVerlet法といったシンプレティック法を用いて積分することができる。 X {\displaystyle X} および V {\displaystyle V} の時間発展はトラジェクトリと呼ばれる初期位置例え理論上知見から)および初期速度例えランダム化ガウシアンから)が与えられれば、未来(あるいは過去)の全ての位置および速度計算することができる。 よくある混乱の源の一つMDにおける温度の意味である。一般に、我々が経験しているのは膨大な数の粒子を含む巨視的温度である。しかし温度統計的量である。もし、十分大きな数の原子存在すれば、統計的温度は「瞬間温度」から見積ることができる。これは、系の運動エネルギーをnkBT/2(kBボルツマン定数、nは系の自由度の数)と同じと見なすことで得られる温度関連した現象MDシミュレーション使われる少数原子原因生じる。例えば、500原子を含む基質100 eV蒸着エネルギーから開始される薄膜成長シミュレーション考える。現実世界では、蒸着した原子からの100 eV多数原子10 10 {\displaystyle 10^{10}} 以上)の間ですばやく輸送共有され温度大きな変化生じないしかしながら、わずか500原子しかない時は、基質蒸着によってほぼすぐに蒸発する生物物理学シミュレーションでも似た事例が起こる。NVEにおける系の温度タンパク質といった高分子発熱的なコンホメーション変化結合起こす時に自然に上昇する

※この「小正準集団(NVE)」の解説は、「分子動力学法」の解説の一部です。
「小正準集団(NVE)」を含む「分子動力学法」の記事については、「分子動力学法」の概要を参照ください。

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