熱力学との整合性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 03:54 UTC 版)
このように小正準集団により与えられたエントロピーが、先に見た熱力学のエントロピーと整合していることを確認する。エネルギーE、小正準集団によるエントロピーSの系を、透熱壁を入れることにより 2 つの部分系に分離する。それぞれの系にエネルギーがE1, E2と分配されるとしよう。この場合、系全体の状態数か、あるいはその対数であるエントロピーが最大になるように部分系のエネルギーが決定されると考えるのは自然であろう。系全体の状態数は 2 つの部分系の状態数の積であり、すなわち系全体のエントロピーSは 2 つの部分系のエントロピーS1, S2の和である。条件E2 = E − E1の下で全体のエントロピーを最大とする条件を考えると、 d S d E 1 = d S 1 d E 1 + d S 2 d E 1 = d S 1 d E 1 − d S 2 d E 2 = 0 {\displaystyle {\frac {dS}{dE_{1}}}={\frac {dS_{1}}{dE_{1}}}+{\frac {dS_{2}}{dE_{1}}}={\frac {dS_{1}}{dE_{1}}}-{\frac {dS_{2}}{dE_{2}}}=0} すなわち d S 1 d E 1 = d S 2 d E 2 {\displaystyle {\frac {dS_{1}}{dE_{1}}}={\frac {dS_{2}}{dE_{2}}}} となる。ここで、このエントロピーを熱力学のものと同一視すると、dS/dE = 1/Tが成立するのであった(部分系の体積は固定しておくことにする)。透熱壁を用いて 2 つの系を接触させた場合、平衡状態では当然 2 つの系の温度は等しくなることと、ここで確認した事実は確かに整合している。 熱力学と整合するアンサンブルは、ここで例示した小正準集団の他にも、正準分布や大正準分布がある。
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