熱力学とカルノー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 01:22 UTC 版)
「ニコラ・レオナール・サディ・カルノー」の記事における「熱力学とカルノー」の解説
カルノーが正当に評価されるのには年月を要したので、研究・発表当時は新しい発見であったが、それが科学の発展には結果的に寄与しなかったものも多い(例えば、熱の仕事当量の算出など)。一方で、カルノーサイクルや、準静的過程の考えなど、現在でも熱力学を学ぶ上で必須の事柄となっているものもある。 また、カルノーの定理に代表される、熱と仕事の関係性の研究は、後の熱力学の発展に大きく寄与している。 トムソンによりカルノーの論文が注目され始めた1840年代後半、熱研究の分野では、旧来のカロリック説から脱却し、熱は運動の一形態だとする理論が組み立てられつつあった。その中心人物の一人であるジュールによる、熱の仕事当量の測定は、熱と仕事は同質のものであるという結論を導き出した。しかし、これはカルノーの「熱は高温と低温がなければ仕事としてははたらかない」という理論とは矛盾があった。カルノー自身も『覚書』で、熱が運動だという考えでは、「熱によって動力を発生させるときに冷たい物体が必要なのはなぜか、また、熱くなった物体の熱を消費しながら運動を生じさせることができないのはなぜか、を説明することは困難であろう。」と述べている。この問題を解決するために、ウィリアム・トムソンやルドルフ・クラウジウスによって生み出されたのが熱力学第二法則である。 つまり歴史的に見ると、カルノーは第一法則(エネルギー保存則)も確立されていない時代に、熱と仕事の関係性にいち早く注目し、その研究内容は熱力学第二法則まで踏み込んだものとなっていたことになる。そのため、カルノーは熱力学の祖とされることがある。物理学者であるエルンスト・マッハは、当時の数少ない実験データから的を射た原理を導き出したカルノーの研究に対し、「そこには、ひとりの天才のこの上もなく快い演技を見る感がある。――かれは、格別の精励もなく、こと細かいそして重苦しい学問的手練をさして費やしもせず、ただ、ごく単純な経験的事実に心を向けることによって、いわばほとんど労することなしに最も重要なことを見通しているのである」と評している。
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