実戦と対外関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 15:35 UTC 版)
第一次世界大戦でのオスマン帝国敗北後、ギリシャやアルメニア、フランスの侵攻・占領軍と戦い、現在のトルコ共和国の確立と領土確保の原動力となった(トルコ革命)。第二次世界大戦では、末期に日本に形式的な宣戦布告をしたのみで、中立を維持した。 戦後はソ連の脅威に対抗するため米欧と協調して朝鮮戦争に派兵したほか、NATOに参加して南からソ連・東欧諸国(ワルシャワ条約機構)を牽制した。一方、同じNATO加盟国であるギリシャとの緊張は続き、キプロス紛争に介入。現在も北キプロスに駐留している。 またアフガニスタンにおける国際治安支援部隊の参加国でもある。 トルコはアナトリア半島南東部にクルド人居住地域を含んでおり、独立を求めるクルディスタン労働者党(PKK)の武力闘争に対する鎮圧作戦を長年続けている。PKKなど反トルコ派のクルド人は国境をまたいで居住・活動しているほか、イラク戦争後の混乱やシリア内戦を機に勢力を拡張したイスラム国(ISIL)がトルコ本土でテロを起こすようになった。このため親トルコ派勢力の支援も兼ねて、イラクとシリアへの派兵や越境空爆をしばしば行っており、両国政府から主権・領土の侵害として抗議を受けている(トルコ軍によるシリア侵攻)。 トルコは中近東有数の軍事力を有するうえ、経済発展により国民の自負心が高まっている。こうした背景により、中東・イスラム圏全体に影響力を及ぼそうとする「新オスマン主義」と呼びうる外交・安全保障政策をとりつつあると指摘されている。2016年には、オスマン帝国が一時支配下に置いていたペルシャ湾岸のカタールの軍事基地を利用する協定を締結。2017年にはソマリアのモガディシオに軍事基地を設けた。2020年ナゴルノ・カラバフ紛争ではアゼルバイジャンを支援し、同国首都バクーで12月10日実施された戦勝式典にはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が主賓格で招かれたほか、トルコ軍兵士も行進に参加した。同年にはリビア内戦にも暫定政権を支援するため派兵した。 こうした動きの底流にはキプロス紛争で芽生えたNATOへの不信があり、上海協力機構などの非NATO諸国との関係をより重視するユーラシア主義者の政治家や軍人が存在するとも指摘されている。軍事装備は西側のものだけではなく、中華人民共和国の協力で弾道ミサイルのJ-600Tユルドゥルム(英語版)やMRLSのT-300カシルガ(英語版)を開発しており、中国の地対空ミサイルであるHQ-9も購入するも後に撤回した。ロシアからはNATOと互換性のない地対空ミサイルのS-400を導入した。また、従来はアメリカ合衆国やイスラエルと行ってきた合同軍事演習アナトリアの鷲(英語版)を中国とも実施した。自立志向も強く、装備の国産化率を7割に高め、さらに中東諸国やトルクメニスタン、パキスタンなどに輸出もしている。無人機など装備の開発・改良には、シリアなどでの実戦経験が反映されている。
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