女性研究者
政府が科学技術分野における女性の活躍促進に力を入れています。内閣府男女共同参画局は「女性研究者を応援します!~女性研究者の活躍推進のための取組事例」を9月30日に発表しました。文部科学省は科学技術分野における女性の活躍促進を狙い、09年度に関係予算の大幅増を要求しています。
政府は05年の「男女共同参画基本計画(第2次)」と06年度からの「第3期科学技術基本計画」で「女性研究者の採用目標は自然科学系全体で25%」と明記しました。しかし研究者に占める女性の割合は07年3月時点で12.4%しかありません。ロシアは42.1%、米国34.3%、イタリア29.9%、フランス27.8%、英国26.0%です。日本は韓国にも抜かれ、主要国で最下位レベルに低迷しています。
アンケート調査などにより、日本において女性研究者が少ないのは「出産、育児、介護などの負担が大きい」、「評価、昇進、処遇において女性が不利な状況にある」、「時間外労働など勤務時間や勤務形態の特殊性」、「研究者を志す女性が少ない」などが主な理由にあげられています。文科省は第3期基本計画が始まった06年度から、これらの問題を解決するために、大学、研究機関の女性研究者増加に向けた環境づくりを中心に実施していました。
具体的には、カウンセラーなどの専任スタッフ設置、研究支援者配置、出産・育児期間中の負担を軽減するための柔軟な勤務体制づくりなどのシステム改革を行うモデルの大学、研究機関を選び支援してきました。すでに3年間で大学を中心に33機関を選定、成果を上げつつある機関も出始めています。
09年度からはこうしたシステム改革に加え、採用した女性研究者の人件費と研究費を1人600万円まで直接補助する制度を設けることにしました。文科省は「人件費を直接補助することに対しては賛否両論あるが、あえてポジティブアクションを起こして意識を変えたい」と踏み切った理由を説明しています。特に理学は女性研究者採用目標20%に対し13%、工学同15%に対し6%、農学同30%に対し16%と、目標と実態との乖離(かいり)が大きいため、この3部門を対象にする計画です。
文科省や大学、研究機関が女性研究者を増やそうとするのは、男女雇用機会均等の実現とともに、研究現場の多様性を高めるのが狙いです。日本の理工系大学では自校出身の男性研究者が多くを占めています。他校出身者や外国人を増やすのと同様に女性の比率を高めることにより、多様な人材の集団にしようと考えています。
やることが決まっていれば、一様な集団の方がうまくいくこともあるかもしれませんが、最先端の研究成果を生み出すためには、性別や国籍、生まれ育ちの異なる人材による多様な視点・発想のぶつかり合いが欠かせないからです。ノーベル賞級の優れた研究者が米国の研究拠点に移るのも、研究資金量の問題だけでなく、多様で刺激的な研究環境を求めてということではないかと思われます。
日本が世界に誇る科学技術創造立国になるためには、多様性に富んだ研究現場をつくり、世界から優秀な人材を呼び込むことが必要です。その第1歩として先進諸国の半分から3分の1の女性研究者比率を高めることができるかどうかが問われているのではないでしょうか。女性研究者比率の向上は、居心地のよい同質的研究現場に安住する意識からの脱皮を求められているといえます。
(掲載日:2008/11/27)
政府は05年の「男女共同参画基本計画(第2次)」と06年度からの「第3期科学技術基本計画」で「女性研究者の採用目標は自然科学系全体で25%」と明記しました。しかし研究者に占める女性の割合は07年3月時点で12.4%しかありません。ロシアは42.1%、米国34.3%、イタリア29.9%、フランス27.8%、英国26.0%です。日本は韓国にも抜かれ、主要国で最下位レベルに低迷しています。
アンケート調査などにより、日本において女性研究者が少ないのは「出産、育児、介護などの負担が大きい」、「評価、昇進、処遇において女性が不利な状況にある」、「時間外労働など勤務時間や勤務形態の特殊性」、「研究者を志す女性が少ない」などが主な理由にあげられています。文科省は第3期基本計画が始まった06年度から、これらの問題を解決するために、大学、研究機関の女性研究者増加に向けた環境づくりを中心に実施していました。
具体的には、カウンセラーなどの専任スタッフ設置、研究支援者配置、出産・育児期間中の負担を軽減するための柔軟な勤務体制づくりなどのシステム改革を行うモデルの大学、研究機関を選び支援してきました。すでに3年間で大学を中心に33機関を選定、成果を上げつつある機関も出始めています。
09年度からはこうしたシステム改革に加え、採用した女性研究者の人件費と研究費を1人600万円まで直接補助する制度を設けることにしました。文科省は「人件費を直接補助することに対しては賛否両論あるが、あえてポジティブアクションを起こして意識を変えたい」と踏み切った理由を説明しています。特に理学は女性研究者採用目標20%に対し13%、工学同15%に対し6%、農学同30%に対し16%と、目標と実態との乖離(かいり)が大きいため、この3部門を対象にする計画です。
文科省や大学、研究機関が女性研究者を増やそうとするのは、男女雇用機会均等の実現とともに、研究現場の多様性を高めるのが狙いです。日本の理工系大学では自校出身の男性研究者が多くを占めています。他校出身者や外国人を増やすのと同様に女性の比率を高めることにより、多様な人材の集団にしようと考えています。
やることが決まっていれば、一様な集団の方がうまくいくこともあるかもしれませんが、最先端の研究成果を生み出すためには、性別や国籍、生まれ育ちの異なる人材による多様な視点・発想のぶつかり合いが欠かせないからです。ノーベル賞級の優れた研究者が米国の研究拠点に移るのも、研究資金量の問題だけでなく、多様で刺激的な研究環境を求めてということではないかと思われます。
日本が世界に誇る科学技術創造立国になるためには、多様性に富んだ研究現場をつくり、世界から優秀な人材を呼び込むことが必要です。その第1歩として先進諸国の半分から3分の1の女性研究者比率を高めることができるかどうかが問われているのではないでしょうか。女性研究者比率の向上は、居心地のよい同質的研究現場に安住する意識からの脱皮を求められているといえます。
(掲載日:2008/11/27)
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