大質量星
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 06:35 UTC 版)
大質量の主系列星は、その周波数スペクトルはΚ機構によって励起される音響モードが優勢である。これは鉄族元素が部分的に電離して不透明度が極大になる層で働くメカニズムである。さらに、これらの恒星の最も進化したものは混合した振動モード、すなわち深い層でのgモード振動と外層でのpモード振動を示す。水素燃焼は、ヘリウムまたは鉄族元素の部分電離と関連した小さな対流層を除くと、様々な化学組成の領域と放射が支配的な外層に囲まれた対流核で発生する。質量が小さい恒星での場合と同様に、対流核の直上にある完全に混合された領域、あるいは部分的に混合された領域の広がりは、理論モデルの構築に影響を与える主要な不確実性のひとつである。 ケフェウス座ベータ型変光星: ケフェウス座ベータ型変光星の星震学解析は、このさらなる混合領域の広がりを1対1で対応付けるのは自明ではないということを示している。へびつかい座θ星をモデル化する際にはいくぶんか大きな広がりの混合領域を考慮する必要があるが、HD 129929 やおおいぬ座β星、くじら座δ星(英語版)、とかげ座12番星の場合は混合領域は小さいと考えられている。さらに、HD 180642 やエリダヌス座ν星(英語版)では混合領域は存在していない可能性もある。この混合領域の広がりと、恒星の自転速度や磁場との関連性を明らかにすることは興味深い問題である。へびつかい座V2052星の星震学の解析では、この恒星は高速で自転しており、そのため広い混合領域の存在が予想されるにもかかわらず、理論モデルでは混合領域は存在しない可能性があるとされている。この恒星の磁場が検出されていることは、混合領域が存在しないことの理由である可能性がある。 Be星: 晩期Be星である HD 181231 と HD 175869 は非常に高速で自転する恒星であり、太陽の自転速度より20倍も速い。これらの天体の星震学の解析からは、対流のみの場合に予想されるよりもおよそ 20% 大きい中心部の混合領域が必要だと考えられている。また、別のBe星 HD 49330 の観測では驚くべき結果がもたらされた。この種類の恒星では星周円盤に向かった物質のアウトバーストがよく発生するが、COROT による観測ではこの最中に周波数スペクトルが大きく変化することが判明した。はじめは周波数スペクトルは音響モードが支配的であったが、アウトバーストと一致する振幅を持つ重力モードがスペクトル中に出現した。このような励起モードの性質と動的な現象の関連性は、Be星の内部構造を調査する上で重要な情報である。 O型星: COROT ではO型星の観測も行われている。それらのうち、NGC 2264(英語版) の一員である HD 46150と HD 46223、およびOBアソシエーション Mon OB2 の一員である HD 46966 は脈動を起こしていないように思われ、これは似たパラメータを仮定した恒星の理論モデルとは一致しない。対照的に、プラスケット星 (HD 47129) の周波数スペクトルは理論モデルから予測される周波数領域に6つの共振を伴ったピークを示すことが分かっている。 その他の COROT による予想外の発見としては、大質量星における太陽に似た振動の発見がある。200000 K 程度での鉄族元素の電離に伴う不透明度の極大と関連した小さい対流殻が、太陽で観測されているのと似た音響モードの確率的な励起の原因となっていると考えられている。 わし座V1449星 (HD 180642): COROT の観測対象のひとつであるこの恒星はケフェウス座ベータ型変光星であり、周波数スペクトルは高周波数で、非常に小さい振幅の音響モードを示すことが明らかになっている。注意深い解析により、鉄の不透明度が極大になる対流領域や、もしくは対流核に起源を持つ乱流泡によって太陽に似た振動が励起されていることが示された。鉄の不透明度が極大になる領域で発生するκメカニズムによって励起された脈動が、全く同じ領域で確率的に励起された脈動と併存しているのが発見されたのはこれが初めてであり、大きな発見であった。2つが共存しているという性質から、この脈動の発見者の一人である Kevin Belkacem はわし座V1449星に対してキマイラに因み Chimera と名付けた。図はわし座V1449星の周波数スペクトルの2つのモードを示したものであり、横軸は時間、縦軸は周波数である。上の図が太陽に類似した振動モード、下の図がケフェウス座ベータ型変光星に見られるものと同じ振動モードである。太陽類似の振動モードの確率的な性質は、時間が経つに連れてある周波数が不安定性を示し、周波数の数 µHz の拡散が見られるという点に現れている。ケフェウス座ベータ型変光星に見られる、狭い周波数領域で安定に持続する下図のモードとの違いは明らかである。 HD 46149: 太陽に類似した振動は、後に連星系にあるより大質量の0型星 HD 46149 においても発見されている。連星を成していることから得られるこの恒星への制約と、星震学から得られる制約を合わせることで、この連星系の軌道要素や、連星をなす恒星の全体的な性質を決定することが出来た。
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