吉川流の味付けとは? わかりやすく解説

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吉川流の味付け

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/27 20:36 UTC 版)

三国志 (吉川英治)」の記事における「吉川流の味付け」の解説

吉川は「序」で 三国志には詩がある。(中略三国志から詩を除いてしまったら、世界的といわれる構想価値もよほど無味乾燥なものとなろう故に三国志は、強いて簡略にしたり抄訳したものでは、大事な詩味逸してしまうし、もっと重要な人の胸底を搏つものを失くしてしまう惧れがある。で私は簡訳や抄略を敢てせずに、(中略主要人物などには、自分解釈創意をも加えて書いた記しており、原作訳書こだわらずに、吉川英治流の味付け日本人向けに物語を描くことを宣言している。 『演義冒頭第1回劉備関羽・張飛三人による桃園の誓いも、原作ではあっさりと三人意気投合してすぐさま義兄弟となるのに対し、悩む青年劉備黄巾賊さらわれた美女芙蓉との恋心怪力兵卒張飛学童師匠関羽劉備賢母との交流など、大胆な改編行って三兄弟人物造形読者強烈に印象づけている。実際に三人義兄弟の盟を結ぶのは、第1巻半分ほど過ぎてからである。冒頭三兄弟に関しては完全に吉川独自の物語となっている。 また、それまで悪者として捉えられていた曹操人間的な魅力増して描き単なる敵役ではない人物として存在感与えた本作における曹操は、関羽趙雲など優れた才を持つ武将恋慕し痛烈な敗戦焦慮する一方詩情鮮やかに賦を詠む、実に豊かな人間性持った人物として描かれている。篇外余録吉川は「曹操詩人孔明文豪」との評を下している。中国較べ日本曹操ファンが多いのも本作の影響大きい。 一方原作の『演義』にしばしば現れる妖術魔術などの超人的な描写排除している。黄巾軍張宝が使う妖術地形天候よるものだと劉備説明させ、孫策晩年脅かした于吉仙人曹操悩ませ左慈などは幻覚もたらす錯覚として描く。麒麟鳳凰出現などの瑞兆も「遠い地方現れたのではなく、これら重臣たちの額と額の間から出たものらし思われる」と片付けている。三国志最大見せ場となる赤壁の戦い重要なキーワードとなる「東南の風」も、原作では孔明道士服を着て祈ることで吹くことになっているが、本作では毎年この季節1,2日だけ吹く貿易風存在孔明予測していたとしている。 また劉安自分の妻を殺して劉備に肉を提供したエピソードなど日本人感情では理解しづらいと考えた箇所については、物語中に読者へ」と語りかける設け、「削除しようとも考えたが、あえて彼我民情相違読み知ることができ、日本における鉢木佐野源左衛門最明寺時頼のエピソードと同様である」と読者直接解説している。 なお『演義』は全120回で、魏・呉・蜀三国が晋に統一されるまでを描くが、諸葛孔明後半最大主人公位置づけ吉川は、孔明の死(第104回)以後物語甚だ興趣に劣るために省略し後書きともいえる篇外余録わずかにあらすじをなぞるのみとし、最後三国は、晋一国となった、と締められる張郃作品中3度戦死していたり、士孫瑞の名を誤って「孫瑞」、路昭を「露昭」と表記するなどの間違い散見される。また夏侯惇読み仮名は「かこうじゅん」と振られているが、これは当時までの演義作品でも「じゅん」と読まれていた名残である。 尾崎秀樹は「吉川『三国志』あらたな日本版の『演義』でもある」と評している。

※この「吉川流の味付け」の解説は、「三国志 (吉川英治)」の解説の一部です。
「吉川流の味付け」を含む「三国志 (吉川英治)」の記事については、「三国志 (吉川英治)」の概要を参照ください。

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