利水面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 05:39 UTC 版)
1つは利水に対する疑問である。徳山ダム計画時の水需要は高度経済成長を前提とした計画であったが、1990年代以降は水需要が鈍化傾向となり、当初の水需要と次第にかけ離れる、いわゆる水余りという問題がダム反対派から相次いで指摘された。事実、2000年には岐阜県・愛知県・名古屋市が水余りによって水利権の半分から3分の2を返上するということがあった。 折から公共事業に対する見直し論議も活発化し、徳山ダムは長良川河口堰とともに「計画と実情が乖離(かいり)した無用の長物」であると批判されるようになった。これを受け、建設省は細川内ダムや千歳川放水路などを中止・凍結するなど公共事業の見直しを進めたが、徳山ダムについても再検討を行うべく1995年(平成7年)に「徳山ダム建設事業審査委員会」が設立され、ダム建設の是非について学識経験者・専門家を含めた多角的な検証が行われた。この間、1991年(平成3年)には大垣市が水害の被害を受け、1994年(平成6年)には東海3県の記録的水不足により知多半島では1日19時間断水するなど、治水・利水に対する不安事項が表面化していた。結局、1997年に委員会はダム建設早期完成を促す答申を発表した。 これに納得しない大垣市などに在住する左派市民グループ「徳山ダムの建設中止を求める会」は、徳山ダム建設差し止め訴訟を1998年(平成10年)岐阜地方裁判所に起こした。第一審および名古屋高等裁判所の控訴審において「水需要の予測は将来を見越して計画を立てるので、その後変動が起こっても止むを得ない」として敗訴。その後、最高裁判所へ上告されたが2007年(平成19年)2月22日に「ダム建設は憲法違反にはあたらない」として棄却され、敗訴が確定した。 一方、徳山ダムの1973年当時の当初計画では水道水の需要を毎秒15.5m3と予定していたが、愛知・岐阜・三重の東海三県と名古屋市は2004年(平成16年)までに想定必要量を毎秒6.6m3に見直している。このため「徳山ダムの水は長良川にいらない市民学習会」などの市民団体は、木曽川水系連絡導水路について「無駄な公共事業である」と批判し、水余りにより過重な水道費や税の負担が生じるとして反発や懸念を示している。
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