上流域と下流域の意見相違
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 02:13 UTC 版)
「ダム建設の是非」の記事における「上流域と下流域の意見相違」の解説
また流域住民の意識と一口に言っても、上流域と下流域で大きく異なることも多い。下流域の住民にとっては、川沿い以外の地域であってもダム建設の影響で水源地整備費用の上乗せという形で水道料金が値上げされることも多く、安定的な水道供給の利便性や治水安全度の向上との比較で考えると、常に諸手を挙げて歓迎できるものとは限らない。他方で治水面や、農業用水をはじめとする利水面で直接的な恩恵が多い上流域ではダム事業が積極的に推進されることも多く、上流域と下流域で一つのダム事業に対して正反対の意見が見られることも例外的ではない。 例えば愛媛県における山鳥坂ダム(河辺川)でも見られ、2004年(平成16年)に中予分水事業が中止となり多目的ダムから治水専用ダムに計画が縮小されたが、水没住民を含む上流域の住民はダム建設を促進し、下流の大洲市の市民団体は「一坪トラスト運動」を駆使してダム建設反対を訴えている。また、佐賀県の城原川ダム(城原川)では賛成派の下流域住民と反対派の水没住民・一部の流域住民が鋭く対立。署名運動などを行い意見を訴え、遂には合併で誕生した神埼市市長選挙の争点にもなった。さらに吉野川第十堰の可動堰化問題では、下流の徳島市による住民投票が一方的として、上流の板野町・藍住町などが反発をしている。 このようにダム建設においては地元内の意見調整のみならず、水没地域・上流受益地と下流受益地、川沿いと高台の住民による意見の整合を図るのが年々難しくなっており、こうした事もダム事業長期化の一端を担っている。だが「流域住民の許可がなければダムは造れない」という不文律が確固たるものとなっている現在、意見の集約は賛否いずれにしても欠かせないものとなっている。
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