初期の水族館
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 22:00 UTC 版)
世界初の水族館が、何かという事には諸説あるが、1830年に博物学者のド・モリンズがフランスのボルドーで行った、魚介を入れた水槽の展示を世界初の水族館とするのが定説となっている。しかし、これは水槽を並べただけの単純なものであったため、その規模や施設などから1853年に作られたロンドン動物園のフィッシュ・ハウスが世界初の水族館であるという見方もある。 1853年、ロンドン動物園の付属施設として開館したフィッシュ・ハウスは、多くの温室と同じような設計が施されていた。P・T・バーナムはロンドン動物園の水族館に続き、1856年に早くもアメリカで初めての水族館を、ニューヨークのブロードウェイにある彼の設立したバーナム博物館(英語版)の一部として開館したが、バーナム博物館は1868年に焼失した。1859年には、ボストンにボストン水族館(英語版)が開館した。その後ヨーロッパでは、パリのジャルダン・ダクリマタシオンやウィーンのアクアリウム・サロン(共に1860年)、ハンブルクのハンブルク動物園(英語版)の一部としてのMarine Aquarium Temple(1864年)、アルフレート・ブレームが設立したベルリンのベルリン水族館(1869年)、ブライトンのブライトン水族館(1872年)など、いくつかの水族館が開館した。 旧ベルリン水族館は1869年に開館した。旧ベルリン水族館はベルリン動物園の場所ではなく、ベルリンの大通りであるウンター・デン・リンデン沿いという都市の中心部に建設された。水族館の初めの責任者は、1866年から1874年までの間ハンブルク動物園の責任者であったアルフレート・ブレームであり、彼は1874年までその職に務めた。ベルリン水族館は教育に重点を置いており、水族館の一部は天然の岩で作られ洞窟のように設計されていた。この天然石で作られた洞窟はGeologische Grotteと呼ばれ、これは「地球の地殻の外層」を表している。この洞窟はまた、アザラシのための鳥とプールが特色であった。旧ベルリン水族館は3階建の建物であり、2階に魚の入った水槽が置かれ、機械やタンクは1階に設置されていた。3階には、ブルームの特別な関心のために鳥の入った巨大な鳥小屋が置かれ、その周りには哺乳類の檻が置かれていた。この施設は1910年に閉館した。 アムステルダム動物園(英語版)のアルティス水族館は、1882年、ビクトリア朝風の建物内に建設され、1997年に改築された。19世紀末に建設されたアルティス水族館は当時最高水準の技術であると考えられていた。 日本で初めて作られた水族館は、1882年に開園した上野動物園に併設された「観魚室(うをのぞき)」と呼ばれる小さな淡水のアクアリウムである。その敷地面積は17.5坪であり、15ほどの水槽が置かれていた。その後、1897年の第2回水産博覧会において兵庫県の和田岬に設置された遊園地である「和楽園」に水族館が併設され、ここで初めて「水族館」という名称が用いられた。東京大学教授であり「水族館の父」と呼ばれる飯島魁によって設計されたこの水族館は、淡水水族館であった観魚室と異なり濾過循環設備を備えた本格的な海水水族館であった。博覧会に併設された施設であったため博覧会の終了とともに和田岬の施設は閉館したものの、同県の湊川神社に移築されて1910年までの間営業していた。文部科学省が所管する日本動物園水族館協会では、この和田岬の水族館を日本の水族館の原点であるとしており、神戸市立須磨海浜水族園では、日本における水族館発祥の地は神戸であるとしている。2021年現在、日本で最も歴史の長い水族館は、1913年開館の魚津水族館である。
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