出発から墜落まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 16:49 UTC 版)
「アメリカン航空191便墜落事故」の記事における「出発から墜落まで」の解説
アメリカ中部夏時間14時59分、オヘア国際空港のゲートから滑走路32Rまで地上滑走した。エンジン始動からプッシュバックと地上滑走の開始までを見守っていた整備員は特に異常を感じることはなかった。 当時の天候は晴れで視程は15マイル (24キロメートル)、地上付近は風速22ノット (25マイル毎時; 41キロメートル毎時)の北西の風が吹いていた。15時02分、191便は離陸許可を得て滑走路32Rで離陸滑走を開始した。コックピットボイスレコーダには、V1(離陸決心速度)、VR(引き起こし速度)を読み上げる声が記録されていた。 ここまで順調に離陸滑走が続いたが、浮揚のための機首上げ操作時に、左翼から第1エンジンがパイロン(エンジンを翼下に吊り下げる構造部)とともに分離した。パイロンとエンジンは翼の前方上側に巻き上がり、翼の上を通過して滑走路に落下した。さらに、左翼の前縁部 0.9 メートルも脱落した。第1エンジンのパイロンが外れたあたりから白煙または霧状のものが出ているのも目撃されている。エンジン分離を目の当たりにした管制官は、直ちに「アメリカン航空191便、引き返したいか?どの滑走路か? (Alright, American 191 heavy—do you want to come back and to what runway?) 」と無線で尋ねたが返答はなかった。 191便は離陸を継続し、アメリカン航空が定めたエンジン停止時の緊急手順に従ってパイロットは飛行速度を調整した。機体が地面から140フィート (43メートル)まで上昇した時点で、速度は172ノット (319キロメートル毎時)に達していた。機体は上昇を続けたが、ここから減速し始めて325フィート (99メートル)まで上昇したところで速度は159ノット (294キロメートル毎時)となった。ここで機体が左へ傾きだし、毎秒4度以上の急激なロールが始まった。続いて急激に左への機首振り(ヨー運動)が始まり、さらに機首が下がって降下しだした。ロール運動は垂直を超えるまで続き、15時04分頃、左翼と機首を下げた姿勢で墜落した。 墜落地点は、滑走路32Rの離陸側終端から北西に約4,600フィート (1,400メートル)にある開けた土地だった。機体は爆発し、墜落の衝撃と火災で破壊された。残骸は墜落地点とその隣にあったトレーラー・パークに飛散した。この火災によって、倉庫として使用されていた古い格納庫など墜落地点付近の6棟が全焼し、トレーラーハウスも5棟が全半焼した。墜落地点から約100メートルの場所にいた目撃者は「見上げると炎の雨が降ってきた」と述べている。 搭乗者271人は全員死亡し、地上にいた2人も巻き込まれて死亡、2人が火傷を負った。犠牲者の遺体は墜落の衝撃と火災で激しく離断・損傷して散乱し、現場に駆けつけた消防士は「遺体が男性か女性か、あるいは大人か子供かも判らない状況だった」と証言している。 シカゴのクック郡病院では事故の知らせを受けて、ただちに災害対応の緊急体制が敷かれた。しかし、1時間も経たないうちに生存者がいないとの連絡とともに体制が解除され、病院職員たちは衝撃を受けた。
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