凸解析とは? わかりやすく解説

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凸解析

読み方とつかいせき
【英】:convex analysis

概要

ベクトル空間における凸集合ベクトル空間上で定義され凸関数諸性質取り扱う分野. 最適性理論, 双対性理論, および最適化手法設計解析など, 数理計画様々な事柄に関する基礎理論として非常に重要な役割果たしている.

詳説

 凸解析 (convex analysis) は,ベクトル空間における凸集合あるいはベクトル空間上で定義され凸関数に関する諸性質取り扱うものであり,数理計画基礎理論として非常に重要な役割果たしている.

 次の性質をもつ空間 \mathbf{R}^n\, 部分集合 S \subseteq \mathbf{R}^n\, 凸集合 (convex set) と呼ぶ.


x, \, y \in S, \ \alpha \in (0,1) 
\ \Longrightarrow \ \alpha x + (1-\alpha) y \in S\,


特に,有限個の半空間の共通部分として表される凸集合凸多面体と呼ぶ.

 空間 \mathbf{R}^n\, 上で定義され拡張実数関数 f : \mathbf{R}^n \to [-\infty,+\infty]\, に対して,そのエピグラフ\mbox{epi}\, f := \{ (x,\mu) \in \mathbf{R}^{n+1} \, | \,f(x) \le \mu \}\, 定義し\mbox{epi}\, f\, 凸集合あるよう関数 f\, 凸関数 (convex function) と呼ぶ.ここで,関数 f\, 値域\pm \infty\, 含まれていることは重要である.考察対象とする関数このように拡張することにより,最適化問題関連する諸性質統一的に記述することが可能となる.例えば,実数凸関数 h : \mathbf{R}^n \to \mathbf{R}\, 凸集合 S \subseteq \mathbf{R}^n\, 上で最小化する制約つき最適化問題は,拡張実数関数 \hat h : \mathbf{R}^n \to (-\infty,+\infty]\, \hat h(x) = h(x) \ (x \in S\, のとき)\, , \ = + \infty \ (x \not\in S\, のとき)\, 定義することにより,見かけ上,凸関数 \hat h\, 制約なしで最小化する問題として表すことができる.また,f(x) = -\infty\, となる点 x\, 存在せず,さらに恒等的に f(x) \equiv +\infty\, ではないようなものを,特に真凸関数といい,集合 \mbox{dom}\, f := \{ x \, | \, f(x) < +\infty \}\, f\, 実効定義域あるいは単に定義域と呼ぶ.真凸関数理論的に実際的にも意味のある凸関数クラス考えることができる.なお,f(x) = -\infty\, となる x\, 存在しないような関数 f\, に対して


x, \, y \in \mbox{dom} \, f, \ \alpha \in (0,1)
\ \Longrightarrow \ f(\alpha x + (1-\alpha)y)
\le \alpha f(x) + (1-\alpha) f(y)\,


凸関数の定義とすることもできる.さらに,


x, \, y \in \mbox{dom} \, f, 
\ x \ne y, \ \alpha \in (0,1)
\ \Longrightarrow \ f(\alpha x + (1-\alpha)y)
< \alpha f(x) + (1-\alpha) f(y)\,


であるとき,f\, 狭義凸関数という.明らかに狭義凸関数凸関数である.文献 [1,2,3,4,5] に凸関数凸集合様々な性質に関する詳しい説明がある.

 次の性質をもつ集合 C \subseteq \mathbf{R}^n\, を錐と呼ぶ.


x \in C, \ \alpha \ge 0 \ \Longrightarrow \ \alpha x \in C\,


特に,凸集合あるような錐を凸錐 (convex cone) という.最適化理論においては凸錐はしばし方向ベクトル集合表し,特に最適性条件導出に際して重要である [4].凸錐 C \subseteq \mathbf{R}^n\, に対して集合 \{ y \in \mathbf{R}^n \, | \,x^{\top}y \le 0 \ \forall x \in C \}\, C\, 錐と呼びC^*\, と表す.与えられベクトル a^1, \dots, a^m \in \mathbf{R}^n\, に対して定義される凸錐 \textstyle C = \{ x \in \mathbf{R}^n \, | \, x={\sum}_{i=1}^m \gamma_i a^i,\  \gamma_i \ge 0, \ i=1,\dots,m \}\, 錐は C^* = \{ y \in \mathbf{R}^n \, | \, y^{\top}a^i \le 0, \, i=1,\dots,m \}\, 与えられ,さらに C = (C^*)^*\, 成り立つ.これは,b \in C\, ,すなわち \textstyle \sum_{i=1}^m \gamma_i a^i = b\, 満たす \gamma_i \ge 0, \, i=1,\dots,m,\, 存在することと,b \not\in C\, ,すなわち y^{\top} b > 0\, 満たすベクトル y \in C^*\, 存在することの,どちらか一方のみが成立することを意味している.これはファーカスの定理呼ばれている.このように2つ条件一方のみが必ず成り立つことを保証する定理は,一般に二者択一定理 (theorem of the alternative) と呼ばれ最適性条件導出有用である [2].

 真凸関数 f\, に対して,次式を満足するベクトル \xi \in \mathbf{R}^n\, f\, x\, における劣勾配 (subgradient) と呼ぶ.


f(y) \ge f(x) + \xi^{\top}(y-x) \quad\quad \forall \, y \in \mathbf{R}^n\, (1) \,


真凸関数その実定義域 \mbox{dom} \, f\, 任意の相対的内点において,少なくとも1つ劣勾配をもつ.特に,凸関数 f\, が点 x\, において微分可能ならば,f\, x\, における劣勾配唯一存在し通常の勾配 \nabla f(x)\, 等しい.しかし,f\, が点 x\, において微分可能でないときには劣勾配無数に存在する一般にf\, x\, における劣勾配全体集合\partial f(x)\, 表される劣勾配の定義 (1) より,0 \in \partial f(x)\, は点 x\, 凸関数最小点であるための必要十分条件であることは容易に確かめられる劣勾配概念は非凸関数に対して拡張され微分不可能最適化において基本的な役割果たしている [1,3,4,5].

 真凸関数 f\, に対して,次式で定義される真凸関数 f^*\, f\, 共役関数 (conjugate function) という.


f^*(\xi) := \sup_{x \in \mathbf{R}^n} \{ \, \xi^{\top} x - f(x) \, \}\, (2) \,


いま,\partial f\, \partial f^*\, 点-集合写像とみなせば,\partial f\, \partial f^*\, 互いに逆写像の関係にあり,さらに,\partial f^*(\xi)\, 任意の要素 x\, 共役関数 f^*\, の定義 (2) の右辺最大与える.すなわち,次の関係が成立する


\xi \in \partial f(x) \quad \Longleftrightarrow \quad
x \in \partial f^*(\xi)  \quad \Longleftrightarrow \quad 
f(x) + f^*(\xi) = \xi^{\top} x\,


共役関数概念最適化問題対す双対理論において特に重要である [3,4,5].



参考文献

[1] D.P.Bertsekas, Convex analysis and Optimization, Athena Scientific, 2003.

[2] O.L. Mangasarian, Nonlinear Programming, McGraw-Hill, 1969; (reprint, SIAM, 1994).

[3] R.T. Rockafellar, Convex Analysis, Princeton University Press, 1970.

[4] R.T. Rockafellar and R.J.B. Wets, Variational Analysis, Springer, 1998.

[5]福島雅夫,『非線形最適化の基礎』, 朝倉書店, 2001.

「OR事典」の他の用語
非線形計画:  共役勾配法  共役関数  内点法  凸解析  凸計画問題  凸錐  凸関数

凸解析

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/14 02:08 UTC 版)

凸解析(とつかいせき)は、凸関数および凸集合を研究する数学の一分野である。最適化理論の領域の中の凸最小化によく応用される。

離散凸解析

変数が連続の場合の通常の凸解析を、変数のとる値を離散値(たとえば整数)にした場合のものが「離散凸解析」である。

参考文献

  • J.-B. Hiriart-Urruty; C. Lemaréchal (2001). Fundamentals of convex analysis. Berlin: Springer-Verlag. ISBN 978-3-540-42205-1 
  • Rockafellar, R. Tyrrell (1997) [1970]. Convex Analysis. Princeton, NJ: Princeton University Press. ISBN 9780691015866 
  • Singer, Ivan (1997). Abstract convex analysis. Canadian Mathematical Society series of monographs and advanced texts. New York: John Wiley & Sons, Inc.. pp. xxii+491. ISBN 0-471-16015-6. MR 1461544 
  • Stoer, J.; Witzgall, C. (1970). Convexity and optimization in finite dimensions. 1. Berlin: Springer. ISBN 978-0387048352 
  • Zălinescu, C.. Convex analysis in general vector spaces. World Scientific Publishing  Co., Inc. pp. xx+367. ISBN 981-238-067-1. MR 1921556 

関連項目


凸解析

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 00:46 UTC 版)

ベクトル空間」の記事における「凸解析」の解説

詳細は「凸解析」を参照 順序体(特に実数体)上で、凸解析の概念考えることができる。最も基本的なものは、非負線型結合全体からなる錐、および和が 1 となる非負線型結合全体からなる凸集合である。凸集合アフィン空間公理錐体公理組み合わせたものとして見ることができ、これは凸集合標準空間である n-単体アフィン超平面象限との交わりであることを反映したものになっているこのような空間は特に線型計画問題において用いられる普遍代数学言葉言えばベクトル空間ベクトル有限和対応する係数有限全体の成す普遍ベクトル空間 K∞ 上の代数であるが、一方アフィン空間ここでいう(和が 1 の有限全体の成す)普遍アフィン超平面上の代数であり、また錐体普遍象限上の代数凸集合普遍単体上の代数である。これは、「座標対する(可能な制限和」を用いて公理幾何化したのである線型代数学における多く概念は凸解析における対応する概念があって、基本的なものとしては基底や(凸包のような形での)生成概念など、また重要なものとしては(双対多角形双対錐体双対問題のような双対性などが含まれる。しかし線型代数学において任意のベクトル空間アフィン空間標準空間同型となるのとは異なり任意の凸集合錐体単体象限同型となるわけではない。むしろ単体から多面体の上への写像一般化され重心座標系によって常に存在し、またその双対写像として多面体から(面の数と等し次元の)象限中への写像スラック変数によって存在するが、これらが同型となることは稀である(ほとんどの多面体単体でも象限でもない)。

※この「凸解析」の解説は、「ベクトル空間」の解説の一部です。
「凸解析」を含む「ベクトル空間」の記事については、「ベクトル空間」の概要を参照ください。

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