優越性と独占
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 02:32 UTC 版)
「優位性」および「独占」も参照 欧州連合の機能に関する条約第102条では市場において優越性を持つ巨大企業による不正とされる禁止行為について定めている。 (日本語仮訳)1または複数の事業が共同市場またはその本質的部分において優越的地位を濫用することは、加盟国間の貿易に適用する限りにおいて、共同市場と矛盾するものとして禁止する。 同条では不正と判断される行為の分類を例示している。 (日本語仮訳)そのような濫用は、とくに次の場合に推定する: (a) 直接または間接に不公平な売買価格そのほか不公平な取引条件を課す場合; (b) 消費者の不利に生産、市場または技術革新を制限する場合; (c) 他の取引当事者と同じ事業に異なった条件を適用し、それによって競争上不利益にする場合; (d) その性質または商慣習によると、契約の内容と関係のない付随的義務を相手方に受け入れさせるために契約を結ぶ場合。
※この「優越性と独占」の解説は、「EU法」の解説の一部です。
「優越性と独占」を含む「EU法」の記事については、「EU法」の概要を参照ください。
優越性と独占
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/20 06:44 UTC 版)
リスボン条約発効後は、欧州連合の機能に関する条約第102条は市場優越性を持つ事業体がその地位を濫用し、消費者に損害を与えることを防ぐことが目的となっている。規定は次の通り。 Any abuse by one or more undertakings of a dominant position within the common market or in a substantial part of it shall be prohibited as incompatible with the common market insofar as it may affect trade between Member States. 1または複数の事業が共同市場またはその本質的部分において優越的地位を濫用することは、加盟国間の貿易に適用する限りにおいて、共同市場と矛盾するものとして禁止する。 これはすなわち以下の行為を意味する。 directly or indirectly imposing unfair purchase or selling prices or other unfair trading conditions;(訳)直接または間接に不公平な売買価格そのほか不公平な取引条件を課す; limiting production, markets or technical development to the prejudice of consumers;(訳)消費者の不利に生産、市場または技術革新を制限する; applying dissimilar conditions to equivalent transactions with other trading parties, thereby placing them at a competitive disadvantage;(訳)他の取引当事者と同じ事業に異なった条件を適用し、それによって競争上不利益にする; making the conclusion of contracts subject to acceptance by the other parties of supplementary obligations which, by their nature or according to commercial usage, have no connection with the subject of such contracts.(訳)その性質または商慣習によると、契約の内容と関係のない付随的義務を相手方に受け入れさせるために契約を結ぶ 最初に、ある企業が市場において優越的地位を持つかどうか、あるいは競争相手、取引相手、最終的には消費者に対してそれぞれ不当な行為をしているかどうかを判定する必要がある。EU法の考え方では、市場占有率が非常に大きいということは、ある企業が支配的であると推測され、またその推論は普遍的ではなく、覆しうるものでもある。ある企業が支配的地位にあるとすれば、それは市場において39.7%超の占有率を持つからであり、そのためその企業は自らの行為により共通市場での競争を阻害させてはならないという特別な義務を負うことになる。談合行為と同様に、占有率は問題になっている企業や製品の市場におけるもので判断される。そのため独占が懸念される事例をまとめた一覧が閉鎖されることはめったにないものの、不正行為が疑われる分野はたいてい各国法により禁止されている。例示すると、支出額の上昇を認めないことで搬入港で製品を制限したり、技術革新を抑制することは不正とされる。またある商品に別の商品とあわせて販売することも不正とされ、これは消費者の選択肢を狭め競合相手の販売経路を奪うこととされる。この事例に挙げられるのはマイクロソフトと欧州委員会の間での紛争があり、Microsoft WindowsプラットフォームにWindows Media Playerをバンドルしていたことに対して4億9700万ユーロの制裁金の支払いを命じた。また事業を行うにあたって、競争を起こすには欠かすことのできない便宜を取り計らわないことも不正となりうる。これについては製薬会社コマーシャル・ソルベンツが争った事例がある。抗結核薬市場において競合相手を作ることになり、コマーシャル・ソルベンツはZoja社に対する原材料の供給継続を強制されることになった。Zoja社は抗結核薬市場で唯一の競争相手であり、そのため裁判所が供給継続を強制しなければ競争が排除されることになったという事例である。 価格設定に関する市場圧力の直接的な濫用の形態に価格搾取がある。ただ市場占有率の大きい企業がどのような点で搾取的であるかを証明することは難しく、また価格搾取に該当する事例は稀である。ある事例では、フランスの葬儀会社が搾取的価格を要求していたことが発覚したが、この件では他地域の葬儀会社の価格と比較しても適正なものであるとされた。さらに悪辣なものに略奪的価格形成というものがある。これは製品の価格を大幅に下げることで小規模な企業の対処を不可能にして事業の撤退を迫ることである。シカゴ学派は略奪的価格形成について、もしそのようなことが可能ならば金融機関はそのような事業体に融資を行うだろうと考えており、実際には不可能なものであると唱えている。ところがフランステレコムSAと欧州委員会が争った事例では、ブロードバンド接続事業者に対して、サービスにかかる経費を下回る価格を設定していたため1035万ユーロの支払いを命じた。このような価格設定には競争相手の排除以外に自社に利益はなく、好況の市場において最大の占有率を獲得するために資金が投じられるものであるとされた。価格設定に関する不正行為の類型には価格差別がある。この例として、自社を含む同じ市場において自社で、販売する砂糖を輸出する法人顧客に対して奨励金を支払うのに対して、アイルランドの顧客には支払わないことが挙げられる。 これまでに述べてきたように、市場画定は、第82条以下にある規定によって示される競争に関する事例の最も重要なものであることは間違いない。しかしながら、同時に最も複雑な分野であるということもできる。仮に市場というものが過大な範囲を示すと考えられれば、より多くの企業に不当競争の疑いが向けられ、また代替製品によりある企業の優越性が分かりにくくなる。同様に仮に市場というものが過小な範囲を示すと考えられれば、疑いを向けられた企業が支配的であるという仮定が成り立ってしまうことになる。実際には市場画定は法曹で決めるのではなく経済学者に任されることになる。
※この「優越性と独占」の解説は、「欧州連合競争法」の解説の一部です。
「優越性と独占」を含む「欧州連合競争法」の記事については、「欧州連合競争法」の概要を参照ください。
- 優越性と独占のページへのリンク