介護をめぐる諸問題
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「生活保護問題」も参照 ここでは介護殺人の背景となると思われるいくつかのキーワードをもとに、在宅介護にまつわる諸問題を示唆する。 老老介護 1995年9月15日の読売新聞で鵜飼哲夫が佐江衆ー著『黄落』の評として用いており、1996年2月22日第136回国会衆議院予算委員会公聴会にて公述人として樋口恵子東京家政大学教授が質問に立ちこの語を用いた。精神的ストレスが指摘されており、布団の上げ下ろし時の急激な血圧上昇も指摘され、共倒れの危険性が危ぶまれた。また、1999年、読売新聞に「家族介護にいつまで頼るのか」と題し「介護者の半数が六十歳以上という「老老介護」、平均介護期間が七・三年という「介護の長期化」、年間十万人が介護のために仕事を辞める「介護離職」と言った重い現実を忘れてはならない。」とする社説が掲載されている。 認認介護 介護殺人 加藤悦子(後に湯原)著『介護殺人 ―司法福祉の観点から』に始まり、2006年、民主党市村浩一郎衆議院議員がこの語を用い質問に立った。湯原は定義を「親族による,介護をめぐって発生した事件で,かつ死亡に至った」事例と規定しており、事前の被介護者への虐待の有無は要件としておらず、介護事業労働者による殺人事件も取り扱っていない。 介護離職 1. 在宅介護者の離職問題 中には介護に掛ける時間が多くなり、他の社員に申し訳なさを感じて会社を退職してしまう社員もいる。その一方で他の理由による退職の際に、介護を偽りの理由として主張する人もいる。大阪府枚方市の事件では介護費用や労働状態からくる貧困、介護する側の身体的な負荷などが問題となった。上述の1999年読売新聞社説にこの記述を見ることができ、2009年南野知惠子参議院文教科学委員長・法務大臣がこの語を用い公述人(山崎康彦・井出栄策)に意見を求めた。厚生労働省はホームページに「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」という案内を立てている。介護による離転職は、2007年10月から2012年9月までの5年間に約44万人を数えている。 2. 施設介護従事者の離職問題 2015年6月時点における介護の有効求人倍率は2倍、東京だと4倍となる。原因は過酷な労働環境と低賃金とされている。2007年度の埼玉県の調査では県内の介護労働者の離職率は23.1%であった。「仕事内容の割りに賃金が低い(53.1%)」「業務に対する社会的評価が低い(41.4%)」との不満が多い。 介護うつ 「介護うつ」の語は大島渚の介護を綴った小山明子著『パパはマイナス50点 介護うつを越えて 夫、大島渚を支えた10年』およびその後の「介護うつを乗り越えて~今を生きる」と題された講演活動が度々報道に取り上げられた他、小山明子、荻野アンナ、秋川リサらのオピニオン記事またはインタビュー記事が掲載された。また、2009年、清水由貴子が自殺、介護疲れが原因と見られ波紋を呼んだ。姉の清水良子が『介護うつ』を出版している。 2010年井上義久公明党幹事長が質疑、在宅介護者の4分の1が「介護うつ」になっていると指摘した。 ワンオペ介護 介護休業制度そのものに一度にまとめてしか取得できない点や、仕事をする上で代わりがいないこと、給与の減額などを理由に取得が難しいとされる。厚生労働省ホームページでは、介護休業制度の整備は5人以上の事業者で約6割、30人以上の事業者で約8割であるが、制度取得者は2-3%程度で推移している。
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