中野剛志の批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 20:00 UTC 版)
経産官僚の中野剛志は、ヒトラーになぞらえて、橋下を痛烈に批判している。 中野は、橋下の「今の日本の政治に一番必要なものは独裁」「本物の独裁者は、自ら「独裁」とは口にしない」などの発言を、「民主政治に対する初歩的な無知」であるとして、「有権者の大多数が「独裁」を望むならば、「独裁」を公約した政治家が選挙を通じて権力の座に着き、本物の独裁者になる」として、民主政治が独裁政治に転落する危険性を指摘した。 中野は、橋下ら維新関係者が、大阪都構想に反対する藤井聡を、記者会見やツイッターで批判したり、藤井を出演させたテレビ局に抗議文章を送付したりしたことを、「いやがらせ」や「迫害」であるとして、批判した。 「民主政治においては、空気を支配することで言論を弾圧することができる」として、橋下らの「嫌がらせ」が批判的な意見を萎縮させる効果があると指摘しつつ、マスメディアやジャーナリスト、知識人あるいは国政においても、さして問題視されずに放置されていたと指摘した。 さらに中野は、小林秀雄の随筆『ヒットラーと悪魔』を引用しながら、橋下とヒトラーの政治手法の類似性を指摘した。 中野は、小林秀雄がヒトラーを分析した一文を、橋下の言説と比較した。 彼は、死んでも嘘ばかりついてやると固く決意し、これを実行した男だ。つまり、通常の政治家には、思いも及ばぬ完全な意味で、プロパガンダを遂行した男だ — 小林秀雄「ヒットラーと悪魔」 政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ。(中略)自分の権力欲、名誉欲を達成する手段として、嫌々国民のため、お国のために奉仕しなければならないわけよ。(中略)別に政治家を志す動機づけが権力欲、名誉欲でもいいじゃないか!(中略)ウソをつけない奴は政治家と弁護士にはなれないよ!ウソつきは政治家と弁護士の始まりなのっ! — 橋下徹『まっとう勝負!』 中野は、橋下の政治観を「正しいか間違っているかではなく、勝ちか負けかでしか見ていない」として、ヒトラーの政治理解そのものであると断言した。 また、橋下をヒトラーになぞらえるのは、過剰反応とする意見に対して、「しかし、あのヒットラーも、最初は侮られていたのである。」として、当初橋下を大阪府知事に推薦した自民党と公明党の政治家が、「テレビタレントとみなして、高を括っていた」「自分たちが利用しようとした」橋下氏に裏切られ、追い詰められた。とみなした。 中野は、橋下が大衆世論の支持を得るために、わざと攻撃的な言動を繰り返したと考えた。橋下が、大阪市役所や自民党、マスコミあるいは藤井といった敵を繰り返し批判することで、大衆が「敵に対して、一歩も譲らぬ不屈の精神」を読み取り、橋下の支持に至ったとした。 中野は、橋下の政治手法は「独裁そのものなのである」とした上で、その手法は、ナチス・ドイツもやっていた古典的な意思決定方法に過ぎないと、批判した。 また、橋下の議論に対する認識も批判した。橋下の著書を根拠に、「議論を「勝ち負け」を争うだけの「ケンカ」としか考えてない」とした上で、小林秀雄によるヒトラーの著書『我が闘争』の分析を引用して、これが橋下の発言であっても、おかしくないと考えた。 論戦に勝つには、一方的な主張の正しさばかりを論じ通すことだ。これは鉄則である。押し捲られた連中は、必ず自分たちの論理は薄弱ではなかったか、と思いたがるものだ。討論に、唯一の理性などという無用なものを持ち出してみよう。討論には果てしがない事が直ぐにわかるだろう。だから、人々は、合議し、投票し、多数決という人間の意思を欠いた反故を得ているのだ — 小林秀雄「ヒットラーと悪魔」 私は、交渉の過程で”うそ”も含めた言い訳が必要になる場合もあると考えている。自身のミスから、窮地に陥ってしまった状況では特にそうだ。正直に自分の過ちを認めたところで、何のプラスにもならない。 — 橋下徹『図説 心理戦で絶対負けない交渉術』 運悪く相手方に気づかれてしまったら、仕方がない。こんなときに私がよく使うテクニックがある。相手方に無益で感情的な論争をわざとふっかけるのだ。 — 橋下徹『図説 心理戦で絶対負けない交渉術』 いよいよ攻め込まれて、自分の主張というようなときには法外な要求をして、場を混乱させる。 — 橋下徹『図説 心理戦で絶対負けない交渉術』 さんざん話し合いを荒らしまくっておいて、最後の決めゼリフに持っていく。「こんな無益な議論はもうやめましょうよ。こんなことやってても先に進みませんから」自分が悪いのに、こう言って終わらせてしまうのだ。 — 橋下徹『図説 心理戦で絶対負けない交渉術』 一方で橋下は、中野に対して「小林よしのりと中野剛志の共通点は、自分の論こそ絶対に正しく、その他の論は全て愚。自分と反対する人間は全てバカ。自分こそが今の日本を引っ張っているという勘違い。それと非常識。まあ僕の嫌いな自称インテリ層の典型だ。僕は学者が嫌いなんじゃない。学者さんの多くに知恵を頂いている。」と評している。
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