中部国際空港アクセス計画
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中部国際空港(セントレア)開港前は、武豊線は名鉄常滑線・西名古屋港線などとともに、セントレアに接続する連絡鉄道線の候補に挙がっていた。検討されていたルートはJR名古屋駅から東海道線・武豊線を経由し、乙川駅付近から分岐。同駅以西から新線によって知多半島を横断して空港島に至るルートだった。名古屋駅 - 空港島間のルート延長距離は約43 km(海上部を除く、うち新線部分は約11 km)で、当時単線非電化だった武豊線を複線化・電化などによって輸送力増強・高速化し、名古屋駅 - 空港間を約25 - 30分で結ぶ計画だった。 中部経済連合会(中経連)の交通委員会(委員長:当時JR東海社長の須田寬)は1993年3月26日に、21世紀の交通網のあるべき姿として「中部地方の交通機関相互の連携について」という提言を発表したが、その際に明らかにした新空港への鉄道・道路の交通アクセス整備構想によれば、武豊線ルートは常滑線ルートに次いで2番目に実現が容易とされた。 武豊線は東海道線名古屋駅に直通運転していることから、中央線・関西線ともスムーズに接続でき、名古屋駅に発着する在来線特急を空港まで直通運転することもできることが利点として挙げられた。また、三河方面(岡崎・豊橋方面など)からは大府駅での乗り換えなどにより、名古屋市内まで迂回することなく新空港にアクセスできるため、三河方面からのアクセス線としても活用可能とされた。このほか、名古屋方面 - 空港の連絡(第一段階)のみならず、リニア中央新幹線の開業によって東海道新幹線の線路容量に余裕で生まれた暁には、第二段階として、新線(新空港 - 乙川間)および既設線(乙川以北)を三線軌条化し、ミニ新幹線を導入することで、東海道新幹線名古屋駅 - 新空港間を直通列車により約20分で連絡することも可能と試算され、2005年日本国際博覧会(愛知万博)が実現した場合には新空港 - 会場間のアクセスルートとして、三重新幹線構想とともにミニ新幹線で乙川駅 - 東海道新幹線三河安城駅 - 愛知環状鉄道線を接続する鉄道新線を建設する構想も浮上していた。 その一方で、空港に最も近接する常滑線を活用するルート(新線部分が最短)に比べ、武豊線ルートは新線区間が約11 kmと長く、建設費の確保や、半田市・常滑市などの市街地での導入空間の確保などの用地取得が課題とされた。また、構想が浮上した1990年代当時は全線が単線非電化だったため、既設線の輸送力増強および高速化(電化・複線化・行き違い設備の増設)を含め、概算建設費(海上部を除く)は1,000 - 1,300億円と試算された。 愛知県は1995年2月15日、鉄道アクセスで検討された8ルート(上から順に実現容易とされた)の距離・所要時間・建設費を算定し、空港関連地域整備と交通アクセスの調査結果をまとめた。その際、「2005年の開港時点では名鉄常滑線を活用し、長期的にはJR名古屋駅や豊田市、岡崎市からの鉄道アクセス新設を目指す」構想を示した。 名鉄常滑線を改良し新空港に延伸する JR武豊線を乙川駅から分岐させ空港方面に延伸する 西名古屋港線を金城ふ頭経由で海底トンネルもしくは海上橋で延伸する 名古屋臨海鉄道東港線・南港線を延伸する HSSTなどの新線 愛知環状鉄道線の新豊田駅を起点に三河上郷駅付近で分岐し、JR三河安城駅を経由して武豊線に接続し、2.のルートと接続する 愛知環状鉄道線を岡崎駅より延伸し、西三河南部を経由して武豊線に接続し、2.のルートと接続する 愛知環状鉄道線新豊田駅を起点に、新上挙母駅付近で名鉄三河線に入り、知立駅・刈谷駅経由で武豊線に接続し、2.のルートと接続する 以上8ルートは「開港までに整備するもの」と「開港後、空港利用差の増加などに合わせて整備するもの」など段階的な整備が必要とされた。武豊線ルート・西名古屋港線ルートの2案はいずれもJR東海が運営主体となることが想定されていたが、JR東海は採算性から「(武豊線の延伸については)地元自治体(愛知県・半田市・常滑市など)が線路を建設してくれれば、その運用は担当するが、当社単独事業での乗り入れは難しい」と難色を示していた。 結局、2005年2月17日の開港までには常滑線の延伸のみが名鉄空港線として実現した一方、武豊線の空港延伸は実現せず、開港から10年以上が過ぎた2019年現在も具体的な動きはない。
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