ラヴクラフトとの関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/06 19:32 UTC 版)
「ファーンズワース・ライト」の記事における「ラヴクラフトとの関係」の解説
編集者は、影の存在だがライトの場合、「ウィアード・テイルズの名物編集長」あるいは、「ラヴクラフトの編集者」として広く知られる結果となった。 大きな負債を抱え、経営難にあったウィアード・テイルズの前任者ベアードが解雇され、代わりに編集長に就任したライトは、作家たち、特にラヴクラフトの作品の掲載を断るようになったといわれている。しかし実際には、ベアードも掲載拒否(ボツ)を出しており過敏に作家たちと関係が悪かった訳でもなかったといえる。 ラヴクラフトは、自身の作品より手紙の方が多く残っていて彼の作家活動を遡っていくとライトの名前が出てくる。たとえばラヴクラフトの代表作である「クトゥルフの呼び声」はライトに受理されなかったが、シカゴを訪れたドナルド・ワンドレイが再考を促し(一方ワンドレイ自身も「赤い脳髄」を没にされており、ラヴクラフトがライトに再考を求めている)、ラヴクラフトが他誌に移籍しかねないと脅すことによって1928年2月号における掲載にこぎ着けたという経緯がある。ライトは短い作品を好んだが、ラヴクラフト後期の傑作は長めの話が多いため没にされがちで、「インスマウスの影」も「狂気の山脈にて」も受理されていない。ラヴクラフト以外の作家ではロバート・E・ハワードが「氷神の娘」を、クラーク・アシュトン・スミスが「七つの呪い」(次から次へと呪いが続くだけの話だというのが、ライトに受理されなかった理由だった)を没にされている。オーガスト・ダーレスはいったん没にされた原稿を書き直さずに寝かしておき、しばらく経ってから何食わぬ顔で再提出することすらあったが、ライトは以前と同じものと気づかずに受理していたという。ライトは作家を勇気づけることもあれば意気を挫くこともあったが、いずれの場合も合理的な理由に欠けていた。それでも「ウィアード・テイルズが比較的ありがちな量産型パルプホラー雑誌を脱し、伝説となったのはライトの功績である」とマイク・アシュリー(Mike Ashley)は評している。 ライトに対し、ラヴクラフトは、1927年7月5日に有名な手紙を送っている。 「さて、わたしの小説のすべては、人間一般の習わし、主張、感情が広大な宇宙全体においては、何の意味も有効性ももたない根本的な前提に基づいています。わたしにとって人間の姿―――そして局所的な人間の感情や様態や規範―――が、他の世界や他の宇宙に本来備わっているものとして描かれている小説は、幼稚以外の何物でもありません。時間であれ、空間であれ、次元であれ、真の外来性の本質に達する為には、有機生命、善と悪、愛と憎、そして人類と呼ばれる取るに足らない儚い種族の限定的な属性が、すべて存在すると忘れ去らねばならぬのです。人間の性質を帯びるものは、人間が見るものや、人間である登場人物に限定されなければなりません。これらは、(安っぽいロマンチシズムでなくて)徹底したリアリズムでもって扱う必要がありますが、果てしない慄然たる未知の領域―――影の集う外界―――に乗り出すときには、忘れる事なくその戸口に置いて、人間性というもの―――そして地球中心の考え方―――をふり捨てなければならないのです。」 Now all my tales are based on the fundamental premise that common human laws and interests and emotions have no validity or significance in the vast cosmos-at-large. To me there is nothing but puerility in a tale in which the human form—and the local human passions and conditions and standards—are depicted as native to other worlds or other universes. To achieve the essence of real externality, whether of time or space or dimension, one must forget that such things as organic life, good and evil, love and hate, and all such local attributes of a negligible and temporary race called mankind, have any existence at all. Only the human scenes and characters must have human qualities. Thesemust be handled with unsparing realism, (not catch-penny romanticism) but when we cross the line to the boundless and hideous unknown—the shadow-haunted Outside—we must remember to leave our humanity and terrestrialism at the threshold. この手紙は、『クトゥルフの呼び声』の掲載までのやり取りで送られたとされ、ラヴクラフトの信条である宇宙的恐怖を表現した文章として取り上げられることが多い。 ライトは、ラヴクラフトの死後に1937年10月号に訃報と共に『忌まれた家』を収録した。これも1924年10月に執筆されたもので長い間、掲載される機会がない作品だった。ライトは、ラヴクラフトが残したストックを幾らかウィアード・テイルズで発表したが、さらにその残りは、アーカムハウスから出版された。
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