ペンローズ=ハメロフ アプローチ
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「量子脳理論」の記事における「ペンローズ=ハメロフ アプローチ」の解説
理論物理学者のロジャー・ペンローズと麻酔科医のスチュワート・ハメロフによって提唱されているアプローチ。二人によって提唱されている意識に関する理論は Orchestrated Objective Reduction Theory(統合された客観収縮理論)、または略して Orch-OR Theory(オーチ・オア・セオリー)と呼ばれる。 意識は何らかの量子過程から生じてくると推測している。ペンローズらの「Orch OR 理論」によれば、意識はニューロンを単位として生じてくるのではなく、微小管と呼ばれる量子過程が起こりやすい構造から生じる。この理論に対しては、現在では懐疑的に考えられているが生物学上の様々な現象が量子論を応用することで説明可能な点から少しずつ立証されていて20年前から唱えられてきたこの説を根本的に否定できた人はいないとハメロフは主張している。。 臨死体験の関連性について以下のように推測している。「脳で生まれる意識は宇宙世界で生まれる素粒子より小さい物質であり、重力・空間・時間にとわれない性質を持つため、通常は脳に納まっている」が「体験者の心臓が止まると、意識は脳から出て拡散する。そこで体験者が蘇生した場合は意識は脳に戻り、体験者が蘇生しなければ意識情報は宇宙に在り続ける」あるいは「別の生命体と結び付いて生まれ変わるのかもしれない。」と述べている。 理論の簡潔な概説 "What is Consciousness?" at quantumconsciousness.org ハメロフのサイトにある理論の解説ページ。図が豊富に用いられており話の概要をつかむのに便利。 Stuart Hameroff, Roger Penrose. "Conscious Events as Orchestrated Space-Time Selections" Journal of Consciousness Studies, Volume 3, Number 1, 1996 , pp. 36-53(18) 1996年にJCSに投稿されたハメロフとペンローズの共著論文。 書籍 理論の背景などを知るのに有用 『ペンローズの<量子脳>理論―心と意識の科学的基礎をもとめて』<ちくま学芸文庫> 筑摩書房 2006年 ロジャー・ペンローズ著,竹内薫,茂木健一郎訳・解説:徳間書店1997.5 ISBN 978-4480090065 竹内薫と茂木健一郎によるペンローズ・ハメロフ理論の解説書。139ページから194ページに上のJCSの論文の邦訳が収められている(茂木健一郎訳「意識はマイクロチューブルにおける波動関数の収縮として起こる」)。 これらの理論は科学的な枠組みで述べられているが、科学者の個人的な信条と切り離すことは困難である。提唱者の意見は、意識の本質に関する直感や主観的な考えに基づいていることが多い。例えば、ペンローズは次のように書いている。 私の見解では、意識的な活動はシミュレートすることさえもできないだろう。意識的な思考で起こっていることは、計算機ではまったく真似できないものなのである(…)もし何かが意識を持っているかのように振る舞ったからといって、それが意識を持つ言えるだろうか?人々はそれについて、終わりのない議論を続けている。ある人々はこのように言うだろう、「さあ、君は運用的視点を持たなければならない。意識が何なのかなんて知りやしないさ。ある人物に意識があるのかないのか、どうやって判断するんだ?彼らの行動で判断するしかない。計算機やロボットにも同じことが当てはまるだろ」と。他の人々はこう言うだろう、「いいや、それが何かを感じているかのように振舞うことをもって、それが何かを感じているとは断言できない、というだけに過ぎない」と。私の考えは、そのどちらとも違う。ロボットは、本当に意識がない限り、あたかも意識があるかのように説得力のある振る舞いをすることすらないだろう---そのロボットがすべて計算機によって制御されている限りはありえない。 ペンローズはこう続ける。 脳がやっていることの多くは、計算機でできることだ。私は、脳が行う動作すべてが計算機で行うものとは完全に異なると言っているのではない。私が主張しているのは、意識が行っていることは何かが違うということだ。私は意識が物理学を超えている、とも言っていない---我々が今知っている物理学を超えているとは言っているが(…)私が言いたいのは、物理学にはまだ我々が理解していない何かがあるはずで、それは非常に重要で、非計算機的な性質のものだということである。それは私たちの脳に限ったことではなく、外に広がる、物理的な世界にも存在するものなのだ。しかし、それは通常、まったく重要でない役割を担っている。それは、量子物理学レベルと古典物理学レベルの振舞いの間の橋渡しをしているはずで、そこで、量子測定が登場しなければならないのだ。 ローレンス・M・クラウスは、ペンローズの考えをあからさまに批判している。 ロジャー・ペンローズは、量子力学が根本的な規模で、意識に関係するかもしれないと示唆することで、多くのニューエイジかぶれの変人たちを活気付かせている。「量子脳理論」という言葉を聞いたら、疑った方がいい(…)多くの人々がペンローズの説の合理性を疑っている。なぜなら脳は独立した量子力学の系ではないからだ。
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