パラドックスの概要
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「グルーのパラドックス」の記事における「パラドックスの概要」の解説
グルー(grue)とは、緑を意味する英語グリーン(green)と、青を意味する英語ブルー(blue)から作った言葉で、たとえば、「2050年1月1日までに初めて観察された緑(green)のものと2050年1月1日以降に初めて観察された青(blue)のものを指す言葉」と定義される。グルーは、緑と青の切れ目にどの時点をとるかで無数の定義がありうるが、この言葉は「2050年1月1日までは緑、2050年1月1日以降は青を意味する言葉」と定義されたわけではないので、時間経過によって変化するような定義を与えたわけではない。このとき「エメラルドは緑である」という命題について考えると、2000年の段階でわれわれが持つ証拠はすべて、同時に「エメラルドはグルーである」という命題の証拠でもあることから、この2つの命題は同じくらい強く検証されている。しかしながら、2050年以降に初めて観察されるエメラルドがどういう色を持つかについてはこの2つの命題はまったく異なる予測をすることになる。 このパラドックスはヒュームの懐疑主義をうけて、その深刻さを示すものである。ヒューム的な懐疑を避けるために斉一性原理(すでに観察したものはまだ観察していないものと似ている)を認めたとしても、どういう斉一性を想定するか(エメラルドは緑だという斉一性か、エメラルドはグルーだという斉一性か)によって、事実上あらゆる予測が斉一性原理と両立してしまう、ということを示している。 われわれは、無意識に投射可能(projectible)な述語(緑はこちらに分類される)とそうでない述語(グルーはこちらに分類される)を分け、投射可能な述語のみを帰納に使う。しかし、投射可能性を正確に定義することも投射可能な述語だけが帰納に使えると考える根拠を示すことも非常に困難である。
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パラドックスの概要
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「暗い太陽のパラドックス」の記事における「パラドックスの概要」の解説
地球の歴史の初期段階においては太陽の光度は現在の値の 70% 程度しかなく、現在に至るまで徐々に増加し続けている。そのため、当時は地球上に液体の海を維持するためには太陽の光が弱過ぎたと考えられる。このことと地球上で発見されている地質学的および古生物学的な証拠は矛盾するということが、1972年に天文学者のカール・セーガンと George Mullen によって指摘された。 標準太陽モデル(英語版)によると、太陽のような恒星は主系列段階の寿命の間に、核融合によって引き起こされるコアの収縮に伴って徐々に光度が上昇する。つまり、若い頃の太陽は現在よりも光度が低く暗かったと予想される。40億年前の太陽のモデルから予想される光度と、現在の地球の温室効果ガスの濃度を考慮すると、当時の地球の表面の水は全て凍りついてしまっていたことが予想される。しかし地質学的な記録からは、過去の地球表層は 24 億年前から 21 億年前までのヒューロニアン氷期の時期を除くと、継続的に比較的温暖であったことが分かっている。また、液体の水の存在と関連する堆積物は、古いものでは38億年前のものが発見されている。さらに初期の生命誕生の兆候は最も古いものは35億年前までさかのぼり、また炭素同位体は現在のものと非常によく一致している。 これらの、若い太陽は暗く、地球表面に液体の水を維持できるほどの光度を持っていなかったという理論的な推測と、地球表面には形成後の早い時期から継続的に液体の水が存在し続けていたことを示す地質学的・古生物学的な証拠は矛盾している。これが暗い太陽のパラドックスであり、解決のための有力な仮説は提案されているものの、未解決の問題となっている。
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