ノートパソコン向けSED製バッテリパック回収問題
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「リチウムイオン二次電池の異常発熱問題」の記事における「ノートパソコン向けSED製バッテリパック回収問題」の解説
SED製バッテリの発火事故の原因は、SED側の発表では、缶のロール成型工程で缶と治具の摩擦により発生した、ニッケルの微細な金属粉がセル内部に飛散したためとされる。通常、缶の底部に金属粉が残留した場合、その場所が底面半径の中ほど(正極内周部)であれば、電池の性能が出ないだけの、単なる不良品となるが、今回はさらに、電解液を注入した際、その金属粉が流動して絶縁部(外周部)まで到達し、ニッケル粉が絶縁層を透過し、負極側で再結晶したため短絡が発生したもの、とされている。 問題となったデルとアップルのノートPCでは、日本のノートPCでは採用していない急速充電システムを採用し、短時間充電が出来るようになっている。SEDは微小金属粉の混入と急速充電システムとの組み合わせによりまれに発熱・発火が発生する場合があると主張し、上記二社以外の電池については、きちんとした充放電管理が行われていれば問題はなく、回収の必要はないと過った説明を行った。その後の2006年8月23日、ソニー製ノートPCVAIOが炎上する事故が発生した。この発火原因は不明だが、矢先の事故だけに、SED製リチウムイオン二次電池に対する消費者の不安、不信を増大することとなった。その後、9月29日付け発表で、SEDは消費者の不安払拭のため、該当電池の全数回収を決め、各PCメーカと回収方法の調整に入った。また、一部PCメーカー東芝、富士通、日立では既に自主回収を始めている。更に10月中旬、シャープやソニー自身での回収が発表された。 しかしSEDは、デルやアップルの特殊な充電回路と回収対象となった電池の組み合わせにより、まれに問題が発生するという主張を再度行い、従来からの問題発生に関する見解を変更してはいない。デルやアップルはSED側の主張を真っ向から否定しており、原因はリチウムイオン二次電池側にあるとしているが、2007年2月には業界1位の三洋電機がSED側と同じ主張を行い、リチウムイオン二次電池の回収を行っている。短時間充電を行うために採用されたパルス充電回路が発熱発火の原因となった可能性があることが指摘されている。また本記事の中では、電池メーカー技術者とリチウムイオン二次電池の特性をよく理解しないこれらのコンピュータメーカの技術者の間のコミュニケーション不足が今回の事故につながった可能性が大きいことが指摘されている。 レノボが「ノートブック PC のバッテリー・パックの安全性に関して」という発表を行った後の9月16日、IBM/レノボ製ThinkPadがロサンゼルス国際空港で発火事故を起こしたことで、上記の主張の他の潜在性も指摘されている。発火事故を起こしたThinkPadの原因調査が長引いたことで、他社ユーザーの間にも不安が拡大した。さらに東芝など数社が、自社製バッテリにおいても同様の発火事例があったことを発表し、SED製バッテリーと共に大規模なリコールを行っている。レノボとSEDは現在調査中である事を9月22日表明し、9月29日に自主回収を発表した。 10月24日、SEDは方針を改め、SED製リチウムイオン二次電池セルを使う、全メーカ・ベンダのバッテリの自主回収を正式に発表した。 交換対象となっているのは、2003年8月から2006年2月までに製造された、2.4Ahと2.6Ahの2種のSED製リチウムイオン二次電池セルを用いたノートPC用電池パックとアナウンスされている。デル、アップル、レノボを含めた回収と交換の対象個数は、当初約960万個、費用は、約510億円にのぼる見込みで、2005年に行われたSONY製CCD不具合問題におけるリコールに並ぶ、大規模なものとなった。ただし、実際の回収・交換の対象数は590万弱に留まっている。ちなみに、ソニーの2007年3月期決算にて、512億円の電池回収費用を発表した。 なお米CPSC(消費者製品安全委員会)によると、2001年以降に発生した38件のリチウムイオンバッテリの異常加熱/発火事件のうち、ソニーまたはSED製バッテリが関連した事例は9件、うち3件は実際にSED製バッテリが原因と特定されている。2007年になっても別のSED製バッテリを搭載した東芝製ノートパソコンでの発火事故が明らかになり、回収が発表されている。
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