ドイツほか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 06:26 UTC 版)
ドイツでは、行政でも民間でも専門の職とされ、また日本の司法での修習生のように、レフェレンダリアート(Referendariat)と呼ばれる都市計画専門家を養成する制度資格までが確立されている。日本で都市計画手続きで決定される道路は、幹線道路に限られているが、ドイツなどでは都市計画Bプラン(Bebauungsplan)では、細い街路まで設計される。このためドイツなどでは、行政による地域プランナーの力が非常に大きく、建築家は行政に呼応して計画を進めていることが知られ、各州の規定には充分経験のあるコンサルタントに委嘱するかまで言及して運用している。ドイツで都市計画業務を行う場合、シュタットプラーナー(Stadtplaner)という肩書きがあるが、これは法的な資格ではなく、16の州ごとに設けられた建設協会が定めた登録者の規定名称で、登録規定にしたがって登録し、従事することになる。各州ではまた建築家会議所/アルヒテクテンカンマー(Architektenkammer)なる建築家の協会が連邦建築家法に基づき設置されていて、都市計画家なども建築やインテリア、ラントシャフト(ランドスケープ)などと同様に一部の州を除き、その協会で名簿管理が行われている。もちろん登録者の条件規定や登録手法など、各州異なっている。なお制度ができたころの名残から、登録者も専門の事務所よりは、建築設計事務所などの登録が多いとされ、実際にもさまざまな分野の専門職と協働で業務が実施されるためか登録者でなくても委託できる都市計画業務も数多くある。 逆に役所等の職員として都市計画業務に従事する場合は、大学で都市計画に関する課程の修了者か、実務技術に関する学校で都市計画系分野での課程教育を受けていなくてはならなく、採用の際に条件とされている州もある。また都市計画局などの局長は、一般公選制を採用している州も多い。 イタリアやスペイン、フランスの場合は、各市町村レベルで都市計画家や建築家をコンサルタントとして嘱託し、彼らが一貫して一つ一つの現場を美しさやふさわしさなどを判断し事業決定する権限も持ち合わせている。これらの国の各市町村には建築家と都市計画家を抱えており、彼らは市町村の建築家になった以上は民間から仕事を受託できない仕組みになっている。 フランスでは建築家とペイザジスト(ランドスケープ・アーキテクト)は資格が必要となる。都市計画家は名乗るのが自由な肩書きとしてのみ存在する。周辺諸国でもこれまでは都市の都市計画マスタープランをつくる職が都市計画家とされ、建築家はその街区のなかで与えられた規制に従って建築を作るというまったく別の職能として機能してきたが、現在フランスほかヨーロッパでは、マスターアーキテクト方式が浸透し、都市計画家の仕事であったプランづくりはマスターアーキテクトが行っているため、自身をユルバニステ・アーキテクトと称している場合が増加した。なお同時に、ペイザシストもペイザシストユルバニステ、ペイザシストアーキテクトといった得意フィールドで呼称が異なって使用するケースが目立つ。大規模開発などの場合、建築家やペイザジスト、マスターアーキテクトに加えて、地区の方向性を示し街区ごとのプランを調整する調整都市計画家を存在させる。ジャン・ピエールはセガン島開発の、APUR出身のフランソワ・グレテールやクリスチャン・ドヴィレ、パトリック・ジャヴァンヌなどがブローニュ・ビヤンクールの調整都市計画家として、マスタープランを作成し、調整にあたった。オランダの都市計画業などでも、住環境を総合的に捉えているためであるがドイツのBプランのように通りや広場、建物の高さなど、一般的な基準に関わらずタイポロジーや素材感まで決めている。ただし中には建設用地のプランが政治的アピールが主目的の場合も頻繁にある。また土地利用の計画と建築設計の間に詳細な都市計画を定める制度となっているが、一般に計画時から建築設計事務所が担当し、自治体の都市計画セクションは土地利用の方針だけをつくり、設計事務所に具体的ボリュームの検討や公共空間のデザインを任せて、その後別の事務所が建物を設計する。このため、仕事の機会で都市計画業を通して建築従事者から都市計画家が形成される状況となっている。 独自の職能・資格制度は持っていないが、建築家も含め専門家が都市計画に多く従事するフランスは都市計画職能団体自体が多く、ヨーロッパ全体で職能認定を行おうとする動きの中CEU都市計画の認定制度の窓口を定めるべく、1993年に都市計画専門家協会APU(Association Profession Urbaniste)を暫定的に設立した。さらに1996年に都市計画職能組織としてフランス都市計画家評議会CFDU(Conseil Francais des Urbanistes)が設立され、都市計画家団体とフランス自治長会とで1998年にフランス建設省と協定した都市計画資格事務組織OPQUを開設、制度を整備している。 スウェーデンの都市計画家は主に都市計画を担当する者を指し、通常専門の訓練を受けた建築家や文化地理学者または土木技師がなっているが、同国の都市計画家はシティアーキテクトになることもできる。スウェーデンの有名なタウンプランナーは、スヴェン・マルケリウス、Aleksander Wolodarski、Sigfrid Ewald、Clas Larsson Flemingなどがいる。なお、同国で都市ビルダー(Epitome City builder)は大規模で影響力のある都市計画プロジェクトを担当してきた著名な政治家や都市計画家にしばしばもたらされる。都市ビルダーの例はナポレオン3世の委託により1853年から1870年にパリで多くの再構築をなしとげたジョルジュ・オスマンや、スウェーデンではアルバート・リンドハーゲン(Lindhagen計画、1866)とイングヴェ・ラーション ノッルマルムの再開発、1945)などがいる。
※この「ドイツほか」の解説は、「都市計画家」の解説の一部です。
「ドイツほか」を含む「都市計画家」の記事については、「都市計画家」の概要を参照ください。
- ドイツほかのページへのリンク