テレビ朝日系列で異例の全国中継へ
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「10.19」の記事における「テレビ朝日系列で異例の全国中継へ」の解説
1988年のパ・リーグは、降雨による試合中止が例年より多く、ロッテ対近鉄戦の消化がとりわけ遅れていた。9月26日から29日までの間にも川崎球場で4連戦が予定されていたものの、3試合が降雨で中止。パ・リーグの事務局では遅くとも10月19日の優勝決定を想定していたため、降雨中止分のロッテ対近鉄戦を、18日に1試合、19日にダブルヘッダーで2試合消化する方向で公式戦の日程を組み直した。ABCで当時スポーツ局次長とスポーツ部長を兼務していた高田五三郎は、9月末にロッテ対近鉄戦が3試合中止になったことを受けて、「このカードがおそらくパ・リーグの(レギュラーシーズンの)最後に回って、優勝を決める大一番になる」と予想。ロッテ球団が川崎球場における主催試合のテレビ中継の許認可権を有していたことを背景に、かねてから懇意にしていた当時の近鉄球団営業部長・吉川孝を通じて、未消化試合のテレビ中継をロッテ球団に打診した。この打診に対して、ロッテ球団は「在京のテレビ局から中継の申し込みがなければ、(ABC単独での)中継は可能」と回答。結局、他局が中継を申し込まなかったため、ABCスタッフの乗り込みによる19日開催分のテレビ中継が実現した。 第1試合については、福岡県の九州朝日放送(KBC)と、宮城県の東日本放送(KHB)でも、朝日放送制作の中継を第1試合から同時ネットで放送した。 ABCで第2試合の時間帯に編成されていたレギュラー番組のうち、『ハーイあっこです』(自社制作のネットワークセールス枠=18:50 - 19:20で放送されていたアニメ)については、同局のみ放送枠を臨時に移動。テレビ朝日と大半の系列局に対しては、上記の時間帯に裏送り(ABCからの先行ネット)方式で放送した。当時20:00 - 20:54に放送されていた『ビートたけしのスポーツ大将』(テレビ朝日制作の全国ネット番組)については、ABCのみ後日の振り替え放送で対応した。 テレビ朝日では、自社で保有する系列局向けの中継回線を貸与するなど、ABCによるテレビ中継の制作に協力。当初は自社の放送対象地域である関東地方向けに第2試合を中継することを予定しておらず、前述の『ハーイあっこです』もABCからの裏送り方式で放送したが、『パオパオチャンネル』(関東ローカルの生放送番組)と『ニュースシャトル』(ANNの全国向けニュース番組)でABCの中継映像を使用(『ニュースシャトル』の時間帯はABCでも野球中継を中断して同時ネット)。『パオパオチャンネル』では大熊英司(当時はテレビ朝日のスポーツアナウンサー)による電話リポート、『ニュースシャトル』では第2試合実況の安部が中継で試合経過を伝えていた。 しかし、このような対応を繰り返すうちに、試合の経過を知った視聴者から中継の延長を求める電話が数百件にもわたりテレビ朝日に殺到。さらに、「局内のどこへいっても、誰もがABCからの裏送りで局内向けに流れているテレビ中継を見ている」という有様でもあったため、編成局では20時以降の第2試合中継の放送をめぐって協議に入った。協議では、『ビートたけしのスポーツ大将』と『さすらい刑事旅情編』(当時21:00 - 21:54に放送されていた全国ネットの連続ドラマ)の全面差し替えも検討されたという。結局、21:00から10分間だけ中継を放送したうえで、『さすらい刑事』以降の番組の放送開始時間を10分ずつ遅らせる方針に落ち着いた。本来は22:00から放送する『ニュースステーション』のスタッフは後述する事情から「10分遅れで番組スタート」という方針に異議を唱えたものの、テレビ朝日の編成部では、スポンサーや系列局との折衝を開始。いずれも了承を得られたため、第2試合途中の21:00(7回裏・ロッテの攻撃中)から全国放送に踏み切った(テレビ朝日はABCに近鉄寄りの実況から中立な実況をするように指示を出しており、安部も「ロッテもプロです」、「ロッテもザ・プロフェッショナルとしての意地とガッツをぶつけての良い戦い」などとロッテ側を配慮したり、前述にある水上のファインプレーを賛辞する実況をしていた)。 実際には、10分で切り上げる予定だった中継の時間延長を繰り返したあげく、21:30を迎える直前で『さすらい刑事』の休止と22:00までの中継延長を決定。結果として、21時台はCMなしの中継が続いたため、事実上「サスプロ」(スポンサーの付かない自主編成番組)として放送された。以上の対応を直々に指示した斎田祐造(当時のテレビ朝日編成部長)は、中継を見ながら、「(CMを出稿しているスポンサーからの収入で成り立つ民間放送としての)身を切るようなエライ(大変な)ことをしている」という思いに何度も苛まれたという。 上記の措置によって、『ニュースステーション』は22:00(9回表・近鉄の攻撃中)から放送を開始したものの、メインキャスターの久米宏はオープニングで事情を説明。「今日はお伝えしなければならないニュースが山ほどあるのですが、このまま野球の中継をやめるわけにもいきません」「どんな番組になるか今夜は分からないんですが、伝えるニュースもいっぱいあるし助けて下さい」という表現で、視聴者に理解を求めた。結局、当初予定していた企画をすべて休止したうえで、第2試合の中継を事実上優先。攻守交代の合間などを縫って、主なニュースを伝えた。22:41に羽田の併殺打によって西武のパ・リーグ優勝が決定すると、第2試合の中継と並行しながら、西武ライオンズ球場のライブビジョンでテレビ中継の映像を見ていたファンの様子を取材していた石橋幸治(当時はテレビ朝日のスポーツアナウンサー)が生中継で伝えていた。
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