スイッチピッチャーとは? わかりやすく解説

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スイッチピッチャー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/11 03:36 UTC 版)

スイッチピッチャー (switch thrower, ambidextrous pitcher) は、野球において、左右両方の腕でボールを投げることができるピッチャーのこと。

投打の利き腕には、左右投(げ)もしくは両打投(げ)と表示される。

例:左右投(げ)右打(ち)=両投(げ)右打(ち)

  左右投(げ)左打(ち)=両投(げ)左打(ち)

  左右投(げ)左右打(ち)=両投(げ)両打(ち)

概説

メジャーリーグ史上では19世紀に4人(トニー・マレーンラリー・コーコラン、エルトン・チェンバレン、ジョージ・ウィーラー)、1901年以降では2人(グレッグ・ハリスパット・ベンディット)しか公式戦での登板が記録されていない、非常に稀な選手である。

19世紀のメジャーリーグでスイッチピッチャーが何人か登場した背景には、当時試合でグラブをつけずに投球していた投手が相当数いたことがある。

日本プロ野球(NPB)では、公式戦で左右投げが実行されたことはない。ただし、オールスターゲームでは、2025年第1戦(7月23日京セラドーム大阪)で4回表にリバン・モイネロソフトバンク)が2死としたところでグラブを右利き用にスイッチ、打者サンドロ・ファビアン広島)に対し右投げを披露、サードフライに打ち取った[1][2]

両投げ投手として登録されたのは近田豊年南海・ダイエー阪神)のみであるが、近田の右投げは実際の試合で通用する水準ではなく、公式戦では左でしか投げなかった。

近田以外にもダルビッシュ有[注 1]野崎進など、左右両方で投球できる選手は過去に数名が存在したが、いずれも登録上は両投げとなっておらず、「反対側の腕」で投球したという公式記録もない。

日本では2010年に改正されたルールにより、スイッチピッチャーは、投げない方の手にグラブをはめることで、左右どちらで投げるかを明確にすることが義務付けられた。

また、原則として一人の打者との対戦中は投げる手を変えてはならないこと、負傷により同一打者の打撃中に投球する手を変えることは認められているが、その試合中は再び投球する手を変えることはできないことが規定された[5]

アマチュア野球では、両投げ投手が報道され話題になることがある。

使用するグラブは左右両方の手にはめられるような特殊な構造(親指を入れる部分が両側にある6本指の形状)のものになる。

漫画の世界では左右投げ投手が稀に登場する。漫画家の水島新司は「左右投げは一番の夢」と発言していた。

主な選手

日本プロ野球

  • 近田豊年:日本プロ野球で初めて登録されたスイッチピッチャー。ただし一軍では1試合に登板したのみで、この登板では左投げでのみプレーしており、公式戦で両手投げを披露することはなかった。
  • 小久保浩樹泉尾高西武ライオンズ。高校時代は投手として左右両方で投げていたが、プロには外野手として入団。そのため「両投げ投手」としてはアマチュア時代の実績のみ。また一軍出場はなく、二軍でも公式戦出場は僅かであった。
  • リバン・モイネロ2025年のオールスターゲーム第1戦にて、4回表2死から右投げに変更、打者1人を打ち取った[1][2]

アメリカ合衆国(メジャーリーグ/マイナーリーグ)

日本のアマチュア野球・独立リーグ

他、海外選手

架空の野球選手

この他、厳密な意味でのスイッチピッチャーではないが『巨人の星』の主人公・星飛雄馬は左の肩、『MAJOR』の主人公・茂野吾郎は右の肩を故障をして一旦、選手生命を絶たれた後に星は右投手としてプロに現役復帰、茂野は中学野球部で左投手として復帰している。

関連エピソード

  • 1995年9月28日、対シンシナティ・レッズ戦でモントリオール・エクスポズ所属のグレッグ・ハリスが、近代メジャーリーグ公式記録上初めてマウンド上で投球に使う腕を変えた。3対9のビハインドで迎えた9回に右ピッチャーとして登板。最初の右打者のレジー・サンダースショートゴロに打ち取った。そして投球を左腕に変えて続く左打者、ハル・モリスとエディ・トーベンシーと対面。ハル・モリスに対してはフォアボール、エド・トーベンシーをピッチャーゴロに打ち取り、最後は再び右腕に戻してブレット・ブーンをピッチャーゴロに打ち取り、ゲームを締めた。この時のハリスは左右どちらにもはめることができる「6本指のグラブ」をはめて登板し、このグラブは試合後にアメリカ野球殿堂に贈られた。
  • シカゴ・ホワイトソックスボルチモア・オリオールズで監督を務めたポール・リチャーズも高校時代はスイッチピッチャーとして登板した経験があり、スイッチヒッターと対戦した際には、互いに打席と投げる腕を決められずに揉めたと言う。
  • 2008年6月20日、マイナーリーグのスタテンアイランド・ヤンキースブルックリン・サイクロンズの試合で、スイッチピッチャーのパット・ベンディットとスイッチヒッターのラルフ・エンリケが対戦し、互いに打席と投球する腕が決められずに揉めるという事件が起きた[15]。ルールに明確に規定されていない事項であったため、球審がエンリケに先に打席を選ぶよう指示した[16]。ベンディットも右投げを選び、右打席対右投げの対決となった。結果は三振。この一件以降は「投手は投球する手を明らかにし、同一打者には投球する手を変えることができない」[5] ことが明文化された。このために事実上は投手が先に投球する手を選ぶこととなる。MLBにおける最初の適用例は、のちにMLBに昇格したベンディット本人のデビュー戦であった(打者はボストン・レッドソックスブレイク・スワイハート)。
  • 1964年読売ジャイアンツに入団した吉成昭三は右投手として入団テストに合格しての入団だったが、元々は左利きで、中学時代に両投げで試合に登板していた。練習初参加時にコーチに左投げを打診し、最初の春季キャンプでは両方の手で投球練習をしていたが、中尾碩志コーチは「どちらもずば抜けたものはない。左右両刀使いでは、どちらも殺してしまう」と判断し、キャンプ終盤には右投げに専念させられた。週刊ベースボールは、良成はむしろ左に徹したかったようだと記している[17]
  • 日本のBCリーグ滋賀で登録された赤塚瑞樹は、2020年9月12日の対富山GRNサンダーバーズ9回戦において、ダブルヘッダー変則ルールのため5イニングであったが完投勝利をあげ[18]、日本プロ野球界における初の両投げ投手による勝利を記録した。
  • 投手登録以外での両投げ選手は、日本プロ野球では外野手小久保浩樹西武)が、両投げとして選手登録された例がある。小久保は高校時代は投手も兼任しており、高校時代の練習試合で両投げを披露したことがある。その他に、独立リーグのBCリーグで、同じく外野手の宮之原健福島武蔵)が両投げとして選手登録されていた。アマチュア野球では、同じく外野手の水本弦が両投げとして選手登録されていた例がある。

脚注

注釈

  1. ^ 右投げではあるが、中学生時代から体の左右の筋肉の均等化を目的として左投げでの投球練習をトレーニングメニューに取り入れている[3][4]

出典

  1. ^ a b “【オールスター】モイネロが突然の右投げにファン驚がく「右投げで124キロはすごい」”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2025年7月23日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/202507230001565.html 2025年7月23日閲覧。 
  2. ^ a b “【球宴】ソフトバンク・モイネロが衝撃の右投げ披露 ファビアンを三飛 両軍ベンチに笑顔広がる”. スポーツニッポン (スポーツニッポン新聞社). (2025年7月23日). https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2025/07/23/kiji/20250723s00001173339000c.html?page=1 2025年7月23日閲覧。 
  3. ^ ダルビッシュの“左投げ”がまた話題 シカゴ地元紙が特集、操れるのは4球種!?”. Full-Count (2019年2月22日). 2021年3月4日閲覧。
  4. ^ クーニン (2018年1月3日). “左投げダルビッシュさんの球速を測定!3種類の変化球も披露”. YouTube. 2023年2月5日閲覧。
  5. ^ a b (現)公認野球規則5.07f(当時)公認野球規則8.01f
  6. ^ “20年ぶりに両手投げ投手がメジャー登場!「実力で昇格」”. The page. (2015年6月6日). https://web.archive.org/web/20150609002448/http://thepage.jp/detail/20150606-00000002-wordleafs 2015年6月7日閲覧。 
  7. ^ “両投げ立大・赤塚 左封印で1回3者凡退デビュー”. 日刊スポーツ. (2019年10月14日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/201910140000695.html 2020年3月27日閲覧。 
  8. ^ 赤塚 瑞樹 / MIZUKI AKATSUKA”. アジアンブリーズ. 2020年3月27日閲覧。
  9. ^ 東海大北海道、初の4強 両投げ武沢が全国初登板
  10. ^ 鶴岡東・工藤大輔の「4つのグラブ」。両投げ両打ちは、甲子園で“卒業”。
  11. ^ 望月千草 (2021年3月2日). “土佐塾エースは「両投げ両打ち」目標は甲子園&プロ”. 日刊スポーツ. https://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/202103010000844.htm 2021年3月3日閲覧。 
  12. ^ “【動画】両投両打の異色プレイヤー、大阪桐蔭の逸材など 東洋大に入学する野手に注目”. 高校野球ドットコム. (2022年1月19日). https://www.hb-nippon.com/news/36-hb-bsinfo/51555-bsinfo20220119008 2022年5月18日閲覧。 
  13. ^ 侍日本3位 5発コールド勝ち/プレミア12詳細
  14. ^ メキシコの両投げ・マドリガル、左腕で打者2人と対戦/プレミア12
  15. ^ “Ambidextrous Pat Venditte confuses hitters”. mlb.com. (2008年6月20日). http://mlb.mlb.com/media/video.jsp?mid=200806202968278 
  16. ^ (現)公認野球規則8.01c(当時)公認野球規則9.01c
  17. ^ 日本初のスイッチ投手、吉成昭三の登場と挫折?/週べ1964年2月10日号」『週刊ベースボールONLINE』2018年9月14日。2025年10月11日閲覧
  18. ^ 滋賀 vs 富山TB ボックススコア-ルートインBCリーグ2020公式戦”. 一球速報.com. OmyuTech (2020年9月12日). 2023年4月29日閲覧。

関連項目

外部リンク


スイッチピッチャー

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パット・ベンディット」の記事における「スイッチピッチャー」の解説

左右両方の腕で投球ができる、プロレベルでは極めて希少なスイッチピッチャーとして知られる。もともとは右投げであるが、3歳の時から父親指導左投げ練習するようになった。右では縦に大きく割れカーブ、左ではスライダー武器とする。かつては、右がオーバースロー本格派、左がサイドスロー軟投派と投球フォームスタイル異なっていた(直球最速は右が146km/h、左が133km/h=大学当時)。しかしながら右肩の故障などによって右においてもサイドスローに近い投球フォームへと転向し2015年メジャー初登板の際には、左右双方サイドスローからの投球行った登板の際に使用しているグラブは、国際FAX注文した6本指グラブ近田豊年グレッグ・ハリスなど、ベンディット以前両投げ投手のためにミズノ社が開発したもの)で、投げる腕に合わせて左右の手のどちらにも装着できるようになっている試合中投球練習(5球まで)でも、左で2球投げてから右で3球と、両方の腕で練習行っている。

※この「スイッチピッチャー」の解説は、「パット・ベンディット」の解説の一部です。
「スイッチピッチャー」を含む「パット・ベンディット」の記事については、「パット・ベンディット」の概要を参照ください。

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