ポリウレタン
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/01 09:07 UTC 版)




ポリウレタン(英: polyurethane[1])とはウレタン結合を有する重合体の総称で、通常イソシアネート基と水酸基を有する化合物の重付加により生成される。ウレタン(-NH・CO・O-)が介する結合をウレタン結合と言う(右図参照)。ウレタン樹脂(ウレタンじゅし)、ウレタンゴムともいう。プラスチックの分類を表す略号はPU、ゴムの分類を表す略号はUである。
1937年にドイツのIGファルベン社で最初に実用化されたが、工業用に広く用いられるようになったのは1950年代以降である[2][3]。
化学的性質
抗張力や耐摩耗性、耐油性に優れるが、耐熱性や耐水性は他の合成ゴムに比べ低い[4]。水分による加水分解や空気中の窒素酸化物(NOx)、塩分、紫外線、熱、微生物などの影響で、徐々に分解される。分解はその素材が合成された時から始まる。
劣化
素材が合成された時点から加水分解などによる劣化が始まり、高湿度下では、劣化が促進される[5]。
日用品で経時劣化に伴うトラブルも多い。靴底に使用されているウレタンの劣化破損では、捻挫などの怪我を負う例が報告されている[6]。登山中であれば遭難など深刻な状況に発展する可能性もある。この劣化は、使用回数などとは無関係で進む。
ただし、上記はエステル結合を持つエステル系ポリウレタンの話である。エーテル系ポリウレタンはエステル結合を持たないため、加水分解には極めて強い。
合成法
通常、グリコールを主とするポリオールと、主として2官能のイソシアネートである、ジイソシアネートを反応させて合成する。カルボキシ基、アミノ基などの官能基も併用することができ、非常に多様な性質の製品を作ることができる。ウレタンフォーム(発泡ポリウレタン)を製造するためには、発泡剤を加えて重合させる。
用途
ポリウレタンの主な用途は次のとおりである。
- 塗料(油性・水性ウレタン塗料)
- 接着剤(ホットメルト接着剤)
- ウレタンフォーム
- 繊維製品(ストレッチ素材) - 「スパンデックス」を参照
- 靴製品など
- 自動車部品(インシュレーター、クッション)
- その他
脚注
- ^ 文部省 著、日本建築学会 編『学術用語集 建築学編』(増訂)日本建築学会、1990年。ISBN 4-8189-0355-8。
- ^ Bayer, Otto (1947). “Das Di-Isocyanat-Polyadditionsverfahren (Polyurethane) [The diisocyanate polyaddition process (Polyurethanes)]”. Angewandte Chemie 59: 257–272. doi:10.1002/ange.19470590901.
- ^ DE 728981, IG Farben, published 1937
- ^ 田中康之、浅井治海 著、日本化学会 編『ゴム・エラストマー』大日本図書〈新産業化学シリーズ〉、1993年。 ISBN 4-477-00395-1。
- ^ 張田吉昭; 中尾政之. “失敗事例 > 加水分解でポリウレタン製のゴムローラが変質した”. 失敗知識データベース. 畑村創造工学研究所. 2012年4月15日閲覧。
- ^ 国民生活センター (1997年11月6日). “下駄箱のミステリー?! ウレタン底の靴”. 発表情報. 2012年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年4月15日閲覧。
関連項目
外部リンク
- もっと! 知りたいウレタン 日本ウレタン工業協会 閲覧:2012-04-15
ウレタン樹脂
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常温で液体の主剤と硬化剤に分かれており、その二つを攪拌混合することで重合させて固体とする。硬化時間は数分から10分程度で、硬化前は透明な液体であるが硬化後はベージュ色・ピンク色・白色など不透明の固体となる。 粘性は高く、そのままでは常温常圧での重力注型ができないため、模型製作用に発売されているものには、しばしば大量の揮発性溶剤が混合されている。揮発性溶剤の混合は流動性の改善には役立ち、常温常圧での重力注型法での成型を可能とするが、固化した樹脂から長期にわたり溶剤が揮発し、成型物の体積が減じることで歪むといった問題も引き起こす。 また、揮発性溶剤が含まれたウレタン樹脂は、真空注型には用いることができない。真空注型では型内部を減圧することにより、揮発性溶剤が沸騰してしまうためである。無溶剤のウレタン樹脂は、流動性が低く真空注型などの手法が必要となる反面、成型物の安定性は比較的高度なものとなる。 人体に害のあるキシレンをのぞいたノンキシレンタイプが主流となっている。
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