アメリカのPTA
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1897年、当時まだ参政権のなかった女性2人、ウィリアム・ランドルフ・ハーストの母であるフィービー・アパーソン・ハースト(英語版)とアリス・マクレラン・バーニー(英語版)が、ワシントンD.C.にて全米母親議会(National Congress of Mothers)を開いた。予想に反して、父親や教師や政治家も含め2000人もの人間が集まった。そのため「全米保護者教師議会 (National Congress of Parents and Teachers)」と名称を変え、後に「全米PTA団体(National PTA Organization)」へと発展し、幼稚園の設立、児童労働法、公共保健サービス、給食、少年法、予防接種の義務化などにつながる活動を行っている。 2007年現在、アメリカ国内にある全米PTA団体に属しているPTAは2万3000以上ある。しかし全米の90%以上の学校が何らかの保護者と教師によるグループを持っているにもかかわらず、PTAに正式に属しているのはわずか25%である。残り75%は各自が独立した団体で、PTO、またはHSA、PCCなどと呼ばれる。PTOの割合が高いのは、PTAの方針や運営方法に賛同しない団体が多いほか、私立校には宗教学校が多く、全米PTAよりも母体の宗教団体のガイドラインに沿った活動をするためである。 PTOが学校単位で活動しがちなのに対し、PTAは学校、州、国というヒエラルキーで構成され、すべての子ども達のためという長期的かつ広範囲な目標を持ち、それぞれの単位に合った内容で活動している。たとえば学校単位では、教員や職員をサポート、学校環境の改善、行事などを企画し実行する。州単位では、各学校からの質問に対してアドバイスを与えたり、学区のカリキュラム、州法の改定など州内の子ども達が対象となる事項について話し合いが行われる。国単位では、アメリカの教育政策に対するロビー活動を行っている。 過去にPTAが先鞭をつけた法案には、給食、予防接種の義務化、スクールバスの安全確保、テレビ放送内容のレーティング(年齢制限)などがある。近年PTAが政府関係者に働きかけているものとしては、安全な学校環境、保護者の介入や意向の尊重、給食の栄養標準の改新、公立校の支援強化などである。また全米PTAは毎年子ども達が提出する数万の候補の中からテーマを決定し、そのテーマに基づいて百万点以上が出品される"リフレクションズ" (Reflections) という大規模な芸術コンテストを催している。各学校から選ばれた作品は学区PTA、州PTAに進み、全米PTAで受賞した作品はワシントンDCの教育省で展示される。 各学校のPTAは毎年、メンバーの家庭からPTA会費を徴収する。その中の一部を州PTAと全米PTAに収めることによって、学校の保険ではカバーされないイベントなどのためにPTA団体保険に加入したり、トレーニングを受けたり、州や全米PTAのサポートを受けることができる。 PTAも各学校の特色やニーズに合ったイベントやプロジェクトを立ち上げるが、PTOの強みは、会費の徴収の有無、活動目的や方針まで全てを決められる自由度の高さである。増加するPTOに対応して1999年に出版・サービス会社PTO Todayが幼稚園から8年生の保護者を対象とした雑誌『PTO Today』が創刊され、8万部発行している。PTO Today社は、独立しているPTOをまとめる事業も行っており、会費を払えばPTO Today Plusのメンバーとなって全米PTAと同じようなサービスを受けることができる。 PTA、PTOに限らず、教育熱心な親ほど学校に係わる傾向にあり、一般的にレベルが高い公立校ほどPTA (PTO) の活動が盛んである。PTAが楽な学校を選ぶ日本とは対照的である。また日本が「今年はPTA委員に当たった」と、大量の仕事が一部の人間に集中するという現象が順繰りに回ってくるのに対し、アメリカでは毎年各家庭がPTAに加入するかどうかを訊ねられ、加入することは「今年も自分ができる範囲でPTA活動をする」という意志の表示となる。仕事を持ちながらシーズンを決めて活動する保護者も多く、教育法、会計、美術指導、図書整理や読書指導、作文添削、スポーツ・コーチ、学校周囲の交通整理、広報活動、緊急災害準備、寄付金集め、子どものクラス役員、親睦会、講演会、教職員への感謝週間など自分の専門や趣味を活かせる分野で活動する。私立校の場合は入学と同時にPTAに自動的に入会したり、ボランティア活動と現金寄付のどちらかを選択する学校もある。 PTOでも女性の保護者、特に専業主婦が多いのは同じであるが合理主義が徹底しているため、'日本の公立小中高のPTAのような煩雑かつ不人気・前例至上主義的な傾向'がない。ただし、日本でも私立校のPTAでは保護者・学校教職員・業務の質から希望者が集まる等の事情が異なる傾向がある。
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