ろくろ首
★1a.ろくろ首の女が結婚して、夫を驚かす。
『偏見』(星新一『午後の恐竜』) ろくろ首の女が正体を隠して結婚するが、やがて夫は、女の首がのびることを知って逃げ出すので、女は夫を殺す。女は3度結婚して3度夫を殺し、逮捕されて絞首刑になる。しかし、首に縄を巻いて吊るしても、首は長くのびて、女の足は床についてしまうのだった。
*絞首刑になっても死なない男→〔息〕4dの『息の喪失』(ポオ)。
『夜窓鬼談』(石川鴻斎)上巻「轆轤(ろくろ)首」 某家の1人娘は色白の美女だった。しかし、眠ると首が長くのびる奇病があり、近隣から「ろくろ首」とあだ名された。商家の息子が婿養子に入ったが、初夜に、眠っている娘の首が5~6尺ものび、婿を見てにっこり微笑む。婿は悲鳴をあげ、娘は目覚めて首はもとに戻った。翌日、婿は家を出た〔*後に某医師が娘を嫁に迎え、その病を治したという〕。
『ろくろ首』(落語) 与太郎がおじさんの世話で、お屋敷のお嬢さんの婿になる。お嬢さんには奇病があり、夜中に首が長く伸びて行灯の油をなめる。与太郎は初夜の床でお嬢さんのろくろ首を見て、逃げ帰る。おじさん「逃げて来ちゃいけない。おふくろさんは、お前が無事に婿として納まってくれるようにと、良い知らせを首を長くして待ってるんだぞ」。与太郎「おふくろも首を長く? それじゃ家へも帰れねえ」。
★1b.少女のろくろ首。
『不思議の国のアリス』(キャロル) アリスがキノコの片側を食べると、急に首が伸びる。それは途方もなく長い首で、アリスの目からは、はるか下に広がる青葉の中から抜け出た茎のように見えた。首は自由に動かせ、曲げることもできる。突然、大きな鳩が飛んで来て、「この蛇め!」と言って翼でアリスをたたく。長い首を、鳩の卵をねらう蛇と見間違えたのだ。アリスはキノコの反対側を食べて、普通の背の高さに戻る。
★2.ろくろ首の変形で、女が眠っている間に首が身体から離れて飛んで行く、というものがある。
『曾呂利物語』巻1-2「女の妄念迷ひ歩く事」 越前の男が上方へのぼるため、夜道を行く。沢谷という所まで来ると、大きな石塔の下から女の首が現れ、男を見て笑う。男は刀を抜いて首を追う。首は、ある家の窓から内へ飛び入り、やがて中から、夫を起こす妻の声が聞こえる。「ああ恐ろしい。私は夢で沢谷へ行きましたが、刀を持った男に追われて逃げ帰る、と思ったところで目が覚めました」。
★3.首が外へ飛んで行っている間に身体を動かすなどのことをすると、首はもとの身体に戻れない。
『捜神記』巻12-7(通巻306話) 秦の時代、南方に「落頭民」という部族があった。彼らは、首が身体から離れて飛ぶのである。将軍朱桓がやとった女中は、眠っているうちに、毎晩その首が外へ飛んで行き、夜明けに帰った。わきに寝ていた者が女中の胴体に布団をかぶせると、首は帰って来ても布団に邪魔されて胴体に着くことができず、苦しんだ。布団をどけてやると首は身体に着き、安らかに眠った。
『ろくろ首』(小泉八雲『怪談』) 行脚の僧・回龍が、木樵(きこり)の家に宿る。夜更けになって回龍は、木樵と家族4人が、首なしの胴体で横たわっているのを見る。驚いて庭へ出ると、林の中で5つの首が飛び回っている。回龍は、木樵の胴体を戸外へひきずり出す。木樵の首は、「身体を動かされたらもとに戻れない」と怒って、4人の首とともに回龍を襲う。回龍は4人の首を追い払い、木樵の首を打ち殺す→〔動く首〕1。
★4.身体を動かさなければ、首はもとの身体へ無事に戻ることができる。
『睡眠中に霊魂抜け出づとの迷信』(南方熊楠) 7年前の厳冬〔*明治37年(1904)、南方熊楠37歳の頃〕。「予(熊楠)」は那智山に孤居し、空腹で臥していた。終夜、自分の頭が身体から抜け出て、家の横側にある牛部屋の辺を飛び廻り、闇夜なのにありありとその場の状況をくわしく見た。自分自身、異常な精神状態であるとわかっていたが、繰り返し頭が抜け出て行くのを止めることができなかった。
ろくろ首(『水木しげるの日本妖怪紀行』) 昔、おみさという女が日野川に身を投げ、蛇に化した。蛇は淵の主(ぬし)となったが、洪水のためにすみかを追われ、陸に上がって大きな樫の木になった。七色樫とも蛇樫とも呼ばれ、木を傷つける者に祟りをなした。七色樫は、雨の夜には七尋女(ななひろおんな)という妖怪になった。見る見るうちに首が伸びて七尋(12~13メートル)にも達し、人をおびやかした(鳥取県日野郡江府町武庫)。
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