「高度利用者向け」緊急地震速報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 08:10 UTC 版)
「緊急地震速報」の記事における「「高度利用者向け」緊急地震速報」の解説
「高度利用者向け」緊急地震速報は、気象庁の多機能型地震計の1つ以上の観測点においてP波またはS波の振幅が100ガル以上となるか、もしくは解析によりマグニチュード3.5以上または最大震度3以上と予測される場合に、地震の発生時刻、震源の推定値の速報を行っている。 「高度利用者向け」情報は、まず地震が発生したことをいち早く知らせるための第1報を優先的に発表する。その後2つ以上の観測点で地震波が観測されれば、さらに解析を行い第2報、第3報と情報を更新していく。更新を重ね、予測の精度が安定したと判断されれば、最終報を発表し、これ以降はその地震の速報の発表を終了する。あらかじめ規定されている時間内に2つ以上の観測点で地震波が観測されなかった場合は、ノイズ(故障や誤報)と判断してキャンセル報を発表する。第1報では非常に大きな誤差が含まれ、雷などによる誤報の可能性も高い。第2報、第3報が発表され、時間が経過するに従い、精度が上がっていく。 「高度利用者向け」と「一般向け」の大きな違いは、以下の2点が指摘できる。「高度利用者向けは点の情報」、または「一般向けは面の情報(広範囲な地域)」を正確かつ十分に理解して利活用し、期待されている減災効果が十全に発揮されることが望まれる。 「高度利用者向け」は、実際に配信された緊急地震速報を利用して、ユーザーの希望に応じて、たとえば予測震度3以上(震度2では、地震の揺れを感知できない場合がある)で発報させることによって、実戦的な地震防災のリハーサルまたは訓練の機会を提供することが可能である。これに対して「一般向け」は、地震被害が予想される「警報」の場合のみに発報されるため、緊急地震速報に接する機会はきわめて稀である。 緊急地震速報の技術的限界から誤差は避けられないが、「予測震度3」だと分かった場合には、「(1)実際の震度は震度7ではない、(2)大きな揺れもこない、(3)大きな被害にはならない」ことが分かる。これが、高度利用者向け緊急地震速報の「安心」効果のひとつであり、「一般向け」緊急地震速報「警報」にはない効果である。 2004年2月25日から気象庁の試験運用が開始された。2004年10月の新潟県中越地震の際には、茨城県守谷市で地震波の到達より早く緊急地震速報が発表される様子がビデオ映像(明星電気)で記録されている。また2007年7月の新潟県中越沖地震では、東京都内の家庭において緊急地震速報の様子がビデオ映像(YouTube)に収められた。 緊急地震速報の特性をよく理解し、情報を混乱なく利用しうるとされた特定の分野に対しては、2006年8月1日から先行的に緊急地震速報の配信が始められた。ガス・電力・鉄道といったライフライン(たとえば、ガスなら主要動がくる前にガス供給をストップし火災を防ぐ。また鉄道では、防護無線を通じて緊急停止させる)や病院(手術中に地震に見舞われる際に患者を守る)などでの活用が想定されている。 この先行的な提供を受けるために必要な気象業務支援センターとの手続きが完了している機関数は2007年3月現在で地方公共団体や鉄道事業者、電力、ガス、製造、放送事業者など400を超えている。また、市町村防災行政無線を使った広域への情報提供やそれを利用した訓練が一部の自治体で行われており、2007年10月からはほかの自治体にも拡大されている。 「高度利用者向け」はパソコンやスマートフォンのアプリ等を利用して一般個人においても受信可能となるが、これらの特性をよく理解しないと混乱を招くケースがある。また、アプリの仕様によっては更なる混乱を引き起こす場合もある。2016年8月1日17時9分ころの誤報において、気象庁からはキャンセル報が発表されていたものの、一部アプリにおいてキャンセル報の自動送信に対応していなかった為に長時間にわたって情報が削除されず、アプリを利用するユーザーに混乱が発生した。
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