《教えてもらう》の敬語
「教えてもらう」の敬語表現
「教えてもらう」の敬語表現としては、「教えていただく」が使われてきました。これは、「もらう」を謙譲語のいただくに置き換えた形です。より丁寧な言い回しにするなら、「教えていただきます」「教えていただきました」といった表現にしましょう。「教えてもらう」の敬語の最上級の表現
「教えていただく」よりも敬意が強い言い回しとしては、「ご教示いただく」が挙げられます。いずれも意味自体は「教えてもらう」と同じです。ただし、日本語には難しい言葉を使うことで、特別なニュアンスを含ませる技法があります。日常的に使う言葉ではない「教示」に美化語の「ご」をつけた「ご教示ただく」は、特別な相手に使う語句として適しています。ちなみに、「ご教示いただく」をより丁寧にした言葉が「ご教示をたまわる」です。これは堅苦しく、おおげさになりかねない表現なので滅多には使われません。それでも、社会的地位の高い相手と重要なやりとりをしているようなときには、「ご教示をたまわる」を用いても通用します。「教えてもらう」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「ご教示いただく」はビジネスシーンでも頻繁に使われてきたフレーズです。逆に、「教えていただく」はあまり職場で使われることがありません。仕事に関係する文章では、「ご教示いただく」とするのがマナーです。以下、ビジネスメールや手紙における例文を挙げていきます。「ご教示いただきありがとうございます。たいへん参考になりました。今後の活動に役立てていければと思います」
「その件は、課長にご教示いただきました。ご心配していただき、ありがとうございます」
「セミナーがご盛況だったとのことで、おめでとうございます。ちなみに、ご来場者はどれほどだったでしょうか。ご教示いただければ幸いです」
「御社の生産管理システムは現在、どちらのメーカーにご依頼されていますか。お手数ですが、なにとぞご教示くださいますようお願い申し上げます」
「教えてもらう」を上司に伝える際の敬語表現
一般的に、役職の離れた上司とのやりとりでは「教えてもらう」の意味で「ご教示いただく」を使います。役職や地位の高い目上の相手に対しては「教えていただく」よりも「ご教示いただく」のほうが適しているからです。なお、「教えてもらいたい」と上司にお願いをするときは「ご教示いただきたく存じます」「ご教示くださいますようお願い申し上げます」などの形が知られています。「教えてもらう」の敬語での誤用表現・注意事項
「ご教示いただく」と似た意味で使われている言葉に「ご教授いただく」があります。いずれも「教えていただく」という敬語に近い意味です。ただし、使用するシチュエーションは微妙に異なるので注意しましょう。まず、「ご教示いただく」は単純な内容を教えてもらったときに使う言葉です。数字や名前、誰かの知識など、聞けばすぐ返ってくる情報についての言い回しだといえます。ビジネスシーンで多用されるのは「ご教示いただく」のほうです。それに対し、「ご教授いただく」は専門的な技術や理論を、時間をかけて伝えてもらうときの言葉です。ビジネスメールや手紙で使うのは誤用になる可能性が高いでしょう。次に、「教えていただく」と「ご教示いただく」の使い分けも意識したいポイントです。いずれも「教えてもらう」の敬語表現として浸透しています。ただ、会話の中で「ご教示いただく」を使う機会はそれほど多くありません。「ご教示いただく」はかなり丁重な言い回しなので、普通に話すと違和感が生まれてしまうからです。よほど役職の離れた上司を相手にするケースを除き、会話中は「教えていただく」でも通用します。そのかわり、ビジネスメールや手紙では「ご教示いただく」に統一するのが無難です。
なお、ビジネスメールでは「~をご教示いただきありがとうございます」といったフレーズがひとつの定型文になっています。これは目上の相手から、何らかの情報を伝えてもらったときのお礼です。「ご教示に感謝いたします」「ご教示いただいたこと、ありがたく存じます」などの文章でも日本語としては間違っていません。そのかわり、ビジネスシーンではあまりなじみのない言い回しです。特別な理由がないのであれば、「~をご教示いただきありがとうございます」という書き方にしましょう。
「教えてもらう」の敬語での言い換え表現
「教えていただく」「ご教授いただく」の類語としては、「お教えいただく」「ご指導いただく」などが挙げられます。これらの大意は「教えてもらう」と変わりません。ただ、「お教え」や「ご指導」には、「知恵を授かる」というよりも「教育をしてもらう」というニュアンスが含まれます。単純に情報を伝えてもらっただけでなく、本人の導きになることをしてもらったときには「お教えいただく」「ご指導いただく」といった語句に言い換えましょう。そのほか、「ご意見をうかがう」「ご相談させていただく」「お知恵を拝借する」などのフレーズも「教えてもらう」と似た意味です。これらの言葉には、「相手の労力を割いたうえで、情報を伝えてもらえた」というニュアンスが込められています。その前提を踏まえていれば、「教えていただく」の言い換えとして使用できるでしょう。
《教えてもらう》の敬語
「教えてもらう」の敬語表現
「教えてもらう」と言う場合、「教える」という行為を受ける主体は自分です。ですからこれを敬語表現に言い換えるとすれば、自分がへりくだって相手を立てる謙譲表現を用いるのが適当だということになります。一般的に謙譲表現を用いるときは、「…ていただく」「お(ご)…いただく(する)」などがよく使われます。これにあてはめると、「教えてもらう」は「教えていただく」「お教えいただく」などに言い換えることで適切な敬語表現にすることができます。しかし、ここで気になるのは「教える」という動詞。もちろん上記の言い換えで「教えてもらう」の敬語表現自体は成立しているのですが、「教える」が動作を直接的に表し過ぎる言葉なので、時と場合によっては稚拙な印象を受け手に与えてしまうことがあります。たとえばその分野で世界的に有名な学者に対して「教えていただけませんか」という言い方をすると、いかに敬語表現であったとしても、敬意をもって十分に真意が伝えられているのかどうか、はなはだ疑問です。このような事例は、ビジネスの世界でもありうる話です。この場合「教える」という動詞をほかの言葉に言い換えるとよいでしょう。「教え示す」という意味を表す「教示」や「伝え授ける」という意味の「伝授」などを使うと敬語表現としてはより完成度を増してきます。「教えてもらう」の敬語での誤用表現・注意事項
「教えてもらう」は謙譲語を使うことによって、「教えていただく」「ご伝授いただく」などのように敬語表現に言い換えることができるわけですが、注意点もあります。それは丁寧な言い方を心掛けるあまり、たとえば「ご伝授いただく」を、「ご伝授していただく」などのように、「して」を加えて言ってしまうような場合です。これは「お(ご)~する」という言い方自体で謙譲表現となっているところを、「して」を入れることで相手の行為にしてしまっているという誤用です。「お教えしていただく」は「お教えいただく」、「ご伝授していただく」は「ご伝授いただく」が正しい言い方です。この点を混同しないようにしましょう。「教えてもらう」の敬語での言い換え表現
「教えてもらう」の敬語表現をほかに言い換えるとすれば、「ご教示いただく」というような表現が挙げられます。これは、ビジネスなど改まった場で、相手に対して段取りや手順、方法など実務的な知識や技能を教えてもらいたいときに馴染みやすい表現です。ほかにも「お教えいただく」という言い方もできます。「ご教示いただく」ほど固い印象はなく、相手の都合や心づもりを確かめるときなどに使います。これらは短期間のうちに、聞きたいこと知りたいことを尋ねる場合などに用いますが、長期にわたって教えを請いたい場合にふさわしい表現もあります。たとえば、その分野に精通したプロフェッショナルに対して、卓越した知識や技能についての教えを請うていきたい場合などは「ご教授いただく」を使います。「ご指導いただく」もよく使われる表現ですが、これは日常的なアドバイスなどを求めるときに使います。特に何かを教えてもらいたいということではなく、目上の人への敬意を示す言葉として人間関係を円滑にする意味で使われるケースが多い慣用表現です。- 《教えてもらう》の敬語のページへのリンク