《ください》の敬語
「ください」の敬語表現
「ください」の語源は、「くれる」という動詞の丁寧語「くださる」の命令形「くだされ」になります。「くだされ」の語尾が変化して「くださいませ」になり、「ませ」が省略されて「ください」となったものです。「ください」には文法上、二つの意味があります。一つは動詞としての「ください」で、モノや行為を相手に丁寧に要求することを示しています。もう一つは補助動詞としての「ください」で、他の動詞について懇願する気持ちを表すものです。「ください」は敬語の中の丁寧語にあたる言葉ですので、それ自体で敬語表現は成立しています。「ください」の敬語の最上級の表現
動詞の意味でも補助動詞の意味でも、「ください」は相手に何かをしてもらいたいことを表しており、本来は依頼の気持ちが込められている言葉です。そのため、依頼の気持ちが明確に伝わるよう「頼む」「願う」などの言葉を補ったうえで、これを適切な敬語に言い換えることで、最も敬意のこもった表現に改めることができるでしょう。これに沿って「ください」を改めるには、「くださいますようお願いします」と依頼の言葉を添えたうえで、「します」の「する」を謙譲語の「いたす」に差し替えることで、最上級の敬語表現となる「くださいますようお願いいたします」を導き出すことができます。「ください」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「ください」には補助動詞で用いる場合と、動詞で用いる場合の2種類がありますので、ビジネスメール・手紙でこの言葉を用いる際は、それぞれ適切に使い分けることが必要です。補助動詞として用いる場合であれば、「提出期限は今月末となっておりますので、万が一それまでに間に合わない場合は早めにご連絡ください」「ご要望のありましたデザイン関係の書類につきまして、取り急ぎとりまとめてお送りしました。メール便で本日午後お手元に届く予定ですのでご確認ください」「ご指摘いただいた点を部署内で検討し、修正案を作成してみました。恐れ入りますが再度ご検討くださいますよう、よろしくお願いいたします」「例年にも増して暑い日々が続いております。くれぐれもお身体にお気を付けください」などとします。また「ください」を動詞として用いる場合は、「いただいた書類が一部入っていなかったようです。後ほど取りにまいりますので、その際に不足分を下さい」「提出してもらった企画案を確認しました。この内容で進めようと思いますので、できるだけ早く原本を下さい」「依頼された見積書のチェックですが、他の案件で今立て込んでいるため、申し訳ありませんが、少しお時間を下さい」などとします。
「ください」を上司に伝える際の敬語表現
「ください」を補助動詞として使う場合は、「ください」の前に尊敬語の動詞を用いて上司に伝えるようにします。たとえば「見積書を作成しましたので、確認してください」という表現は、丁寧語の「ください」を用いていることで敬語表現としては成立しているのですが、ビジネスの場で上司に使う場合にはさらに敬意を深めて伝えるのが適切でしょう。ここは「確認」に丁寧の接頭辞「お(ご)」を付けて「見積書を作成しましたので、ご確認ください」とします。これは尊敬語の一般形である「お(ご)…くださる」を用いた組み立て方です。同様に「この資料を見てください」は「この資料をご覧ください」、「お土産です。食べてください」は「お土産です。お召し上がりください」などとします。「ください」を動詞として使う場合は、敬意を込めた依頼の気持ちが伝わるような言葉を前後に添えて伝えるようにします。たとえば「いただいた封筒に資料が一部入っておりませんでしたので、不足分をください」とそのままストレートな表現で伝えるのではなく、「いただいた封筒に資料が一部入っておりませんでしたので、恐れ入りますが不足分をくださいませんでしょうか」などと、相手への敬意を深めて伝えるようにします。また「ください」の代わりに「頂戴する」などの謙譲語を用いて、「不足分を頂戴できませんでしょうか」などとすればよりいっそう敬意が伝わりますので、言い換えが可能な場合は、どちらがいっそう敬意のこもった表現になるのかを考えて、適宜使い分けるようにします。
「ください」の敬語での誤用表現・注意事項
「ください」の表記には、ひらがなで「ください」と表記する場合と漢字で「下さい」と表記する場合の二通りがあります。どちらの表記でも間違いではありませんが、厳密には動詞の場合は「下さい」、補助動詞の場合は「ください」と表記するという使い分けがあります。そのため、一つの文章の中で「下さい」を補助動詞に用いて「ください」を動詞に用いたような場合は誤った使い方になりますので注意が必要です。また、補助動詞の「ください」の前に置く動詞に謙譲語を使ってしまう誤用が見られます。「ください」は相手に敬意を込めて依頼する言葉ですので、前に来る動詞は必ず尊敬語でなくてはなりません。ところが「その件は、あちらの1番窓口でお伺いください」などと、「聞く」の謙譲語である「伺う」を使ってしまうケースは少なくありません。この場合は、「伺う」ではなく尊敬語の「お聞きになる」を使って「あちらの1番窓口でお聞きください」とするべきです。「ください」を付けると、何でも丁寧な言い方に感じてしまいがちですが、「ください」の前に来るのは尊敬語であるという原則を忘れないようにしましょう。
「ください」の敬語での言い換え表現
「ください」の敬語での言い換え表現としては、「お願いいたします」「いただけますか」「いただけませんでしょうか」などがあります。- 《ください》の敬語のページへのリンク