《くれる》の敬語
「くれる」の敬語表現
「お与えになる」、「くだされる」の意味をもつ「くださる」は、「くれる」の尊敬表現です。「くださる」は、動作の恩恵を受ける立場から、動作の主体に対して敬意を表す時に使われます。目上の人が何かをしてくれるとか、ものをくれるなどの時に使われます。また「くれる」の対義語の「もらう」の敬語表現は「いただく」、「頂戴する」および「賜わる」です。「もらう」の敬語表現は自分に視点をおいているので、敬語として使う時は自分をへりくだる謙譲語として使われます。「くれる」の敬語の最上級の表現
「くれる」の敬語「くださる」の最上級の表現は「賜わる」になります。鎌倉時代以前までは貴族階級の間で「賜わる」は、「受く」の謙譲語である「いただく」「頂戴する」の意味で使われていました。鎌倉時代以降は、御家人、武士階級の間で「賜わる」は、以下のように使われています。平家物語には「備前の児島を佐々木にたまわりける」【訳:(頼朝は)備前の国の児島を佐々木盛綱にお与えになった】とあります。ここでは、「賜わる」が「与ふ」の尊敬語である「くださる」の意味で使われています。現在「賜る」は、不特定多数の多くの人々に対して理解を促すような場合に使われます。「買い物中は程度なソーシャルディスタンスを確保してください。何卒ご理解賜わりますようお願い申し上げます」といった、例があげられます。
「くれる」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
ビジネスメール・手紙においては、相手を不快にさせないように「くださる」を使用するのがポイントになります。日々の生活やビジネスシーンなどでは、クッション言葉を加えた「くださる」を頻繁に見かけます。クッション言葉とは「大変恐縮ですが」、「ご面倒おかけしますが」および「可能であれば」などです。「くださる」の前にクッション言葉を入れることにより、「くださる」の文章を読む相手に柔らかい印象を与えることができます。具体例を以下にあげてみます。
「大変恐縮ですが、ポイントの有効期限をご確認くださるようお願い致します」はメールや手紙およびホームページの告知で使われるパターンです。ここでは、「大変恐縮ですが」のクッション言葉のあとに、相手に対して尊敬語の「くださる」で確認を依頼しています。
「可能であれば、〇〇月〇〇日以降で会議を調整してくださいませんか?」はビジネスメールで使われるパターンです。ここでは、可能であればというクッション言葉のあとに、相手に対して尊敬語の「くださる」で提案しています。
「くれる」を上司に伝える際の敬語表現
「くださる」を上司など目上の人に使う場合は、相手に行為を行ってもらうことを念頭に入れて使います。頻繁に使われるのが、「〇〇してくださると、ありがたいです」のフレーズです。「ありがたいです」は、行為をお願いする相手の範囲が、上司から先輩、同僚までと広く使えます。場合によっては部下に対して使っても好印象を与えることがあるので、頻繁に使われています。
また「〇〇してくださると、幸いです」のフレーズは、先輩や特に同僚には使いません。「幸いです」は、自分に何か間違いがあったときに、上司に自分の間違いの穴埋めを頼むときなどに使います。
上司などに行動を促す「〇〇してくださる」は、「ありがたいです」や「幸いです」といった後に続く言葉で、使い分けていることが特徴です。
「くれる」の敬語での誤用表現・注意事項
「ください」での誤用表現・注意事項は、例えば、「なにかございましたら、総務部のA(名前)へご相談してください」があります。正しい使い方は「なにかございましたら、総務部のAへご相談ください」となります。この間違いは、謙譲の形式の「お~する」「ご~する」を尊敬のつもりで利用してしまう時に発生します。よくある類例としては、「お電話の前で、少々お待ちしてください」などがあげられます。正しい使い方は「お電話の前で、少々お待ちください」です。
「くれる」の敬語での言い換え表現
「くださる」の言い換え表現は「お与えになる」になります。それ以外には「授けれらる」、「施される」および「賜わる」などがあげられます。「お与えになる」は、「お与えになる」側が高級品などを、下位の者へあげるといったニュアンスが強くでます。また「お与えになる」は動植物などに対しても使われるのが「くださる」との違いになります。例えば「総理大臣は、私に内閣総理大臣賞をお与えになりました」の「お与えになる」は「くださいました」の言い換え表現です。しかし「池の鯉には、餌をお与えにならないようお願いします」という使い方は、「お与えになる」の独特な表現です。
また「お与えになる」には、「くださる」と違い、受け取る側が不利益を被る場合にも使われることがあります。例えば「Aさんは自分の子供に不必要なものをお与えなさって、将来子供がダメになるだろう」「社長は、不採算部門を下請けにお与えになった」といった、使われ方をします。
「くださる」の言い換え表現である「お与えになる」は、使い方によりマイナスの意味合いも含まれるのが特徴です。
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