愛媛県 経済・産業

愛媛県

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 03:30 UTC 版)

経済・産業

経済

愛媛県は、前述したように、各地が山で隔てられているため、都市圏が孤立している。以下に愛媛県が定めた中央圏域区分を記す。

松山都市圏は、松山市とその周辺の都市のみで構成している。山がちな高縄半島四国山地、とりわけ石鎚山脈の影響で愛媛県の主要都市である今治市新居浜市宇和島市などと隔絶されている。そのため、県全体で都市圏を構成している高松都市圏徳島都市圏のようにはいかず、四国で3位の都市圏となる。しかし、これは10%都市圏の話である。総務省統計局の定義する都市圏 (総務省)(1.5%都市圏)には四国で唯一掲載されている。定義によって松山都市圏の規模の見方は変わってくる。

産業

愛媛県は地理的に東予・中予・南予に三分されるが、産業においてもこれら地域によって大きく様相が異なる。

  • 東予は、四国中央市の紙関係、新居浜市西条市の化学工業、非鉄金属、産業機械、電機関係、今治市の造船とタオルといった製造業が中心で、瀬戸内工業地域の一角ある。別子銅山があった新居浜市は旧住友財閥発祥の地であり、現在でも住友グループの企業が工場を構えている。
  • 中予は、松山市を中心とした地域で、松山市だけで愛媛県の人口の3分の1を占めており、政治・経済、商業活動の中心として第三次産業が主力ながら、臨海部には化学工業も発達している。
  • 南予は、柑橘類や養殖漁業を中心に第一次産業に特化している。その反面、製造業の集積が貧弱であり、経済基盤も脆弱である。そのため県や南予の自治体はコールセンターなどの誘致に補助金を支給するようにして企業の誘致を図っている。

農業

イヨカン

県下各地で、柑橘類が生産され、みかんいよかんが有名。キウイフルーツなども有名である。そのうちみかんは2003年(平成15年度)まで、僅差ではあるが日本一の座を守ってきた。しかし2004年(平成16年度)には34年ぶりに和歌山県に日本一の座を明け渡した。 その後、2017年(平成29年度)まで2位を維持していたが、2018年(平成30年度)と2020年(令和2年度)に静岡県に抜かれ3位となる年もあるなど生産量の低下が顕著になっている。

  • 裸麦 - 生産量日本一。
  • キウイフルーツ - 生産量日本一、全国シェア約2割。
  • いよかん - 生産量日本一、全国シェア約9割。
  • みかん - 生産量全国2位、全国シェア約16%。
  • ポンカン - 生産量全国1位、全国シェア約35%。
  • ハッサク - 生産量全国3位、全国シェア約1割。
  • 栗 - 生産量全国3位、全国シェア約1割。
  • ネーブルオレンジ - 生産量全国4位、全国シェア約1割。

林業

林業産出額は57億6千万円(2010年)となっており、木材生産が41億円と全産出額の71.2%を占めている[16]。全国の林業産出額の割合では木材生産の割合は45.1%で全国と比べ愛媛県では木材生産の割合が高くなっている[16]。品目別の木材生産ではが22億3千万円と最も多く、次いでが18億1千万円である[16]

1980年には林業産出額は254億7千万円[17]であったが、外国材の流入による価格低下や林業従事者の減少などによって大幅に激減している。

漁業

燧灘、伊予灘、宇和海という性質の異なる3つの海域に面し、それぞれ独自の漁業が営まれている。

  • 燧灘では、小型漁船による漁業が行われている。かつては、鰯などの好漁場であったが、資源が枯渇しつつあり、漁獲高も多くない。沿岸部では、海苔などの養殖が小規模ながら行われている。また、来島海峡などの海峡部ではタイ、デベラなども獲れる。しかし、養殖は盛んではない。
  • 伊予灘では、漁船漁業が中心である。小魚中心。
  • 宇和海では真珠ハマチブリ)の養殖が盛んで、タイの養殖では日本一となっている。真珠養殖も長らく日本一であったが、大量斃死の影響で、日本一の座から滑り落ちてしまった。

製造業

製造品出荷額等(2010年)は、3兆7,924億円であり、非鉄金属が6,044億円(全体の15.9%)と最も高く、次いでパルプが5,211億円 (13.7%)、輸送用機械が5,112億円 (13.5%)、化学が4,231億円 (11.2%)、石油・石炭が3,936億円 (10.4%) などとなっている[18]

事業所数(2010年)は全体では2,434事業所で、産業別に見ると食料が460事業所 (18.9%) と最も高く、次いで繊維が333事業所で (13.7%)、パルプが225事業所 (9.2%) などとなっている[18]。従業員数(2010年)では全体が76,347人で食料が13,574人 (17.8%) と最も高く、次いでパルプが9,769人 (12.8%)、「繊維」が7,647人 (10.0%) などとなっている[18]

市町村別の製造業出荷額等では、今治市が8,871億円が最も多く、西条市が8,113億円、新居浜市が6,150億円、四国中央市が6,068億円、松山市が4,237億円などとなっている。上位4位は東予地方の市が占めており、上島町を含めると愛媛県全体の製造業出荷額等の7割以上 (78.5%) を東予地方の市町が占めている[18]

東予地方
繊維関係
タオル今治市
縫製業
紙製品関係
四国中央市大王製紙が本社を置いている。一般的な製紙業(新聞紙・印刷用紙・包装用紙・衛生用紙など)のほか、祝儀用品・書道用紙などの日用品の生産が活発である。
化学・金属
新居浜市西条市など。住友グループ住友金属鉱山住友化学住友重機械工業、SEN)、鉄鋼(日本製鉄)、メカトロニクスなど
石油化学
今治市。太陽石油
電機・機械
新居浜市、西条市、今治市。ルネサス エレクトロニクス住友重機械工業ハリソン東芝ライティングなど
造船
今治市。今治造船および新来島どっくグループ。
食品
今治市、西条市。日本食研ホールディングスアサヒビールなど。
中予地方
繊維関係
化学繊維・縫製業
東レ松前町)、帝人松山市)などの関連工場がある。
石油化学
松山市。コスモ松山石油三菱化学など。
機械・電気関係
松山市、東温市など。電気・電子部品、農業機械、繊維機械などおよびその部品。井関農機三浦工業PHCなど。
食料品
松山市。果実飲料、削り節伊予市)など えひめ飲料ヤマキマルトモなど。
南予地方

電子部品工場や自動車部品工場などが撤退し地元では雇用の減少に頭を悩ませている。ただ水産業が盛んであるため飼料などの工場は複数立地している。

食品関係
宇和島市など。メルシャン日清丸紅飼料など。
魚肉練製品
じゃこ天蒲鉾削りかまぼこ八幡浜市など。八水蒲鉾など。

鉱業

かつては、新居浜市(旧別子山村)の別子銅山などの鉱山があったが次々と閉山し、現在は今治市の大島で大島石を採掘するぐらいになっている。

建設業

バブル崩壊後は景気対策の一環として次々と公共事業が行われ建設業は栄えたが、後に県財政の悪化や三位一体改革で公共事業が減少し現在、県内の建設会社が倒産したり、会社分割など再建を図る企業も出てきている。建設業の不振で工場や事業所の撤退が相次ぐ南予地方は大きなダメージを受けている。

小売業

松山市駅の駅ビルでもある「いよてつ高島屋」
「三越」などがある松山市一番町

百貨店では、松山市に伊予鉄髙島屋松山三越がある。閉店した店舗としては主に大丸今治市新居浜市)、髙島屋(今治市)がある。なお、今治大丸は、2008年(平成20年)12月に閉店した。

総合スーパーマーケットは、以下のような店舗がある。

フジ・リテイリング
フジグラン:フジグラン松山フジグラン重信エミフルMASAKIほか計9店舗
イオングループ
イオン
ジャスコ松山市、四国中央市、新居浜市
サティ今治市
統合以降:今治市
マックスバリュ:松山市、新居浜市、今治市
ザ・ビッグ:新居浜市、松山市、今治市
マルナカ:東予・中予エリアを中心に県内全域に27店舗

かつてはニチイ(松山、今治、新居浜など)、ダイエー松山、新居浜、西条など)、イズミ松山)なども進出していたが2013年1月現在それらの店舗はない。

また近年では、岡山勢で24時間オープンのスーパーである大黒天物産(ラ・ムー、ディオ、2005年以降)やハローズ(2010年以降)による出店攻勢もある。(2020年1月7日現在、大黒天:7、ハローズ:7)

電力・ガス業

県内の電力は四国電力によって供給されているが、今治市の一部島嶼部、上島町では中国電力、新居浜市の別子山地区では住友共同電力によって供給されている。

主な発電所は

他、県内にはいくつかの水力・風力発電所がある。

県内には四国唯一の原子力発電所である伊方原子力発電所がある。四国電力の原子力本部は本店のある高松市に設置されていたが、2011年(平成23年)6月末に原子力燃料部など一部部門を除き松山市に移転する予定である[19]

都市ガスは四国ガスによって松山市・今治市・宇和島市など一部の地域のみに整備されている。そのためほとんどの地域はプロパンガスによってガスが供給されている。

情報通信業

愛媛県では、コールセンター誘致に補助金を交付していて、南予地方や松山市へのコールセンター誘致に成功している。また松山市には、コールセンター以外にも大手保険会社の集中事務センターが設置されたり、サイボウズの開発拠点設置が計画されるなど多くの新規雇用が生まれている。

観光業

道後温泉駅前

愛媛県の観光客数は延べ2450万9千人(2011年)で、観光客消費総額は1049億円(2011年)となっている[20]

地域別では、松山圏域(中予地方)が最も多く延べ1010万4千人[21]、今治圏域(今治市上島町)が延べ436万1千人、八幡浜・大洲圏域(八幡浜市大洲市西予市内子町伊方町)が延べ402万3千人(2011年)、東予東部圏域(四国中央市新居浜市西条市)が延べ335万0千人、宇和島圏域(宇和島市松野町鬼北町愛南町)が延べ267万1千人となっている[21]

県外観光客は尾道市今治市を結ぶしまなみ海道が開通し、開通した1999年には県外観光客延べ数は1100万人を超え「しまなみブーム」と呼ばれる程、観光客が大幅に増加した[22]2000年にはブームの収束で県外観光客は減少したが、その後は800万人から1000万人で推移している[22]。2011年の県外観光客数は延べ9,396千人で観光客消費総額は931億円である[23]

ミシュランガイド日本編で2つ星にそれぞれ選定された、3000年の歴史を有する道後温泉四国最大の平山城である松山城、また、東・中・南予地方特有の自然や文化施設などの観光資源があり、毎年、県内各地で数多くのイベントが行われている。

県内に本社を置く主要企業

上場企業

非上場企業

木子七郎設計による国の登録有形文化財:石崎汽船本社

県内に拠点事業所・工場を置く主要企業

県内に工場・事業所を置く主要企業(上の項目を除く)

金融機関

銀行

伊予銀行本店

信用金庫

郵便局

松山中央郵便局

県人会


注釈

  1. ^ 現在の県章は1989年制定。現在も県章を定める公告は有効であるがほとんど使用されず、県旗のみが紹介されることが多い。
  2. ^ 瀬戸内海瓢箪島内に陸上の県境を有する[1]。また、架橋されており両県間を自動車で通行可能。
  3. ^ a b 海上を隔てて隣接。
  4. ^ 両遺跡は標高約300メートルの地点にある。東峰遺跡ではAT火山灰の下から局部磨製石斧・台形様石器・安山岩大型石核が、高見I遺跡でもチャート製の剥片と推奨製の破片が出土している。なお高見I遺跡のAT火山灰の上からナイフ形石器や石核などが出土している[9]
  5. ^ ほかに2万石ほどの幕府領もあり、川之江代官所が置かれている。
  6. ^ 国別の総石高では伊予国が四国最大である(正保郷帳によれば伊予国40万石、土佐国24万石余、阿波国18万石余、讃岐国17万石余。旧国郡別石高の変遷参照)。
  7. ^ ジェイエア日本エアコミューターの機材・乗務員で運航する便あり。
  8. ^ ANAウイングスの機材・乗務員で運航する便あり。
  9. ^ >日本航空(JAL)とのコードシェア(JAL国際線との乗継時のみ)。
  10. ^ 日本航空(JL)との共同運航便。
  11. ^ 就航時、週2便(月・金)。 2012年4月18日から週3便(月・水・金)、2012年10月29日以降 4便(月・水・金・土)に増便されたが、2013年10月27日から週2便(月・金)に減便。エアバスA319型機。
  12. ^ 2017年11月2日から週3便(火・木・日)で就航。ボーイング737-800型機。 2018年7月・8月および冬ダイヤ期間中は週5便に(月・火・木・金・日)に増便された。2019年冬ダイヤは増便検討も日韓関係悪化に伴い中止。
  13. ^ 全日本航空(NH)・ニュージーランド航空(NZ)との共同運航便。
  14. ^ 2019年7月18日より週2便(木・日)で就航。エアバスA321型機。 2020年4月10日より週4便(水・木・土・日)に増便。
  15. ^ 開局当時は計画レピータの制度がなく広域レピータ周波数の割り当てがなかったため。
  16. ^ 名古屋市科学館が竣工する2010年までは、世界最大であった。

出典

  1. ^ 広島県の文化財 - 瓢箪島”. 広島県教育委員会. 2022年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月28日閲覧。
  2. ^ 全国都道府県市区町村別面積調 国土地理院 2013年11月28日閲覧
  3. ^ 伊予之二名島”. 神名データベース. 國學院大學. 2023年8月7日閲覧。
  4. ^ 一 伊予(伊豫)”. 愛媛県史 文 学(昭和59年3月31日発行). 2023年8月6日閲覧。
  5. ^ a b 二 愛媛”. 愛媛県史 文 学(昭和59年3月31日発行). 2023年8月6日閲覧。
  6. ^ a b (2)愛媛の「姫」づくり”. 愛媛の技と匠(平成9年度). 2023年8月6日閲覧。
  7. ^ 愛媛面影”. 文化遺産オンライン. 2023年8月6日閲覧。
  8. ^ 調査・研究 えひめの歴史文化モノ語り 第47回 伊予国全域網羅の地誌「愛媛面影」”. 愛媛県歴史文化博物館 (2019年6月14日). 2023年8月6日閲覧。
  9. ^ 寺内浩「愛媛のあけぼの」『愛媛県の歴史』 13-14ページ。
  10. ^ 寺内浩「古代国家と伊予国」」『愛媛県の歴史』43-44ページ。
  11. ^ 日本の特別地域特別編集64 これでいいのか愛媛県』42、43頁。
  12. ^ 伊予八県の成立/愛媛県史 近代 上(昭和61年3月31日発行)”. データベース『えひめの記憶』. 愛媛県生涯学習センター. 2021年9月15日閲覧。
  13. ^ a b c 海と峠の風土/愛媛県史 県政(昭和63年11月30日発行)”. データベース『えひめの記憶』. 愛媛県生涯学習センター. 2021年9月15日閲覧。
  14. ^ 愛媛県の歴史と文化”. 愛媛県教育委員会文化財保護課. 2021年9月18日閲覧。
  15. ^ a b c “愛媛県人口ビジョン”. https://www.pref.ehime.jp/h12100/jinnkoumonndai/documents/271027zinkoubijon.pdf 2017年1月5日閲覧。 
  16. ^ a b c 農林水産省統計部 (2010) 『生産林業所得統計』
  17. ^ 愛媛県農林水産部森林局『愛媛の森林・林業について(平成22年度実績版)』
  18. ^ a b c d 愛媛県企画振興部管理局統計課経済統計係 (2010) 『平成22年工業統計調査』
  19. ^ 【放射能漏れ】四国電力、原子力本部を愛媛に移転へ - MSN産経ニュース 2011年4月13日[リンク切れ]
  20. ^ 愛媛県 (2011) 『平成23年 観光客数とその消費額』、2頁
  21. ^ a b 愛媛県 (2011) 『平成23年 観光客数とその消費額』、3頁
  22. ^ a b 愛媛県 (2011) 『平成23年 観光客数とその消費額』、5頁
  23. ^ 愛媛県 (2011)『平成23年 観光客数とその消費額』、4頁
  24. ^ モービルハム 1985年5月・1986年1月号 電波実験社、CQ ham radio 2008年10月号 CQ出版社、JARL愛媛県支部報 1983年 - 1998年号






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