数列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/23 14:35 UTC 版)
特殊な形の数列
等差数列
任意の自然数 n に対して、隣り合う 2 項 an と an+1 の差が一定のものを等差数列または算術数列という。また、その一定である二項間の差を公差という。
- 1, 2, 3, 4, 5, 6, …(初項 1、公差 1)
- 3, 5, 7, 9, 11, 13, …(初項 3、公差 2)
など
等比数列
任意の自然数 n に対して、隣り合う 2 項 an と an+1 の比が一定のものを等比数列または幾何数列という。また、その任意の 2 項間で一定となる比を公比という。
- 1, 2, 4, 8, 16, 32, … (初項 1、公比 2)
- 5, 15, 45, 135, 405, … (初項 5、公比 3)
- 1, −1, 1, −1, 1, −1, … (初項 1、公比 −1)
など
漸化式を持つ数列
最初の 2 項から始めて、
- 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, …
のように連続した 2 項の和を次の項とするフィボナッチ数列に代表される、漸化式が成り立つ数列。
母関数を持つ数列
ある種の級数を母関数とし、その係数の列として数列を定義することもある。ベルヌーイ数・オイラー数などはテイラー数として定義されるものの例であり、母関数の微積分を通して計算したり、漸化式を取り出したりすることができる。フーリエ数は理論的には関数の球関数による展開の一種から得られる数列だが、具体的な個々の係数は積分によって定められる。
漸化式
数列 (an) の各項 an がある定まった関数 f を用いて
- an+1 = f (a1, a2, …, an)
となるように(もちろん f の取りうる引数の数は一定であるから、右辺に現れる項はある一定の規則に従い落とされるものとして)帰納的に定められているとき、関数 f を数列 (an) の漸化式とよび、あるいは、数列 (an) は漸化式 f により定められているという。
漸化式を解くとは、漸化式で与えられている数列 (an) の一般項 an を n の陽な式で表すことである。
等差数列や等比数列は、その定義から極めて単純な漸化式を持つ。一般の等差数列に対する漸化式は
- an+1 = an + d
という形に表される。定数 d はその等差数列の公差である。この漸化式は簡単に解けて、一般項は an = a1 + (n − 1)d となる。同様に、一般の等比数列に対する漸化式は
- an+1 = ran
という形に表される。定数 r はその等比数列の公比である。この漸化式を解けば、一般項は an = rn−1 ⋅ a1 となる。これらは後述する隣接二項間漸化式の最も単純なものである。
特定の形の漸化式が成立する場合など、いくつかの場合には、一般項 an は n の明示的な形の式で表される。
隣接二項間漸化式
数列 (an) が漸化式によって定められ、漸化式が 1 変数関数 f (x) によって
- an+1 = f (an)
と表されているとき、この漸化式は隣接二項間の漸化式であるという。特に、p(n), q(n) を n の関数として、f が p, q を用いた一次式
- an+1 = p(n) ⋅ an + q(n)
となっているとき、線型であるという。特に関数 p(n), q(n) が定数関数である場合、定数係数線型隣接二項間漸化式と呼ばれる。定数係数線型隣接二項間漸化式
- an+1 = pan + q
は等差数列あるいは等比数列に帰着され、一般項が n の式として明示的に記述できる:
p = 1 のとき、漸化式は an+1 = an + q であるから、これは等差数列である。
p ≠ 1 のとき、漸化式 an+1 = pan + q の特性方程式と呼ばれる方程式 x = px + q の根を α とすると、漸化式は
- an+1 − α = p(an − α)
と変形できる。これは、一般項が bn = an − α で定義される数列 {bn} が公比 p である等比数列となることを表しているから、bn が n の式として得られる。an = bn + α だから、これも n の式として書くことができる。
隣接三項間漸化式
数列 (an) が漸化式によって定められ、漸化式が 2 変数関数 f (x, y) によって
- an+2 = f (an+1, an)
と表されているとき、この漸化式は隣接三項間の漸化式であるという。特に、f が関数 p(n), q(n) を用いた斉一次式
- an+2 = p(n)⋅an+1 + q(n)⋅an
となっているとき、線型であるという。特に関数 p(n), q(n) が定数である場合、定数係数線型隣接三項間漸化式と呼ばれる。定数係数線型隣接三項間漸化式
- an+2 = pan+1 + qan
は特性方程式 x2 = px + q の根を用いて解くことができる。すなわち、特性方程式の根が実数、複素数であるにかかわらず異なる 2 つの根 α, β を持つとき、αn 及び βn はそれぞれ漸化式を満たす。特性方程式が重根 α を持つ場合は、αn 及び nαn がそれぞれ漸化式を満たすこととなる。言わば漸化式の “基底解” となっているわけである。一般項は漸化式の線形性のおかげでこれら 2 組の“基底解”の線型結合で表すことができ、2 つの未定係数は任意の 2 項(初項と第二項である必要はないのはもちろん、隣接している必要すらない)の情報から決定することができる。
フィボナッチ数列はこのタイプの漸化式を持つので、手順にしたがって一般項 an が
なる明示式として得られる。
連立線型漸化式
2つの数列 (xn), (yn) が連立漸化式
を満たしているとする。これを二元の定数係数連立線型漸化式という。漸化式を
とおけば、連立漸化式を平面上の点列の一次変換による移動の様子として捉えることができる。A をこの連立線型漸化式の係数行列と呼ぶ。また、
となることも明らかであるから、係数行列 A の冪乗が計算できるならば、連立漸化式を解くことができる。
ゆえに、定数係数連立線型漸化式は係数行列 A を三角化あるいは対角化するような基底に関する表示、あるいは同じことだが、P−1AP が三角行列か対角行列となる正則行列 P をとって、座標変換 P−1x'n = y'n を行うことで得られる連立漸化式
の問題に帰着される。
また、yn = xn−1 や yn ≡ 1 となる場合を考えると c や d を適当に選んで
や、
のように、隣接二項間および三項間の定数係数線型漸化式が得られる。先に述べたこれらの漸化式の解法は、係数行列の冪を求める方法に対応している。特に、定数係数連接三項間漸化式の特性多項式は係数行列の特性多項式に一致する。
もう少し一般に、
を満たす点 y∞ をとれば、x′n ≔ y′n − y∞ とおくことにより、線型漸化式
に帰着される。
これらのことは、さらに高次化することができる。
数学的帰納法
漸化式自体が帰納的に数列を定義するものであり、一般項 an がどのような形であるかを述べることが自然数に関する命題とみなすことができることから、漸化式を持つ数列の一般項を求める際に数学的帰納法は有用な手法である。
数列の和
数列の和はしばしば級数(きゅうすう、英: series)と呼ばれる。はじめの n 項までの和を第 n 部分和(ぶぶんわ、英: patial sum)と呼び、何らかの自然数 n に対して第 n 部分和となるようなものを有限級数と総称する。
級数の例
- 等差数列の初項から n 項までの和
(ただし、f = a1 は初項、l = an は末項である)
- 等比数列の初項から n 項までの和
- 冪和 の明示式にはベルヌーイ数が現れる。ベルヌーイ数に限らず、このような関係式によっていくつかの数の系列が定義されることがある。
和分法・差分法
階乗冪函数の差分商を計算すれば Δx(n)/Δx = nx(n−1) であり、この意味で階乗冪は冪函数 xn の離散版である。
与えられた数列 (an) に対し、階差数列が (an) となるような数列 (sn) をしばしば数列 (an) の不定和分と呼び、(Δ−1an) などで表す:
このような数列が与えられたとき、ak ≔ sk+1 − sk を k = 0, ..., n について片々加えることにより
が成立する。すなわち、不定和分 sn は(定数列を加える差を除き)実質的に数列の第 n 部分和 Sn を与えるものである。もっと一般に、函数 f(x) の不定和分 Δ−1f(x) が
となるものとして定義され、
が成り立ち(微分積分学の基本定理の離散版)、これを和分差分学の基本定理などと呼ぶことがある。このような函数 Δ−1f(x) は周期 1 の周期関数を加える違いを除いて一意である。
数列の和分法について、階乗冪 kn は基本的である。
- n ≥ 0:
- n = −1: ここで Hm は第 m 調和数。
- n ≤ −2:
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