供給ショック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/11/08 01:41 UTC 版)
経済学において、供給ショック(英: supply shock)とは財・サービスの供給を変化させ、財・サービスの価格を変化させるような突発的な出来事である。供給ショックは総供給曲線をシフトさせるような出来事であるとも言い換えることができる。供給ショックは特定の財の供給の突発的増加あるいは減少が原因となりうる。供給ショックのような突発的変化は均衡価格に影響を与える。
短期においては、負の供給ショック(negative supply shock)は生産量を減らし、物価を上昇させ、総供給曲線を左方向にシフトさせる[1]。短期において、負の供給ショックは生産量の低下と物価の上昇の組み合わせによりスタグフレーションの原因となる[2]。天災や事故等による油田施設の損壊(による原油価格の上昇)などが負の供給ショックとして考えられる[3]。正の供給ショック(positive supply shock)は生産量を増やし、物価を低下させ、総供給曲線を右方向にシフトさせる[2]。正の供給ショックは例えば技術進歩(技術ショック)が考えられる。技術進歩が生産をより効率的にし、生産量を増やすのである。他にも原油価格の低下や例年にない好天が正の供給ショックとして考えられる[2]。
過去の供給ショック事例
渡辺・細野・横手(2003)によれば実際の供給ショックの主要な例として第1次石油危機(1973年10月)が挙げられる[4]。第4次中東戦争に端を発する石油の供給危機により、原油価格が大きく上昇した。これにより、石油や石油関連製品の価格が上昇し、1974年(昭和49年)、日本の消費者物価指数は23%上昇した。このとき「狂乱物価」という言葉が生まれている。
関連項目
参照文献
- Czech, Brian, Supply Shock: Economic Growth at the Crossroads and the Steady State Solution. (Gabriola Island, Canada, 2013)
- 渡辺努、細野薫、横手麻理子 (2003), “供給ショックと短期の物価変動”, RIETI Discussion Paper Series 03-J-008 (独立行政法人経済産業研究所)
- ^ Robert Hall, Marc Lieberman (2012), Economics: Principles and Applications, Cengage Learning, p. 849.
- ^ a b c Robert Hall, Marc Lieberman (2012), Economics: Principles and Applications, Cengage Learning, p. 850.
- ^ 笛木琢治、 川本卓司 (2009), “近年の原油価格の変動要因について―構造 VAR による試算―”, Bank of Japan Review (Bank of Japan): 4.
- ^ 渡辺努、細野薫、横手麻理子 (2003), “供給ショックと短期の物価変動”, RIETI Discussion Paper Series 03-J-008 (独立行政法人経済産業研究所): 5.
供給ショック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/22 03:04 UTC 版)
詳細は「供給ショック」を参照 供給曲線の左シフトによって、取引量の減少と価格の上昇が引き起こされた状態。デマンド・プル・インフレーションのように総需要の高まりが価格を上昇させる場合と異なり、何らかの外的要因によって生産コストが増加し、それが販売価格に転嫁されるコストプッシュインフレーションの場合に起こりうる。需要が変わらない中で価格が上昇するため取引量も減少することになり、インフレと不景気の複合=スタグフレーションになる。あるいは、戦争や災害による生産設備の損傷や悪天候などといった、供給能力の減少によって総需要に見合うだけの生産が出来ない場合にも、価格の上昇と取引量の減少が起きうる。 供給側の制約を十分に考慮せず、拡張的なマクロ経済政策を続ければやがてインフレとなり、それを引き締めようとすれば今度はスタグフレーションになる。 このような原因によるスタグフレーションの具体例として、1973-1974年の第1次オイルショック、1979年の第2次オイルショックでは多くの先進国がスタグフレーションに悩まされたことがよく挙げられる。1980年代に入り石油価格がほぼ半値まで低下しスタグフレーションからの脱却は成功した。生産設備や生産工程の見直し、省エネルギー運動による供給力向上や原油価格の影響を受けにくい体制作りも脱却の一因である。
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