positroniumとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > positroniumの意味・解説 

ポジトロニウム【positronium】

読み方:ぽじとろにうむ

電子とその反粒子である陽電子が、クーロン力で結合した状態。粒子・反粒子の組み合わせのため、短時間で対消滅を起こしてγ(ガンマ)線を放つ。電子と陽電子のスピンが平行状態にあるものをオルソポジトロニウム、反平行状態にあるものをパラポジトロニウムと呼び、前者は約1千万分の1秒、後者は約100億分の1秒で崩壊する。通常の原子との間に斥力がはたらき、物質中の原子間の空隙に留まる性質をもつ。この性質を利用して、寿命が長いオルソポジトロニウムを試料中に生成し、ナノメートルサイズの空隙を調べる手法が考案された。


ポジトロニウム

(positronium から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/23 01:45 UTC 版)

Jump to navigation Jump to search
ポジトロニウム
組成 電子、陽電子
粒子統計 ボース・アインシュタイン統計
相互作用 弱い相互作用
電磁相互作用
重力相互作用
記号 Ps
質量 2me
平均寿命 パラポジトロニウムは125ピコ秒
オルトポジトロニウムは142ナノ秒
電荷 0
色荷 持たない
スピン パラポジトロニウムは0
オルトポジトロニウムは1
レプトン数 0

ポジトロニウム (positronium) とは、電子と陽電子が電気的に束縛され対になった、一種の原子(エキゾチック原子)である。記号としてPsと記される。古典力学的な原子模型でいうと、電子と陽電子が共通重心を中心としてお互いを回っているということになる。物質中に陽電子を照射した場合、物質中の電子と陽電子は通常、対消滅してγ線を放出するが、絶縁体中ではかなりの割合で準安定状態としてポジトロニウムを形成する。

特徴

ポジトロニウムは質量2meのきわめて軽い原子である。電子の換算質量が水素原子のほぼ半分であることにより、ボーア半径は水素原子の2倍の106pmであり、イオン化エネルギーは半分で6.8eVである。

ポジトロニウムには、それを構成する電子と陽電子のスピンの向きによってパラポジトロニウム(p-Ps)とオルトポジトロニウム(o-Ps)が存在し、それぞれ異なる性質を持つ。p-Psは電子と陽電子のスピンの向きが逆向きであり、スピン量子数はs=0である。o-Psはスピンの向きが揃っており、スピン量子数はs=1、磁場が無い状態ではm=-1,0,1の三つの状態が縮退しており、磁場があるとこの三つが別れる。p-Psとo-Psでは前者のほうがエネルギー状態が低いが、通常は無視できる程度の差(微細構造定数〜1/137)しかないため、生成比は状態数に比例して1:3となる。

真空中に於いて、p-Psの寿命は125ピコ秒であり、消滅して光子2つになる。一方、o-Psの寿命は142ナノ秒と比較的長く、消滅すると光子3つになる。物質中では後述する理由により寿命は短くなり、1〜10ナノ秒程度となる。

ポジトロニウム原子との間には、それぞれの持つ電子の間の交換相互作用により、斥力が働く。そのため物質中では原子間の間隙に存在し、空孔型欠陥があるとその中に捕捉される。場合によっては、ポジトロニウム自らが空孔を作り、その中に留まる。また、空孔のサイズが大きいほど寿命は長くなることが知られている。

歴史

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンにあるポジトロニウムビーム装置。これを用いてポジトロニウムの特徴が研究された。

1934年、クロアチアの科学者ステパン・モホロビチッチ(英語版)はアストロノミシェ・ナハリヒテン誌に投稿した論文中でポジトロニウムの存在を予言し、electumと呼んだ[1]。また、1932年にカリフォルニア工科大学在籍中のカール・デイヴィッド・アンダーソンが存在を予言したとする資料もある[2]。実験的には、1951年にMITのマーティン・ドイッチュ(英語版)によって発見され、ポジトロニウムとして知られるようになった[2]。多数の実験が引き続いて行われ、ポジトロニウムの性質が精密に測定された。測定値と量子電磁力学 (QED) による予測値が検証され、その結果として「オルソポジトロニウムの寿命問題」として知られる食い違いが明らかになった[3]。しかし、さらなる計算と計測の結果この問題は解決された[4]。原因は、生成速度が小さすぎて熱平衡に達しないポジトロニウムを寿命の測定に用いたために計測値が長くなる誤差を生じたことであった。また、相対論的QEDを用いた計算も実行が困難であるため一次近似までしか行われていなかったが、非相対論的QEDを用いてより高次の補正が計算された[5]。

ポジトロニウムの反応

ポジトロニウム、特に寿命の長いo-Psは、物質中に於いてさまざまな反応を起こすことが可能である。これは、o-Ps中の陽電子が、ポジトロニウムの自己消滅よりも物質中の電子との対消滅によって失われやすいことと、ポジトロニウム自体が不対電子一つを持ったフリーラジカルとして振舞うことに起因する。

ピックオフ消滅

ポジトロニウムが他の原子と衝突したとき、ポジトロニウム中の陽電子の波動関数が衝突相手の原子が持つ電子の波動関数と重なりを持つと対消滅が起き、ポジトロニウムは消滅する。この確率はポジトロニウムと他の原子との衝突頻度が高いほど、つまり、気体中では圧力が、液体や固体中では密度が大きいほど高くなる。この反応が物質中でのo-Psの寿命決定に大きく関与している。

スピン交換

物質を構成する分子が不対電子を持つ場合、ポジトロニウム中の電子は、物質中に含まれる電子とスピンを入れ替えることがある。このような反応は水素原子でも知られている。これによりo-Psがp-Psとなると、p-Psの短い寿命で消滅することとなる。

化学反応

ポジトロニウムは水素原子と同様、酸化反応や化合物生成などの化学反応をすることができる。ポジトロニウムが酸化されると、電子が奪われて陽電子だけが残る。

ポジトロニウムの形成メカニズム

Oreモデル

Oreモデルは最も初期に立てられたポジトロニウム形成モデルで、エネルギーをもった陽電子が原子から電子を引き抜くというものである。このモデルでは、希ガス中でのポジトロニウム形成についてはよく説明するが、多原子分子や凝集相中でのポジトロニウム形成については上手く説明できない。

スパー反応モデル

ポジトロニウムの利用

脚注

  1. ^ Mohorovičić, S. (1934年). “Möglichkeit neuer Elemente und ihre Bedeutung für die Astrophysik” (German). Astronomische Nachrichten 253 (4): 94. Bibcode 1934AN....253...93M. doi:10.1002/asna.19342530402. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/asna.19342530402/abstract?systemMessage=Wiley+Online+Library+will+have+intermittent+access+on+8th+August+2015+from+10:00-16:00+BST+/+05:00-11:00+EDT+/+17:00-23:00+SGT+for+essential+maintenance.++Apologies+for+the+inconvenience. 2015年8月6日閲覧。. 
  2. ^ a b “Martin Deutsch, MIT physicist who discovered positronium, dies at 85” (プレスリリース), MIT, (2002), http://web.mit.edu/newsoffice/2002/deutsch.html 
  3. ^ 「オルソポジトロニウムの寿命問題」、『日本物理学会誌』第49巻第3号、日本物理学会、1994年3月5日、 217-220頁、 doi:10.11316/butsuri1946.49.217。
  4. ^ Dumé, Belle (2003年5月23日). “Positronium puzzle is solved”. Physics World. http://physicsworld.com/cws/article/news/2003/may/28/positronium-puzzle-is-solved 
  5. ^ “First Test of O(α2) Correction of the Orthopositronium Decay Rate”. International Center for Elementary Particle Physics (2008年9月9日). 2015年8月5日閲覧。

関連項目



英和和英テキスト翻訳

英語⇒日本語日本語⇒英語

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「positronium」の関連用語

positroniumのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



positroniumのページの著作権

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのポジトロニウム (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2026 GRAS Group, Inc.RSS