SFドラマの制作技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/26 09:17 UTC 版)
実在の範囲を越えて架空の設定やキャラクターを描くため、SFドラマの制作者は特殊な技法を大いに活用する。 基本的に映画で使われる技法と同一であり、映画草創期から試行錯誤された技術であるが、20世紀を通してそれらの技法の多くは高くつき、ごく少数の職人芸に依存するものである。小道具・模型・効果などを再利用したり、しかしながらテレビメディアで製作されるこれらの「映画」は劇場映画ほどの予算もかけられず、アニメーション技法を利用することでなんとか費用を抑えていた。初期費用は高くつくがその後の費用は抑えられるため、派手な場面はシリーズの基本コンセプトとして何度も使うようになり、そのことが作品の芸術的選択全体に影響を及ぼした。1990年代後半、技術革新や技能的熟練によって特殊技法全般が使いやすくなり、監督の采配でエピソード毎に新たな特殊撮影が可能となった。したがって、同じシーンをシリーズを通して再利用する必要はなくなった。 特殊撮影 特殊撮影 (SFX) はSFドラマの黎明期から使われ続けている基本的なツールである。少量の火薬で様々な熱線銃の効果を真似たり、モンスターやホラーの番組で血糊などを爆竹で飛び散らせたり、操演でジョージ・リーヴス演じるスーパーマンが飛んだりといった技法がある。「特殊撮影」という言葉は本節で解説しているあらゆる技法を含むが、一般には2つに分類される。VFXは撮影済みのイメージを写真として、あるいはデジタルイメージとして操作することで、通常ポストプロダクションで行われる。機械的または物理的な特撮は、小道具や火薬その他の物理的手法を実際の撮影時に使う技法である。この2つを組合わせることもある。例えば熱線銃を描く場合、撮影時に火薬を使い、ポストプロダクション時にフィルム上に銃からのびる熱線を追加する。スタントも重要な物理的特撮の1つである。一般に、プリプロダクション時にあらゆる特殊撮影を注意深く計画する必要がある。 CGI 『バビロン5』は初めて Computer Generated Imagery (CGI) を宇宙空間のシーン全体を描くのに採用したシリーズで、宇宙服を着たキャラクターもCGIで描いている。その後CGI技術が進歩したため、模型を使う機会は大幅に減った。1990年代には高価なコンピュータやソフトウェアを必要としたが、2000年代になると普通のパーソナルコンピュータで十分となり、ソフトウェアも様々なものが登場している。 模型と操り人形、着ぐるみ デジタル技術が台頭する以前の時代において、非日常的なガジェットやクリーチャーは模型などを使った美術で表現する以外には有り得なかった。例えば『バック・ロジャース』の宇宙船は模型だった。『宇宙大作戦』では多数の模型を必要とした。エンタープライズ号は場面に応じて様々なスケールのものを使用している。CGIの進化と共に1990年代には直接模型を使う画作りは却ってコストが高くつくので、ほとんど行われなくなったが、現在、模型をデジタイズしてCGIを制作したり、模型による本物の質感を取り入れるため背景にミニチュアが使われ、そこにCGIを合成することもある。 キャラクターの模型が操り人形(パペット、マリオネット)である。ジェリー・アンダーソンはパペットを使った『サンダーバード』などのSFドラマを多数制作した。『アルフ』では、ある家族と一緒に住んでいる宇宙人をパペットで描いている。『ファースケープ』ではレギュラーのキャラクターのうち2人がパペットである。『スターゲイト SG-1』ではアスガードをパペットを使って表していた(座っているとき、立っているとき、寝ているとき)。 日本では怪獣や巨大ロボットなどを人形ではなく着ぐるみで表現することが多い。これは映画『ゴジラ』で撮影期間短縮のために採用された技法であるが、日本以外でも等身大のクリーチャーに着ぐるみを使うことは決して少なくなく、前述の『アルフ』でも歩く場面は着ぐるみである。ミニチュアや操り人形(パペット)による場面と平行して使われる技法である。たとえば、『アルフ』がパペットと着ぐるみを併用したように『ウルトラマン』も飛行場面や変身場面などでは操り人形によるミニチュアが使用されている。 アニメーションと実写の合成 アニメーションは重力や運動量や物理的写実性から解き放たれた描写が可能であり、SFやファンタジーを映像化するのに適している。最近では人間以外のキャラクターの大群をソフトウェアで生成し、実写と合成することもある。『GALACTICA/ギャラクティカ』ではサイロンはCGIアニメーションで描かれ、『スターゲイト SG-1』のアスガードは歩いているときや複数が画面にいるときCGIアニメーションで描かれていた。
※この「SFドラマの制作技法」の解説は、「SFドラマ」の解説の一部です。
「SFドラマの制作技法」を含む「SFドラマ」の記事については、「SFドラマ」の概要を参照ください。
- SFドラマの制作技法のページへのリンク