5リットル7ターボ (578A)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 14:49 UTC 版)
「トヨタ・7」の記事における「5リットル7ターボ (578A)」の解説
1970年に登場した3代目は社内コード578Aと呼ばれる。剛性強化と軽量化に加えて、国産初の過給式(ターボチャージャー)レースエンジンを搭載した。1970年1月から開発が始まり、同年5月には1号車が完成した。製作費用は1台2億円といわれる。 シャシは先代と同じくスペースフレームだが、フレームの材質をクロムモリブデン鋼から特殊アルミ合金に変更。他にも「-100kgの軽量化」を目標として、サスペンションアームやドライブシャフトなど各所にチタンやマグネシウム合金を使用した。コクピット後方のバルクヘッドにエンジンをボルト留めし、サブフレームで補強するセミ・ストレスメンバー式とした結果、車体の捩れ剛性は474Sの約2倍となり、エンジン周りがシンプルになることで、サイドラジエーターの気流通過が改善されるというメリットもあった。474Sは左右両側ともラジエーターだったが、578Aでは右がラジエーター、左がオイルクーラーとされた。サスペンションを改良した結果、操縦特性が安定してニュー7よりもコントロールしやすくなった。トランスミッションとクラッチはアイシン精機(現:アイシン)の国産製となり、ギアボックスケーシングは軽量化のためマグネシウム合金製とされた。 91E型エンジンは5リットルの79E型をベースにして、ギャレット・エアリサーチ(Garrett AiResearch)製ディーゼルエンジン用ターボチャージャーを2個装着した。ヤマハの研究課長が渡欧した際、ドイツの技術者ミハエル・マイ(Michael May)からターボ機構を紹介され、使用契約を結んで採用した。1968年のインディ500ではターボエンジン車が初優勝していたが、ターボラグなどの問題から耐久レースでのポテンシャルはまだ未知数だった。スロットルはスライド式からバタフライ式へ変更。インタークーラーは装備されていない。公称出力は800PS/8,000rpmだが、これは「嘘八百」ということわざになぞらえて控えめに発表した数値であり、実走行では850馬力以上出ていたという(細谷は「実際は1,000馬力は出ていたはずです」と語っている)。テストでは最高速363km/hを記録したというが、燃費は800m/リットルしかなく、計250リットルの燃料タンクを搭載していた。 また、79E型エンジンを新シャーシに搭載したNA版も製作された。こちらはエキゾーストが上方に移されている。 ボディはラジエーターインテークが側面に移り、NACAダクト風に変わったのが特徴。空力安定性を高めるためノーズがダルな形状になり、フロントフェンダーにバックミラーが埋め込まれた。繊維強化プラスチックの裏地にカーボンを格子状に接着し、当時最新の素材だった炭素繊維強化プラスチックとしたことで、カウルの厚みを従来の半分の1mm程度にまで薄くすることができた。 細谷はターボ仕様について「5速でもホイールスピンするほどトルクがあるので、ステアリングできっかけさえ作ればマシンの向きを自由自在に変えられたんです」「(ターボラグは)早めにスロットルを踏み込むなどのテクニックで充分カバーできたんです」と説明し、「これまで数え切れないくらい多くの車に乗ってきましたが、あれは間違いなく最高のものでした」と語っている。 NAエンジン搭載車 ターボエンジン搭載車 ターボエンジン(前方から) リアビュー
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