5メガワット原子炉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 05:50 UTC 版)
寧辺の5メガワット原子炉は、1979年に用地の準備が始められ、1982年4月に原子炉の建設工事が始まった。1985年に初めて臨界に到達し、1986年1月から運転を開始したとされている。寧辺1号炉などと呼ばれる。 原子炉は、1950年代にイギリスが開発した黒鉛減速ガス冷却炉であるマグノックス炉(コールダーホール型)の設計を元に北朝鮮で独自に開発したもので、カナダで教育を受けた物理学者である慶元河教授 (Kyong Wonha) が指導したとされている。マグネシウム・ジルコニウム合金の被覆管を使った天然ウラン核燃料を使用している。燃料棒は1本あたり長さ50 cm、直径3 cm、重さ6.17 kgで、これを合計801チャンネルある燃料チャンネルに1チャンネルあたり10本ずつ挿入し、合計約8,000本の核燃料棒を使用する。ウランの総重量は40 - 45トンで、燃料平均温度は420度である。 電気出力は5メガワットとされ、また熱出力は20 - 30メガワットとされている。通常、電気出力は熱出力の3分の1程度であるので、この炉では電気出力から通常想定される熱出力に比べて倍程度大きな熱出力を持っていることになる。この炉を1日運転すると、熱出力1メガワットあたり0.9 gのプルトニウムを生産できる。熱出力が20 - 30メガワット程度であることを考慮し、また稼働率を85パーセントとするならば、年間に5.5 - 8.5 kgのプルトニウムを生産できる。プルトニウム方式の原子爆弾は、1個あたり5 kg程度のプルトニウムを使用するので、この原子炉を順調に稼働できれば、年に1個程度のプルトニウム原爆を生産できるプルトニウムを生産できる。 また北朝鮮側の説明によれば、この原子炉では電力網への電力の供給と、近隣の町への熱の供給も行っている。 このマグノックス炉は2007年に六者会合の合意に沿って無力化されたが、2009年に合意の崩壊にともなって、既存の使用済み核燃料の再処理のために部分的に復旧された。2015年9月15日に北朝鮮は、この原子炉は運転を再開したと発表した。
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