プルトニウム原爆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 00:45 UTC 版)
プルトニウム239は自然界にはほとんど存在しない重金属であるが、原子炉(燃料転換率の高い原子炉が望ましい)内でウラン238が中性子を吸収することで副産物として作られるため、ウラン235のような大量の電力を消費する濃縮過程を必要とせず、むしろ原子炉で電力が得られるという利点もある。また臨界量が5kgとウラン235に比べてかなり少量で済む利点がある。 プルトニウムは放射能の値が大きいため取り扱いが難しく、生産に黒鉛炉または重水炉、再処理工場の建設費がかかるが、副産物として電力が得られ、1発あたり生産コストがトータルではウラン原爆より安価に済み、量産に向くため、現在は五大国の核兵器生産はプルトニウムが主体である。 しかし通常の工程で生成されるプルトニウムには、高い確率で自発核分裂を起こすプルトニウム240が兵器として使用できる許容量を超えるレベルで含まれている。このため、ガンバレル方式ではプルトニウム全体が超臨界に達する前に一部で自発核分裂が起きて爆弾が四散(これを過早爆発という)してしまうなど、効率の良い爆発を起こすことが難しい。したがって密度の低いプルトニウムを球状にし、爆縮によって密度を高め核分裂連鎖反応を開始させる爆縮方式が用いられる。また核分裂連鎖反応が開始されてからプルトニウム239が飛散して終了するまでの反応効率がガンバレル方式よりも高いというメリットもある。長崎に投下された原子爆弾にはこのタイプが用いられた。 なお、爆縮方式を用いる場合でもプルトニウム240の含有量が7%を超えると過早爆発の原因になり、核兵器製造に向かない。日本の原子力発電で使われている軽水炉の使用済み燃料から抽出されるプルトニウムはプルトニウム240を22-30%前後含有し、プルトニウム240を分離しないと核兵器に使えない。核兵器製造にはプルトニウム240含有量が7%以下の兵器用プルトニウムが得られる黒鉛炉やCANDU炉もしくは高速増殖炉(日本には常陽ともんじゅがあったがどちらも廃炉)を使うのが普通で、北朝鮮の原爆計画の1つであるプルトニウム計画は黒鉛炉、イラン原爆計画において傍流であるプルトニウム原爆計画では重水炉が使用されている。
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