ウラン原爆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 00:45 UTC 版)
ウラン235は広島に投下された原子爆弾で用いられた。天然ウランは、核分裂を起こし易いウラン235と、核分裂を起こしにくいウラン238からなるが、ウラン235はわずか0.7%である。原爆に用いるためにはウラン235の濃度を通常90%以上に高めなければならず、辛うじて核爆発を引き起こす程度でも最低70%以上の濃縮ウランが必要となる。放射能の値が小さいために取り扱いは容易であるが、ウラン濃縮には大変高度な技術力と大規模な設備、大量のエネルギーが必要とされる。ウランは後述のガンバレル方式、爆縮方式のどちらでも使用可能である。 ウラン濃縮による原爆製造は初期設備投資は比較的安価だが、電力を大量に消費し運転経費がかかる上、同じ核物質の量でプルトニウムより少ない数の原爆しか作れないため、原爆1個あたりの製造コストはプルトニウム原爆より高価になる。一方で、ウラン濃縮施設はプルトニウム生産黒鉛炉と違って地下に設置しやすく大量の赤外線を放射しないので偵察衛星に位置を察知されにくい。また、ガンバレル方式は必要臨界量が多く製造効率が甚だ悪いものの、核実験なしでも核兵器を持てる。そのため核開発初期段階の国はウラン原爆と砲身方式の組み合わせを選択する場合が多い。イランの核開発もウラン原爆計画が主体である。 マンハッタン計画で、臨界質量以下のウラン235の2つの小片を合体させ、臨界質量以上にすることにより容易に核分裂連鎖反応を開始できることが明らかになったため、広島型原爆には後述のガンバレル方式が選択された。砲身方式においてウラン原爆の臨界量は100%ウラン235の金属で22kgとされている。広島型原爆ではウラン235が約60kg使用されたとされる(全ウランに対するウラン235の割合が80%の濃縮ウラン75kg)。
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